盲目の剣士 しのぶさん男主夢
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「ありがとうございます」
「なんも、こちらこそだよ」
薬屋さんにて。
珍しい生薬をたくさん買えた。
蝉退(センタイ)という、スジアカクマゼミという蝉の幼虫の抜け殻を乾燥させたものや。
麝香鹿(ジャコウジカ)の発情期などに、オスの下腹部から分泌される“麝香”を乾燥させたもの。
棘猬皮(シイヒ)と呼ばれるハリネズミの皮など。
まだまだあるのですが、こんな珍しい生薬に出会えると思ってなかったから、持ち合わせがなくて。
「こんなに買ってもらっちゃって」
「とんでもないです。珍しい生薬ばかりで宝の山ですよ」
近年ではお目にかかれない代物ばかり。
逆に売っていただけてありがたい限りです。
「仕入れてくれる人がね、高く売れるからって持って来てくれるんだ」
買い取るって言っているのに、いいからいいからと置いて行かれるらしい。
裕福な方なんでしょうか?
高値で売り付けることなく、タダであげているなんて…。
なんて思っていたら。
「こんにちは、薬屋さん」
先程の、銀麗さんがやってきた。
「こんにちは銀ちゃん。今日は何を持って来てくれたんだい?」
え?
もしかして、仕入れ人ってこの人?
…盲目なのに、そんなことが?
「今日は熊胆を持って「熊胆!?」ん?」
…熊胆と聞いて、思わず反応してしまった…。
「今の声は、先程親切にしてくれたお嬢さんかな?」
「あ…はい。こんにちは…」
「こんにちは」
銀麗さんはニコリと笑み、懐から熊胆が入った袋を取り出して。
「やっぱり、君はお医者様だったんだね」
そう言った。
「え?やっぱりとは?」
先程は私が薬学に精通している話なんてしなかったのに…。
「君から僅かに薬品の匂いがしたから、お医者様なのかなぁと思ってたんだ」
当たりみたいだね、と銀麗さんは言う。
「…薬品の…匂い…?」
私は自分の体を嗅いでみる。
入浴は毎日してるのに、そんな匂いする…?
「お嬢ちゃん、銀ちゃんは視覚以外の感覚がずば抜けて高いんだよ」
だから多分、銀ちゃんにしかわからないと薬屋さんが言った。
…なるほど。
盲目の方だから、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませているんですね。
「あら?銀ちゃん、包帯が汚れてるよ」
「さっき転んだ時かなぁ。薬屋さん、包帯を売ってくれますか?」
「なんも!包帯くらいあげるから待ってな!」
「ありがとう、薬屋さん」
薬屋さんは奥へと下がり、銀麗さんが包帯を取り始めたので。
「お手伝いしますよ」
「なんと。本当にご親切なお嬢さんですね。」
ありがとう、と銀麗さんはまた笑った。
ゆっくり包帯を取っていく。
瞳は閉じられていて、顔には目立った傷もない。
「……取りましたよ…」
……殿方に使うべき言葉ではないけど。
とても綺麗な顔をしていますね…この人…。
「ありがとう」
銀麗さんがゆっくりと目を開ければ。
「……!」
透き通るような。
クリアな瞳で。
ただただ見惚れてしまった。
「やっぱりダメかい?」
「!」
薬屋さんが戻って来た。
「まったく見えません。もう諦めようかなぁ」
銀麗さんはため息を零した。
「何か薬を?」
包帯にはガーゼも付いてないし、銀麗さんの顔にもそれらしい痕はない。
「液体を調合して、直接目に数滴落としたんですが」
…この人も薬学に詳しい人なんだ。
「でもやっぱりダメだ。鬼の毒は強力だったということで、もう諦めます」
鬼?
今鬼って…。
「…鬼の毒で目が?」
私が銀麗さんに問い掛ければ。
「うん、十五年前にね」
痛すぎて50メートルを10往復くらいしたよと笑いながら言った。
「十五年前から今に至るまで、光を感じるくらいまで回復すればなぁと思って色々治療したけどダメだった」
私は銀麗さんへ手を伸ばして、頬に触れる。
「!」
銀麗さんがビクッと肩を震わせた。
まぁ突然触られたら驚きますよね。
「…お嬢ちゃん、銀ちゃんに触れるのすごいねぇ」
そう思ったら、薬屋さんが驚いていて。
「え?」
私が首を傾げると。
「!!」
薬屋さんが銀麗さんへと黙って手を伸ばすと、触れる前に銀麗さんは薬屋さんの手を掴んだ。
「銀ちゃんは感覚がすごいから触られる前にこうして掴まれるんだよ」
「…そうなんですか」
なのに、私は掴まれずに触れれた?
どうして?
「…さて。僕はそろそろ失礼しますね」
「あ、銀ちゃん。お漬物漬けたから持って行っとくれ」
薬屋さんはまた奥へと下がり、お漬物が入った袋を持って来て銀麗さんに渡した。
「いつもありがとうございます、薬屋さん」
「とんでもないよ。こちらこそいつもありがとうさ」
「お嬢さんも、今日は雨が降るから急いでお帰り」
またね、と銀麗さんはお店から出て行った。
「…なんだか不思議な人ですね…」
銀麗さんの背中を見つめ、そう呟くと。
「不思議なもんかい。この村は銀ちゃんには返し切れない恩があるからね。」
薬屋さんは私に熊胆を渡してくれて。
「たくさん買ってくれたおまけに、これをあげるよ」
「え?いえいえ、こんな高価なもの。いただけません」
「高価と言っても、買い取ったわけじゃないから店に損はないのさね」
だから持って行きな、と。
熊胆をくださった…。
「ありがとうございます…」
本当に不思議な村ですね…。
.
「ありがとうございます」
「なんも、こちらこそだよ」
薬屋さんにて。
珍しい生薬をたくさん買えた。
蝉退(センタイ)という、スジアカクマゼミという蝉の幼虫の抜け殻を乾燥させたものや。
麝香鹿(ジャコウジカ)の発情期などに、オスの下腹部から分泌される“麝香”を乾燥させたもの。
棘猬皮(シイヒ)と呼ばれるハリネズミの皮など。
まだまだあるのですが、こんな珍しい生薬に出会えると思ってなかったから、持ち合わせがなくて。
「こんなに買ってもらっちゃって」
「とんでもないです。珍しい生薬ばかりで宝の山ですよ」
近年ではお目にかかれない代物ばかり。
逆に売っていただけてありがたい限りです。
「仕入れてくれる人がね、高く売れるからって持って来てくれるんだ」
買い取るって言っているのに、いいからいいからと置いて行かれるらしい。
裕福な方なんでしょうか?
高値で売り付けることなく、タダであげているなんて…。
なんて思っていたら。
「こんにちは、薬屋さん」
先程の、銀麗さんがやってきた。
「こんにちは銀ちゃん。今日は何を持って来てくれたんだい?」
え?
もしかして、仕入れ人ってこの人?
…盲目なのに、そんなことが?
「今日は熊胆を持って「熊胆!?」ん?」
…熊胆と聞いて、思わず反応してしまった…。
「今の声は、先程親切にしてくれたお嬢さんかな?」
「あ…はい。こんにちは…」
「こんにちは」
銀麗さんはニコリと笑み、懐から熊胆が入った袋を取り出して。
「やっぱり、君はお医者様だったんだね」
そう言った。
「え?やっぱりとは?」
先程は私が薬学に精通している話なんてしなかったのに…。
「君から僅かに薬品の匂いがしたから、お医者様なのかなぁと思ってたんだ」
当たりみたいだね、と銀麗さんは言う。
「…薬品の…匂い…?」
私は自分の体を嗅いでみる。
入浴は毎日してるのに、そんな匂いする…?
「お嬢ちゃん、銀ちゃんは視覚以外の感覚がずば抜けて高いんだよ」
だから多分、銀ちゃんにしかわからないと薬屋さんが言った。
…なるほど。
盲目の方だから、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませているんですね。
「あら?銀ちゃん、包帯が汚れてるよ」
「さっき転んだ時かなぁ。薬屋さん、包帯を売ってくれますか?」
「なんも!包帯くらいあげるから待ってな!」
「ありがとう、薬屋さん」
薬屋さんは奥へと下がり、銀麗さんが包帯を取り始めたので。
「お手伝いしますよ」
「なんと。本当にご親切なお嬢さんですね。」
ありがとう、と銀麗さんはまた笑った。
ゆっくり包帯を取っていく。
瞳は閉じられていて、顔には目立った傷もない。
「……取りましたよ…」
……殿方に使うべき言葉ではないけど。
とても綺麗な顔をしていますね…この人…。
「ありがとう」
銀麗さんがゆっくりと目を開ければ。
「……!」
透き通るような。
クリアな瞳で。
ただただ見惚れてしまった。
「やっぱりダメかい?」
「!」
薬屋さんが戻って来た。
「まったく見えません。もう諦めようかなぁ」
銀麗さんはため息を零した。
「何か薬を?」
包帯にはガーゼも付いてないし、銀麗さんの顔にもそれらしい痕はない。
「液体を調合して、直接目に数滴落としたんですが」
…この人も薬学に詳しい人なんだ。
「でもやっぱりダメだ。鬼の毒は強力だったということで、もう諦めます」
鬼?
今鬼って…。
「…鬼の毒で目が?」
私が銀麗さんに問い掛ければ。
「うん、十五年前にね」
痛すぎて50メートルを10往復くらいしたよと笑いながら言った。
「十五年前から今に至るまで、光を感じるくらいまで回復すればなぁと思って色々治療したけどダメだった」
私は銀麗さんへ手を伸ばして、頬に触れる。
「!」
銀麗さんがビクッと肩を震わせた。
まぁ突然触られたら驚きますよね。
「…お嬢ちゃん、銀ちゃんに触れるのすごいねぇ」
そう思ったら、薬屋さんが驚いていて。
「え?」
私が首を傾げると。
「!!」
薬屋さんが銀麗さんへと黙って手を伸ばすと、触れる前に銀麗さんは薬屋さんの手を掴んだ。
「銀ちゃんは感覚がすごいから触られる前にこうして掴まれるんだよ」
「…そうなんですか」
なのに、私は掴まれずに触れれた?
どうして?
「…さて。僕はそろそろ失礼しますね」
「あ、銀ちゃん。お漬物漬けたから持って行っとくれ」
薬屋さんはまた奥へと下がり、お漬物が入った袋を持って来て銀麗さんに渡した。
「いつもありがとうございます、薬屋さん」
「とんでもないよ。こちらこそいつもありがとうさ」
「お嬢さんも、今日は雨が降るから急いでお帰り」
またね、と銀麗さんはお店から出て行った。
「…なんだか不思議な人ですね…」
銀麗さんの背中を見つめ、そう呟くと。
「不思議なもんかい。この村は銀ちゃんには返し切れない恩があるからね。」
薬屋さんは私に熊胆を渡してくれて。
「たくさん買ってくれたおまけに、これをあげるよ」
「え?いえいえ、こんな高価なもの。いただけません」
「高価と言っても、買い取ったわけじゃないから店に損はないのさね」
だから持って行きな、と。
熊胆をくださった…。
「ありがとうございます…」
本当に不思議な村ですね…。
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