三姉妹 しのぶさん姉妹百合夢
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「…危ないと判断したら、すぐに入るから」
「ん、わかった」
一年後の夜。
私はしのぶ姉さんと共に任務に出る。
繋いでいた手を離す。
私たちよりも遥かに大きい鬼。
緊張はするけど、不思議と恐怖はない。
あんなに怖かった鬼が、不思議と。
深呼吸を一つして。
刀を構える。
地を蹴り、鬼の攻撃を躱す事で舞い始める。
鬼の攻撃に合わせて舞う。
刀を振るい、時には柄と鞘を合わせて薙刀にして受け流したり。
時には薙刀から刀に戻し、攻撃を躱したり。
軽やかなステップに合わせて。
ー花びらが舞う。
攻撃に合わせて。
ー蝶が舞う。
舞いに合わせて。
ー風が取り巻いて。
私を照らすように。
ー月が輝く。
「“花蝶風月 月白ノ舞 花ノ太刀”」
“花の呼吸法”と“蟲の呼吸法”を参考にし、合わせた私だけの息遣い。
私だけの技。
でもまだだめだ。
まだ力が足りない。
私はしのぶ姉さんより小さいから。
鬼の首を落とせるだけの力がない。
“全集中 全ての力を次の一撃に”
カナエ姉さんの声。
“大丈夫。あなたなら出来る”
私なら出来る。
「“花蝶風月 天風ノ舞 風塵ノ太刀”」
私なら出来る。
大丈夫、私なら出来る。
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”
駄目じゃない。
私だって、戦える。
薙刀の遠心力を利用して。
私はついに。
ついに。
鬼の首を落とせた。
「わ、わっ」
抵抗が急になくなったから、バランスを崩してしまって。
「…っ!」
鬼の最期の悪あがき、鬼の一撃が飛んできたのを。
「!」
姉さんが私を抱き掴むことで躱してくれた。
「「……」」
二人で崩れて行く鬼を見つめる。
「素晴らしかったわ…リン…」
姉さんが涙を零した。
その涙はとても綺麗で。
息を飲んでしまった。
嬉しかった。
柱であるしのぶ姉さんに褒められたこと。
ようやく私も戦える術を見出せたこと。
何よりも。
「“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”から、“少し出来る奴”に変わったかな?」
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”という言葉を少しでも覆せたことが。
「元よりそんなことないのよあなたは。ただ、自分に合った戦い方を知らなかっただけで」
しのぶ姉さんは私を抱き締めて。
「あなたは私とカナエ姉さんの自慢の妹よ」
そう言ってくれた。
嬉しい。
嬉しい。
自慢の姉が。
自慢の妹だと言ってくれた。
まだまだ鍛錬が必要だけど。
まだまだ精度を上げないとダメだけど。
「姉さん、私まだまだ強くなるから。」
「えぇ」
「だから、一緒にカナエ姉さんの仇を討とうね」
更に強く。
もっと強く。
カナエ姉さんを殺した鬼の首を落とすために。
「…えぇ、必ず」
「…もし毒を飲んで自ら毒になろうとしたら、私腹切るから」
「ッッ!?」
…しのぶ姉さんの考えなんてすぐわかるんだからね。
それから数ヶ月後、那田蜘蛛山で。
友達になった炭治郎と善逸、伊之助たちと鬼討伐に励んでいたら。
十二鬼月と遭遇して、姉さんと水柱様が助けに来てくれた。
「……姉さん、禰豆子は大丈夫だよ…」
「ん゙んッ!…で、でも…一応隊律違反だから…仕方ないの…」
姉さんが私の前に立ち、水柱の冨岡様と相対してる。
そんな姉さんの羽織の袖を掴み、禰豆子は大丈夫だからって伝えても。
姉さんは頬を赤らめたけれど、柱として隊律違反の水柱様を放っては置けない、と。
「…リン…」
「馴れ馴れしく呼び捨てしないでください、冨岡さん。そういうところですよ」
隊律違反はするわ、私の名を呼び捨てるわで姉さんのイライラがMAXになってるのがよくわかる…。
「…胡蝶…妹…」
言い直した…。
この後、お館様のご指示で炭治郎と禰豆子は本部へと呼ばれて。
「あ!リン!無事だったんだな!」
「炭「竈門君、リン“さん”ですよ?目上の方ですからね?」は、はい…っ」
「いや、リンでいいよ…。名前くらいいいんだよ姉さん…」
何とか姉さんを説得して、炭治郎たちにはそのまま“リン”って呼んでもらえるようにした。
「リンちゃん、俺と結婚「善逸君、この薬を飲んでくださいね」苦ぁああ!!」
…善逸に口説かれてる時も姉さんはどこからとも無く現れて、苦すぎる薬を口の中にぶっ込んで。
「おいリン!俺と戦え!」
「えー…伊之助すぐ抱き着いて来るからやだよ…」
「だってお前良い匂い「聞き捨てならない言葉が聞こえて来たんですが伊之助君、リンに何ですって?」ゴメンナサイ」
伊之助を柱ノ威厳で黙らせたりと。
「しのぶさん、リンのことが大好きなんだな!」
「…一年前に自暴自棄になって、家出したら…過保護になってしまって…」
「家出!?それは過保護になっても仕方ないか…」
縁側でのんびり炭治郎と話をしていたら。
バキャッ
「おわぁあ!」
「わぁ!!」
天井から伊之助が降ってきて、逃げられないと思ったらいつの間にか庭に居てね。
「伊之助君、猪突猛進にも程がありますよ?」
伊之助を叱る姉さんの背中を見て、姉さんに助けられたんだと理解した。
「…まるで忍者みたいだね」
善逸が顔を真っ青にさせる。
「…気付けば傍にいるんだよね…」
気付けば傍に居る。
気付けば傍に居てくれる。
クイッと袖が突っ張ったから、そちらを見ればカナヲが居て。
私の袖を少しだけ掴んでいた。
そう…。
感情がまだ花開いてないカナヲも、いつの間にか傍に居るの。
“独りじゃない”の。
「ん?リン、ここ赤くなってるぞ?」
「え?どこ…ン…ん…っ、、!?」
「え?今の声……」
「炭治郎君?今、リンに何をしました?」
「ひぃ!!」
炭治郎に、私の首筋にある紅い痕を指でなぞられて…。
くすぐったさにくぐもった声が出てしまって…慌てて手で口を塞ぐも。
姉さんが真っ黒なオーラを醸し出しながら炭治郎を正座させた。
ちなみにカナヲは私に抱き着いている。
“胡蝶三姉妹の一番下の奴、十二鬼月とやり合ったらしいぞ”
“一番駄目だったのに、すげぇ強くなってるらしい”
“胡蝶三姉妹の、リン?だっけ?あいつ、なんか可愛いよな”
“俺リンちゃんに告白したら、蟲柱様に断られたんだけど…。”
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”という言葉はもう言われることがなくなって。
“…悪い虫がうろちょろし過ぎてるわね…”
“言い方悪いよしのぶ姉さん…”
好きだと告白されることが多くなった。
私が発言する前に姉さんが全て一刀両断してしまうけど…。
任務だって1人で行けるくらいまでになったのに。
任務が終わって帰ろうとすれば。
“あら、リン。奇遇ね。私も任務だったのよ”
なんて白々しい嘘を吐きながら迎えに来てくれるの。
柱って暇なのかな…って思うよね…。
姉さんと手を繋ぎ、カナエ姉さんのお墓参りへ行く。
「姉さん、リンすごく強くなったのよ?」
しのぶ姉さんがカナエ姉さんに私のことを報告してくれたけど。
カナエ姉さんは知っているよね?
だって、私に戦う術を見出させてくれたのはカナエ姉さんだから。
夢の中で、私に“舞う”ことを教えてくれたから。
私の階級は“壬”から一気に“甲”になった。
柱はまだまだ遠い。
でもいいの。
私には私の戦い方があるから。
「カナエ姉さん、見ててね。私、頑張るから」
「リン…」
しのぶ姉さんが私を抱き締めてくれた時。
“見てるよ、ちゃんと見てる。頑張って”
「「!!」」
カナエ姉さんの声が聞こえて、しのぶ姉さんと顔を見合わせて2人で泣いた。
これからまだまだ戦いが激しくなって来る。
それこそ下弦ノ鬼じゃなくて、上弦ノ鬼との戦いだってあるかもしれない。
まだまだ強くなる必要がある。
まだまだ強くなれる。
“胡蝶三姉妹の末っ子”は、まだまだ強くなるよ。
「え…“花柱”…?」
「そう、“花柱”。おめでとうリン」
十二鬼月の、下弦ノ肆を倒した翌日。
私は柱へと昇格した。
まだまだ遠いと思っていた柱に。
しかも“花柱”の階級を賜ってしまった。
「いや…いやダメだよ…“花柱”はカナエ姉さんの…」
私が“花柱”だなんて、おこがましい。
でも。
「いえ、あなただからこそよ。リン」
「リン、お前だからこそ“花柱”が相応しいんだろうがァ」
「派手に良い感じじゃねぇか、リン」
「うむ!“花柱”はリンを置いて他にないぞ!」
「うんっ!リンちゃんには“花柱”が一番似合うわっ!」
「リン、“花柱”を背負う以上、泣き言は許されない」
「…リ…胡蝶妹…“花柱”はお前が受け継ぐんだ…」
「南無…」
「リン、ね。覚えとくよ。すぐ忘れると思うけど」
他の柱の皆さんにも認めてもらえた。
“花柱”の階級が相応しいって言ってくれた。
「っありが「甘露寺さん以外の柱の皆さん、くれぐれもリンを呼び捨てないようにしてくださいね」
…しのぶ姉さんの言葉に感動が台無しに…。
「胡蝶が二人も居たらややこしいだろうがァ!!」
「ではフルネームで呼んでください」
「派手に面倒くせぇわ!」
他の柱の皆さん…蜜璃さんと水柱様…冨岡さんと無一郎君の3名は除いて、ブーブーと姉さんに文句を言っている…。
「これ、羽織」
「え?私に?」
初めての柱合会議を終えて、しのぶ姉さんと蝶屋敷へと帰れば。
姉さんが私に羽織を贈ってくれた。
「カナエ姉さんが、私にと用意してくれたお揃いの羽織なの」
カナエ姉さんが着ていた羽織は、今はしのぶ姉さんが着ているから。
自分の分をいつ私に渡そうかと悩んでいたらしくて。
私が羽織を纏うと。
「うん、良く似合うわね」
カナエ姉さんの形見の髪飾りを付けて直してくれた。
ちなみにカナエ姉さんは二つ髪飾りを付けていて、もう一つはカナヲが付けてるの。
「…ちょっと大きい」
「そうね、可愛いわ」
「え゙」
蝶屋敷のみんなにお披露目をしたら。
「…っ良いと思う…リン姉さん…」
カナヲが抱き着いてきて。
リン…姉さん…と…。
「かわ…かわわわわわわっ」
カナヲがすごく可愛くて、ギュウッと抱き締め返した。
「………」
ら、しのぶ姉さんが不貞腐れたからしのぶ姉さんも抱き締めたよ…。
…そうして。
「ん…っぅ…っぁ…っ」
「はぁ…リン…可愛い…」
…ずっと我慢してたらしく…しのぶ姉さんに抱かれた…。
何処ぞの馬の骨に奪われるくらいなら、いっそのこと自分のものにしてしまおうと思ったらしい…。
「あ…っあ…っイク…っイク…っあっあ…っ」
「えぇ…いいわ…」
姉妹でこんな関係ってどうなのって思うけど…。
しのぶ姉さんだし…まぁいいかって思っちゃう私も私だよね。
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”は、“花柱”になるまで強くなった。
三姉妹とも見事に“柱”になった。
「リン、潜入捜査を派手に手伝ってくれねぇか?」
「え?潜入捜査なのに派手でいいの?」
「宇髄さん、呼び捨て厳禁ですよ。それにリンに危険な任務をさせないでください」
「過保護にも程があんだろ!リンはもう柱だぞ!」
相変わらずしのぶ姉さんは過保護だけど。
私は今、すごく充実した日々を過ごしてる。
いつか必ずやってくる大きな戦争に備えて。
鍛錬を怠らず。
更なる高みを目指して。
「リン、私を捕まえられなければ今日は激しく抱きます」
「無理に決まってんじゃんッッ!!」
しのぶ姉さんの速さに付いて行けるわけないのに…。
無理なことを言って理由付けて抱こうとするんだよね…。
「…リン姉さんの…羽織を翻して舞う姿…すごく綺麗…」
「ん゙んッ可愛い…っ」
カナヲは炭治郎と知り合い、感情が徐々に花開いてきて。
最近ますます可愛さが増しているの。
「柱合会議へ行くわよリン」
「うぅ…腰が痛い…」
姉さんは限度を覚えてくれなくて…。
場所もなかなか弁えてくれなくて…。
困った姉さんだけど。
「…次、天元さんと任務なんだよ」
「…宇髄さんでしょ?」
「だってそう呼べって…」
「…あの派手柱…」
私たちは手を繋いで、お館様のお屋敷へ向かう。
一年前、私は絶望して全てを諦めていたのに。
しのぶ姉さんの愛情で救われた。
カナエ姉さんが私に戦い方を教えてくれた。
“胡蝶三姉妹は凄い姉妹だよな”
みんなからそう言われるようになった。
「ねぇ、姉さん」
「なぁに?」
私は姉さんの手を離し、数歩前に出て。
しのぶ姉さんへ振り返って。
「大好きだよ、しのぶ姉さん」
ニッと悪戯に笑った。
「…っ!!」
たちまちしのぶ姉さんは顔を赤くさせて、私に抱き着いてきた。
綺麗な桜が舞い散る中。
私たちは再び手を繋いで。
「行こ、姉さん」
「えぇ、行きましょうリン」
笑い合って、柱合会議へと向かった。
もう大丈夫。
もう迷わないし、絶望しない。
真っ直ぐ前を見て。
大好きな人たちと共に。
精一杯生きて行くから。
カナエ姉さん、見ていてね。
END
「…危ないと判断したら、すぐに入るから」
「ん、わかった」
一年後の夜。
私はしのぶ姉さんと共に任務に出る。
繋いでいた手を離す。
私たちよりも遥かに大きい鬼。
緊張はするけど、不思議と恐怖はない。
あんなに怖かった鬼が、不思議と。
深呼吸を一つして。
刀を構える。
地を蹴り、鬼の攻撃を躱す事で舞い始める。
鬼の攻撃に合わせて舞う。
刀を振るい、時には柄と鞘を合わせて薙刀にして受け流したり。
時には薙刀から刀に戻し、攻撃を躱したり。
軽やかなステップに合わせて。
ー花びらが舞う。
攻撃に合わせて。
ー蝶が舞う。
舞いに合わせて。
ー風が取り巻いて。
私を照らすように。
ー月が輝く。
「“花蝶風月 月白ノ舞 花ノ太刀”」
“花の呼吸法”と“蟲の呼吸法”を参考にし、合わせた私だけの息遣い。
私だけの技。
でもまだだめだ。
まだ力が足りない。
私はしのぶ姉さんより小さいから。
鬼の首を落とせるだけの力がない。
“全集中 全ての力を次の一撃に”
カナエ姉さんの声。
“大丈夫。あなたなら出来る”
私なら出来る。
「“花蝶風月 天風ノ舞 風塵ノ太刀”」
私なら出来る。
大丈夫、私なら出来る。
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”
駄目じゃない。
私だって、戦える。
薙刀の遠心力を利用して。
私はついに。
ついに。
鬼の首を落とせた。
「わ、わっ」
抵抗が急になくなったから、バランスを崩してしまって。
「…っ!」
鬼の最期の悪あがき、鬼の一撃が飛んできたのを。
「!」
姉さんが私を抱き掴むことで躱してくれた。
「「……」」
二人で崩れて行く鬼を見つめる。
「素晴らしかったわ…リン…」
姉さんが涙を零した。
その涙はとても綺麗で。
息を飲んでしまった。
嬉しかった。
柱であるしのぶ姉さんに褒められたこと。
ようやく私も戦える術を見出せたこと。
何よりも。
「“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”から、“少し出来る奴”に変わったかな?」
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”という言葉を少しでも覆せたことが。
「元よりそんなことないのよあなたは。ただ、自分に合った戦い方を知らなかっただけで」
しのぶ姉さんは私を抱き締めて。
「あなたは私とカナエ姉さんの自慢の妹よ」
そう言ってくれた。
嬉しい。
嬉しい。
自慢の姉が。
自慢の妹だと言ってくれた。
まだまだ鍛錬が必要だけど。
まだまだ精度を上げないとダメだけど。
「姉さん、私まだまだ強くなるから。」
「えぇ」
「だから、一緒にカナエ姉さんの仇を討とうね」
更に強く。
もっと強く。
カナエ姉さんを殺した鬼の首を落とすために。
「…えぇ、必ず」
「…もし毒を飲んで自ら毒になろうとしたら、私腹切るから」
「ッッ!?」
…しのぶ姉さんの考えなんてすぐわかるんだからね。
それから数ヶ月後、那田蜘蛛山で。
友達になった炭治郎と善逸、伊之助たちと鬼討伐に励んでいたら。
十二鬼月と遭遇して、姉さんと水柱様が助けに来てくれた。
「……姉さん、禰豆子は大丈夫だよ…」
「ん゙んッ!…で、でも…一応隊律違反だから…仕方ないの…」
姉さんが私の前に立ち、水柱の冨岡様と相対してる。
そんな姉さんの羽織の袖を掴み、禰豆子は大丈夫だからって伝えても。
姉さんは頬を赤らめたけれど、柱として隊律違反の水柱様を放っては置けない、と。
「…リン…」
「馴れ馴れしく呼び捨てしないでください、冨岡さん。そういうところですよ」
隊律違反はするわ、私の名を呼び捨てるわで姉さんのイライラがMAXになってるのがよくわかる…。
「…胡蝶…妹…」
言い直した…。
この後、お館様のご指示で炭治郎と禰豆子は本部へと呼ばれて。
「あ!リン!無事だったんだな!」
「炭「竈門君、リン“さん”ですよ?目上の方ですからね?」は、はい…っ」
「いや、リンでいいよ…。名前くらいいいんだよ姉さん…」
何とか姉さんを説得して、炭治郎たちにはそのまま“リン”って呼んでもらえるようにした。
「リンちゃん、俺と結婚「善逸君、この薬を飲んでくださいね」苦ぁああ!!」
…善逸に口説かれてる時も姉さんはどこからとも無く現れて、苦すぎる薬を口の中にぶっ込んで。
「おいリン!俺と戦え!」
「えー…伊之助すぐ抱き着いて来るからやだよ…」
「だってお前良い匂い「聞き捨てならない言葉が聞こえて来たんですが伊之助君、リンに何ですって?」ゴメンナサイ」
伊之助を柱ノ威厳で黙らせたりと。
「しのぶさん、リンのことが大好きなんだな!」
「…一年前に自暴自棄になって、家出したら…過保護になってしまって…」
「家出!?それは過保護になっても仕方ないか…」
縁側でのんびり炭治郎と話をしていたら。
バキャッ
「おわぁあ!」
「わぁ!!」
天井から伊之助が降ってきて、逃げられないと思ったらいつの間にか庭に居てね。
「伊之助君、猪突猛進にも程がありますよ?」
伊之助を叱る姉さんの背中を見て、姉さんに助けられたんだと理解した。
「…まるで忍者みたいだね」
善逸が顔を真っ青にさせる。
「…気付けば傍にいるんだよね…」
気付けば傍に居る。
気付けば傍に居てくれる。
クイッと袖が突っ張ったから、そちらを見ればカナヲが居て。
私の袖を少しだけ掴んでいた。
そう…。
感情がまだ花開いてないカナヲも、いつの間にか傍に居るの。
“独りじゃない”の。
「ん?リン、ここ赤くなってるぞ?」
「え?どこ…ン…ん…っ、、!?」
「え?今の声……」
「炭治郎君?今、リンに何をしました?」
「ひぃ!!」
炭治郎に、私の首筋にある紅い痕を指でなぞられて…。
くすぐったさにくぐもった声が出てしまって…慌てて手で口を塞ぐも。
姉さんが真っ黒なオーラを醸し出しながら炭治郎を正座させた。
ちなみにカナヲは私に抱き着いている。
“胡蝶三姉妹の一番下の奴、十二鬼月とやり合ったらしいぞ”
“一番駄目だったのに、すげぇ強くなってるらしい”
“胡蝶三姉妹の、リン?だっけ?あいつ、なんか可愛いよな”
“俺リンちゃんに告白したら、蟲柱様に断られたんだけど…。”
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”という言葉はもう言われることがなくなって。
“…悪い虫がうろちょろし過ぎてるわね…”
“言い方悪いよしのぶ姉さん…”
好きだと告白されることが多くなった。
私が発言する前に姉さんが全て一刀両断してしまうけど…。
任務だって1人で行けるくらいまでになったのに。
任務が終わって帰ろうとすれば。
“あら、リン。奇遇ね。私も任務だったのよ”
なんて白々しい嘘を吐きながら迎えに来てくれるの。
柱って暇なのかな…って思うよね…。
姉さんと手を繋ぎ、カナエ姉さんのお墓参りへ行く。
「姉さん、リンすごく強くなったのよ?」
しのぶ姉さんがカナエ姉さんに私のことを報告してくれたけど。
カナエ姉さんは知っているよね?
だって、私に戦う術を見出させてくれたのはカナエ姉さんだから。
夢の中で、私に“舞う”ことを教えてくれたから。
私の階級は“壬”から一気に“甲”になった。
柱はまだまだ遠い。
でもいいの。
私には私の戦い方があるから。
「カナエ姉さん、見ててね。私、頑張るから」
「リン…」
しのぶ姉さんが私を抱き締めてくれた時。
“見てるよ、ちゃんと見てる。頑張って”
「「!!」」
カナエ姉さんの声が聞こえて、しのぶ姉さんと顔を見合わせて2人で泣いた。
これからまだまだ戦いが激しくなって来る。
それこそ下弦ノ鬼じゃなくて、上弦ノ鬼との戦いだってあるかもしれない。
まだまだ強くなる必要がある。
まだまだ強くなれる。
“胡蝶三姉妹の末っ子”は、まだまだ強くなるよ。
「え…“花柱”…?」
「そう、“花柱”。おめでとうリン」
十二鬼月の、下弦ノ肆を倒した翌日。
私は柱へと昇格した。
まだまだ遠いと思っていた柱に。
しかも“花柱”の階級を賜ってしまった。
「いや…いやダメだよ…“花柱”はカナエ姉さんの…」
私が“花柱”だなんて、おこがましい。
でも。
「いえ、あなただからこそよ。リン」
「リン、お前だからこそ“花柱”が相応しいんだろうがァ」
「派手に良い感じじゃねぇか、リン」
「うむ!“花柱”はリンを置いて他にないぞ!」
「うんっ!リンちゃんには“花柱”が一番似合うわっ!」
「リン、“花柱”を背負う以上、泣き言は許されない」
「…リ…胡蝶妹…“花柱”はお前が受け継ぐんだ…」
「南無…」
「リン、ね。覚えとくよ。すぐ忘れると思うけど」
他の柱の皆さんにも認めてもらえた。
“花柱”の階級が相応しいって言ってくれた。
「っありが「甘露寺さん以外の柱の皆さん、くれぐれもリンを呼び捨てないようにしてくださいね」
…しのぶ姉さんの言葉に感動が台無しに…。
「胡蝶が二人も居たらややこしいだろうがァ!!」
「ではフルネームで呼んでください」
「派手に面倒くせぇわ!」
他の柱の皆さん…蜜璃さんと水柱様…冨岡さんと無一郎君の3名は除いて、ブーブーと姉さんに文句を言っている…。
「これ、羽織」
「え?私に?」
初めての柱合会議を終えて、しのぶ姉さんと蝶屋敷へと帰れば。
姉さんが私に羽織を贈ってくれた。
「カナエ姉さんが、私にと用意してくれたお揃いの羽織なの」
カナエ姉さんが着ていた羽織は、今はしのぶ姉さんが着ているから。
自分の分をいつ私に渡そうかと悩んでいたらしくて。
私が羽織を纏うと。
「うん、良く似合うわね」
カナエ姉さんの形見の髪飾りを付けて直してくれた。
ちなみにカナエ姉さんは二つ髪飾りを付けていて、もう一つはカナヲが付けてるの。
「…ちょっと大きい」
「そうね、可愛いわ」
「え゙」
蝶屋敷のみんなにお披露目をしたら。
「…っ良いと思う…リン姉さん…」
カナヲが抱き着いてきて。
リン…姉さん…と…。
「かわ…かわわわわわわっ」
カナヲがすごく可愛くて、ギュウッと抱き締め返した。
「………」
ら、しのぶ姉さんが不貞腐れたからしのぶ姉さんも抱き締めたよ…。
…そうして。
「ん…っぅ…っぁ…っ」
「はぁ…リン…可愛い…」
…ずっと我慢してたらしく…しのぶ姉さんに抱かれた…。
何処ぞの馬の骨に奪われるくらいなら、いっそのこと自分のものにしてしまおうと思ったらしい…。
「あ…っあ…っイク…っイク…っあっあ…っ」
「えぇ…いいわ…」
姉妹でこんな関係ってどうなのって思うけど…。
しのぶ姉さんだし…まぁいいかって思っちゃう私も私だよね。
“胡蝶三姉妹の一番駄目な奴”は、“花柱”になるまで強くなった。
三姉妹とも見事に“柱”になった。
「リン、潜入捜査を派手に手伝ってくれねぇか?」
「え?潜入捜査なのに派手でいいの?」
「宇髄さん、呼び捨て厳禁ですよ。それにリンに危険な任務をさせないでください」
「過保護にも程があんだろ!リンはもう柱だぞ!」
相変わらずしのぶ姉さんは過保護だけど。
私は今、すごく充実した日々を過ごしてる。
いつか必ずやってくる大きな戦争に備えて。
鍛錬を怠らず。
更なる高みを目指して。
「リン、私を捕まえられなければ今日は激しく抱きます」
「無理に決まってんじゃんッッ!!」
しのぶ姉さんの速さに付いて行けるわけないのに…。
無理なことを言って理由付けて抱こうとするんだよね…。
「…リン姉さんの…羽織を翻して舞う姿…すごく綺麗…」
「ん゙んッ可愛い…っ」
カナヲは炭治郎と知り合い、感情が徐々に花開いてきて。
最近ますます可愛さが増しているの。
「柱合会議へ行くわよリン」
「うぅ…腰が痛い…」
姉さんは限度を覚えてくれなくて…。
場所もなかなか弁えてくれなくて…。
困った姉さんだけど。
「…次、天元さんと任務なんだよ」
「…宇髄さんでしょ?」
「だってそう呼べって…」
「…あの派手柱…」
私たちは手を繋いで、お館様のお屋敷へ向かう。
一年前、私は絶望して全てを諦めていたのに。
しのぶ姉さんの愛情で救われた。
カナエ姉さんが私に戦い方を教えてくれた。
“胡蝶三姉妹は凄い姉妹だよな”
みんなからそう言われるようになった。
「ねぇ、姉さん」
「なぁに?」
私は姉さんの手を離し、数歩前に出て。
しのぶ姉さんへ振り返って。
「大好きだよ、しのぶ姉さん」
ニッと悪戯に笑った。
「…っ!!」
たちまちしのぶ姉さんは顔を赤くさせて、私に抱き着いてきた。
綺麗な桜が舞い散る中。
私たちは再び手を繋いで。
「行こ、姉さん」
「えぇ、行きましょうリン」
笑い合って、柱合会議へと向かった。
もう大丈夫。
もう迷わないし、絶望しない。
真っ直ぐ前を見て。
大好きな人たちと共に。
精一杯生きて行くから。
カナエ姉さん、見ていてね。
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