盲目の剣士 しのぶさん男主夢
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「……おはようございます」
「あら!?お嬢ちゃん!?」
翌朝、銀麗さんのご自宅に泊まらせていただきました。
銀麗さんは私を自宅まで送ってくれてからまた夜回りを始めた。
手伝いますって言っても。
“お客様だし、柱は忙しいんだから休みなさい”
と言われてしまって…。
お布団もお借りして休ませていただきまして。
で、今です。
居間へ行けば、薬屋さんが台所にいらっしゃって。
どうやら銀麗さんに朝ごはんを作りに来たようで。
「あらまぁ、お嬢ちゃんも鬼殺隊だったのね」
薬屋さんに事情を説明すると、急遽私の分の朝食まで作ってくださいました。
「あの、一つ伺ってもいいですか?」
「ん?なんだい?」
朝食をいただきながら。
「皆さん、銀麗さんの周りにある障害物を教えてあげるのに、なぜ骨董屋さんの障害物は教えてあげないのですか?」
あれがすごく不思議で不思議で。
すると薬屋さんは、小さく笑って。
「あれは銀ちゃんの希望だからさ」
そう言った。
「え?」
銀麗さんが望んでいる?
なぜ?
「骨董屋の千太郎さんね、十年前に旅行先で奥さんを鬼に殺されてしまってね?」
とても仲の良いご夫婦だったようで、どこへ行くにも一緒だったとか。
「千太郎さんは鬼殺隊に助けられて無事だったけど、奥さんを亡くして塞ぎ込んでしまって」
五年間、誰も寄せ付けなかったと。
「でも五年前に、銀ちゃんが骨董屋さんの前を通りかかった時にね、骨董屋さんの店先にあった樽にぶつかって派手に転んでさぁ」
千太郎さんは慌てたけれど、あまりの派手な転び方に笑ってしまった。
「その次の日からさ。銀ちゃんが千太郎さんのお店の前を歩くようになったのは」
千太郎さんが仕掛ける罠に派手に転んで、千太郎さんが爆笑する。
一見すれば、盲目の方を冒涜しているのだけど。
「私たちが千太郎さんに注意をしようとしたら、銀ちゃんがね。こう言ったの」
“どんな形でも、外に出て顔を綻ばせるならそれでいいんです。千太郎さんの毎日爆笑する声が、その日の僕の活力ですよ”
なんて言って、笑ったらしい。
「……銀麗さんが…」
「千太郎さんも感謝してるのよ、銀ちゃんに。身を挺してこうして笑わしに来てくれてることを理解してるのさ」
この村と銀麗さんの絆は、確固たるもので。
昨夜のように、銀麗さんが村の人の命を守る代わりに村の人は銀麗さんの身の回りのお世話をする。
偏に銀麗さんの人柄の賜物だろう。
「…そうだったんですね…」
お味噌汁を啜り、ほう…と息を吐く。
美味しい…。
「ただいまぁ」
銀麗さんが帰宅した。
「おかえり、銀ちゃん。いつもありがとうね。朝ごはん作っといたよ」
「こちらこそいつも美味しい朝ごはんをありがとうございます。」
銀麗さんは白杖を壁に立て掛けて。
「しのぶちゃん、どこに座ってるかな?」
「あ、私は左側に座ってます」
「わかった、ありがとう」
私の向かい側に座った。
「うん、今日も美味しいです」
「そりゃ良かった。じゃあ失礼するね」
「はい、ありがとうございました」
「あ、ありがとうございました…」
薬屋さんはニコリと笑み、銀麗さん宅を出て行った。
「昨日の鬼のことなんですが」
「ん?」
「銀麗さんは、どうやって鬼の位置と動きを把握してるんですか?」
全盲なのに、骨董屋さんを避けて的確に鬼だけを斬れたのはなぜだろう。
「人間に限らずだけど、何かが動けば空気が揺れるだろう?それを感じ取ったり、足音の強弱、呼吸の強弱。どこから聞こえるか、どのくらい離れているかを予測してるんだ」
あとは、自分のあらゆる歩幅を研究したからね、なんて簡単に言うけど。
「…では、私銀麗がさんの頬に触れれたのは、ゆっくりの動作には反応しづらいということですね」
「…弱点を見抜かれたか…。その通り。ゆっくり静かに動かれると気付けないことが多いんだ」
とんでもないことをしているのよ、この人は。
聴覚や嗅覚が恐ろしいほど高くて、恐ろしいほど頭の良い人。
本当は白杖なんてなくても、この村の中でなら自由に歩けるんでしょうね。
「銀麗さんって、いくつですか?」
「僕?今年で三十五歳」
「三十五!?」
嘘でしょ…二十代前半だと思ってたけど…。
よく考えたら十五年前にすでに鬼殺隊の柱なんだから、二十代なわけないわよね…。
「最年少の十五歳で柱になったちょっと凄い人なんだよ?僕」
「…凄いですが、今の最年少は十四歳ですよ。」
「えぇえ!?僕の記録が破られただと!?」
「しかも、たった二ヶ月で柱になった子です」
「……その子人間なの?」
「暦とした人間です」
やっぱり上には上がいるもんだ、と感心している銀麗さん。
「ですが、“雷の呼吸”と“風の呼吸”の二つの呼吸を使う者は今までかつて現れてません」
「お!じゃあ今度からそれを自慢しよう」
銀麗さんは嬉しそうにお米を口に運ばせた。
「お世話になりました」
「とんでもない。またいつでも」
村の入り口で、銀麗さんが見送ってくれた。
「はい、また伺います。珍しい生薬たくさんありましたし、銀麗さんのご自宅は宝の山ですしね」
「今度時間があったら薬学についてとことんお話しようね」
銀麗さんと握手をして。
「?しのぶちゃん?」
その手を離さずに。
ゆっくりと顔を近づけて。
「どう……………」
銀麗さんの唇に、口付けをした。
触れるだけの、時間にしてそう長くない口付けを。
「やっぱり気付きませんでしたね」
クスリと笑ってやれば。
「…僕、おじさんだよ?」
「そう見えないんですよ、あなたは」
銀麗さんは頬を赤らめて。
「…やっぱりもう少し目の治療するかな」
「?なぜです?」
優しく微笑んで。
「君の顔が見たいなぁって思って」
そう言った。
「……私もお手伝いしますね、治療の」
「しのぶちゃん、心音が凄いよ?大丈夫かい?」
「ッ大丈夫です!!」
そして私は、銀麗さんへ背中を向けて。
「では、失礼します」
「うん、またね」
優しさが溢れる村を後にした。
居心地の良い村で。
村民のみんなが良い人で。
今度は何か手土産でも持って伺おう。
自分の屋敷に帰宅後、丁度不死川さんが包帯が切れたから欲しいと来ていたので。
「不死川さん、楪 銀麗という方をご存知ですか?」
知らないと思うけど、聞いてみれば。
「……なんで胡蝶がその人のことを知ってんだァ…」
と睨まれた。
“風の呼吸”の使い手の間では有名な人のようで。
“風の呼吸”の育手は必ずさんの名前を出して、如何に優秀だったかを自慢していたそう。
不死川さんも柱に成り立ての頃に、銀麗さんと出会って。
あまりの生意気さに銀麗さんにボコボコにされたらしい…。
“柱なら礼節を弁えなさい”と叱られたと…。
銀麗さんにその話をすると。
「あは!実弥はね、当時は柱としての威厳と礼節がなってなかったからね」
当時は顔を合わせたことがないけど、兄弟子としてヤキを入れたと笑っていたわ…。
あとはまぁ…。
時間が出来れば銀麗さんがいる村に行ったりして。
村の方々ともすっかり顔馴染みになりました。
「しのぶちゃん、銀麗のお嫁さんになってあげなよ!」
「な、何を仰ってるんですか」
「だって##銀ちゃんのこと好きなんだろ?はおじさんだけど、優しいし顔良いから大丈夫さ!」
…何が大丈夫なんだろうと思いつつも。
お嫁さんか…と思ったりしてしまう。
とある変わった村で、私が出会った盲目の剣士は。
「ギャハハ!銀麗!まーた引っかかったな!」
「いたた…なかなか手強いですね、千太郎さん」
その優しさと強さで。
「銀麗さん、ちゃんと受け身をとってたんですね…」
今日も笑顔と命を守っていた。
END
「……おはようございます」
「あら!?お嬢ちゃん!?」
翌朝、銀麗さんのご自宅に泊まらせていただきました。
銀麗さんは私を自宅まで送ってくれてからまた夜回りを始めた。
手伝いますって言っても。
“お客様だし、柱は忙しいんだから休みなさい”
と言われてしまって…。
お布団もお借りして休ませていただきまして。
で、今です。
居間へ行けば、薬屋さんが台所にいらっしゃって。
どうやら銀麗さんに朝ごはんを作りに来たようで。
「あらまぁ、お嬢ちゃんも鬼殺隊だったのね」
薬屋さんに事情を説明すると、急遽私の分の朝食まで作ってくださいました。
「あの、一つ伺ってもいいですか?」
「ん?なんだい?」
朝食をいただきながら。
「皆さん、銀麗さんの周りにある障害物を教えてあげるのに、なぜ骨董屋さんの障害物は教えてあげないのですか?」
あれがすごく不思議で不思議で。
すると薬屋さんは、小さく笑って。
「あれは銀ちゃんの希望だからさ」
そう言った。
「え?」
銀麗さんが望んでいる?
なぜ?
「骨董屋の千太郎さんね、十年前に旅行先で奥さんを鬼に殺されてしまってね?」
とても仲の良いご夫婦だったようで、どこへ行くにも一緒だったとか。
「千太郎さんは鬼殺隊に助けられて無事だったけど、奥さんを亡くして塞ぎ込んでしまって」
五年間、誰も寄せ付けなかったと。
「でも五年前に、銀ちゃんが骨董屋さんの前を通りかかった時にね、骨董屋さんの店先にあった樽にぶつかって派手に転んでさぁ」
千太郎さんは慌てたけれど、あまりの派手な転び方に笑ってしまった。
「その次の日からさ。銀ちゃんが千太郎さんのお店の前を歩くようになったのは」
千太郎さんが仕掛ける罠に派手に転んで、千太郎さんが爆笑する。
一見すれば、盲目の方を冒涜しているのだけど。
「私たちが千太郎さんに注意をしようとしたら、銀ちゃんがね。こう言ったの」
“どんな形でも、外に出て顔を綻ばせるならそれでいいんです。千太郎さんの毎日爆笑する声が、その日の僕の活力ですよ”
なんて言って、笑ったらしい。
「……銀麗さんが…」
「千太郎さんも感謝してるのよ、銀ちゃんに。身を挺してこうして笑わしに来てくれてることを理解してるのさ」
この村と銀麗さんの絆は、確固たるもので。
昨夜のように、銀麗さんが村の人の命を守る代わりに村の人は銀麗さんの身の回りのお世話をする。
偏に銀麗さんの人柄の賜物だろう。
「…そうだったんですね…」
お味噌汁を啜り、ほう…と息を吐く。
美味しい…。
「ただいまぁ」
銀麗さんが帰宅した。
「おかえり、銀ちゃん。いつもありがとうね。朝ごはん作っといたよ」
「こちらこそいつも美味しい朝ごはんをありがとうございます。」
銀麗さんは白杖を壁に立て掛けて。
「しのぶちゃん、どこに座ってるかな?」
「あ、私は左側に座ってます」
「わかった、ありがとう」
私の向かい側に座った。
「うん、今日も美味しいです」
「そりゃ良かった。じゃあ失礼するね」
「はい、ありがとうございました」
「あ、ありがとうございました…」
薬屋さんはニコリと笑み、銀麗さん宅を出て行った。
「昨日の鬼のことなんですが」
「ん?」
「銀麗さんは、どうやって鬼の位置と動きを把握してるんですか?」
全盲なのに、骨董屋さんを避けて的確に鬼だけを斬れたのはなぜだろう。
「人間に限らずだけど、何かが動けば空気が揺れるだろう?それを感じ取ったり、足音の強弱、呼吸の強弱。どこから聞こえるか、どのくらい離れているかを予測してるんだ」
あとは、自分のあらゆる歩幅を研究したからね、なんて簡単に言うけど。
「…では、私銀麗がさんの頬に触れれたのは、ゆっくりの動作には反応しづらいということですね」
「…弱点を見抜かれたか…。その通り。ゆっくり静かに動かれると気付けないことが多いんだ」
とんでもないことをしているのよ、この人は。
聴覚や嗅覚が恐ろしいほど高くて、恐ろしいほど頭の良い人。
本当は白杖なんてなくても、この村の中でなら自由に歩けるんでしょうね。
「銀麗さんって、いくつですか?」
「僕?今年で三十五歳」
「三十五!?」
嘘でしょ…二十代前半だと思ってたけど…。
よく考えたら十五年前にすでに鬼殺隊の柱なんだから、二十代なわけないわよね…。
「最年少の十五歳で柱になったちょっと凄い人なんだよ?僕」
「…凄いですが、今の最年少は十四歳ですよ。」
「えぇえ!?僕の記録が破られただと!?」
「しかも、たった二ヶ月で柱になった子です」
「……その子人間なの?」
「暦とした人間です」
やっぱり上には上がいるもんだ、と感心している銀麗さん。
「ですが、“雷の呼吸”と“風の呼吸”の二つの呼吸を使う者は今までかつて現れてません」
「お!じゃあ今度からそれを自慢しよう」
銀麗さんは嬉しそうにお米を口に運ばせた。
「お世話になりました」
「とんでもない。またいつでも」
村の入り口で、銀麗さんが見送ってくれた。
「はい、また伺います。珍しい生薬たくさんありましたし、銀麗さんのご自宅は宝の山ですしね」
「今度時間があったら薬学についてとことんお話しようね」
銀麗さんと握手をして。
「?しのぶちゃん?」
その手を離さずに。
ゆっくりと顔を近づけて。
「どう……………」
銀麗さんの唇に、口付けをした。
触れるだけの、時間にしてそう長くない口付けを。
「やっぱり気付きませんでしたね」
クスリと笑ってやれば。
「…僕、おじさんだよ?」
「そう見えないんですよ、あなたは」
銀麗さんは頬を赤らめて。
「…やっぱりもう少し目の治療するかな」
「?なぜです?」
優しく微笑んで。
「君の顔が見たいなぁって思って」
そう言った。
「……私もお手伝いしますね、治療の」
「しのぶちゃん、心音が凄いよ?大丈夫かい?」
「ッ大丈夫です!!」
そして私は、銀麗さんへ背中を向けて。
「では、失礼します」
「うん、またね」
優しさが溢れる村を後にした。
居心地の良い村で。
村民のみんなが良い人で。
今度は何か手土産でも持って伺おう。
自分の屋敷に帰宅後、丁度不死川さんが包帯が切れたから欲しいと来ていたので。
「不死川さん、楪 銀麗という方をご存知ですか?」
知らないと思うけど、聞いてみれば。
「……なんで胡蝶がその人のことを知ってんだァ…」
と睨まれた。
“風の呼吸”の使い手の間では有名な人のようで。
“風の呼吸”の育手は必ずさんの名前を出して、如何に優秀だったかを自慢していたそう。
不死川さんも柱に成り立ての頃に、銀麗さんと出会って。
あまりの生意気さに銀麗さんにボコボコにされたらしい…。
“柱なら礼節を弁えなさい”と叱られたと…。
銀麗さんにその話をすると。
「あは!実弥はね、当時は柱としての威厳と礼節がなってなかったからね」
当時は顔を合わせたことがないけど、兄弟子としてヤキを入れたと笑っていたわ…。
あとはまぁ…。
時間が出来れば銀麗さんがいる村に行ったりして。
村の方々ともすっかり顔馴染みになりました。
「しのぶちゃん、銀麗のお嫁さんになってあげなよ!」
「な、何を仰ってるんですか」
「だって##銀ちゃんのこと好きなんだろ?はおじさんだけど、優しいし顔良いから大丈夫さ!」
…何が大丈夫なんだろうと思いつつも。
お嫁さんか…と思ったりしてしまう。
とある変わった村で、私が出会った盲目の剣士は。
「ギャハハ!銀麗!まーた引っかかったな!」
「いたた…なかなか手強いですね、千太郎さん」
その優しさと強さで。
「銀麗さん、ちゃんと受け身をとってたんですね…」
今日も笑顔と命を守っていた。
END
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