名探偵コナン 旧拍手文置き場
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
'
「どうした?ベルモット」
「……え?」
「何か考え事か?」
ボウヤとの密会を終えて、数日。
とある企業との極秘取り引きの後。
ジンの愛車の後部座席にて。
何も語らないまま、流れる景色を見ていたら。
ジンがバックミラー越しに私を睨んでいた。
「そうだ、と言ったら?」
「何を考えていた」
「私が話すとでも?」
「…ふん」
ジンは舌打ちをして、視線を戻した。
“ベルモットお前、組織を抜けろ”
頭の中で、ボウヤのあの言葉がリピートされる。
“あの人”を失った今、私が組織に残る理由はただ一つ。
組織に復讐をすること。
私に“あの人”を殺すよう命じた存在と。
アイリの存在を組織に告げた男へ。
この二人の人間を殺すためだけに私は組織に残ったの。
けれど。
“オメーの旦那、もしかしたら生きてるんじゃねぇか?”
ボウヤが見出だした一つの可能性に、その憎しみが揺らいでしまった。
アイリの存在を告げたのはジンではなく。
“あの人”…クロノ自身かもしれない。
アイリの存在が組織に知られてしまうかもしれないという恐怖から、解放させるために。
チラリと気付かれないようにジンを見る。
憎くて憎くて仕方がなかったこの男への憎しみも。
薄れてきてしまっている。
“もし旦那が生きていたら、オメーにはもう組織にいる理由がねぇじゃねぇか”
そうだけれど。
“この条件を飲まねぇなら、手は貸さねぇ”
弱味につけ込むなんて、いい性格をしているわ。
“アイリの傍に居てやれよ。安心させてやれよ。ずっと苦しんでるんだから”
組織はアイリの行方を知らない。
“オメーが組織を抜けたとしても、アイリがオレの傍にいる以上、人質にされることなんてねぇ”
6才の姿になっていることなんて夢にも思っていないでしょう。
だから。
…組織を抜けるなら。
今しかない。
「ありがとう」
「…」
マンションの前。
車から出る。
「…何を考えてるか知らねぇが、我々を裏切ることは許さねぇ」
「わかっているわ」
ジンは探るように私を睨み、去って行った。
許さない、か。
私は小さく笑み、右ウィンカーを上げたジンの車を見つめて。
「許さなくても結構よ」
許してもらうつもりなんてない。
むしろ、恨んでくれて構わない。
「さようなら、ジン」
私は組織よりも。
クロノを選ぶ。
アイリを選ぶ。
“もし組織を抜けるなら、江戸川文代に変装して探偵事務所に来い。オメーなら江戸川文代が誰か、わかってんだろ”
組織を抜けるフリだって出来るけれど。
「…どうにも、甘くなったものね」
ボウヤは本気で“あの人”を探してくれようとしているから。
嘘を吐くことはしたくない。
それに。
アイリが悲しむから。
アイリの傍に居たいから。
だから私は。
「江戸川文代です」
可能性に賭ける。
クロノは生きていると。
信じる。
「…気は確かなの?」
「当たり前だ。それにここのほうが、灰原にとってもオメーにとっても安全なんだよ」
「…コナン」
「…彼に何を言っても無駄ね…」
シェリーにとって安全ということは。
万が一組織に知られても、私がいれば先手を打てるということ。
私にとって安全ということは。
組織と関わりがまったくないこの家なら、最高の隠れ家になるということ。
「まぁ、外に出る時は変装してもらわねぇと」
「…わ、若い女性と…一つ屋根の…」
「博士、こう見えて「言わなくていいの、アイリ」
私はアイリと顔を見合わせて。
シェリーと阿笠博士を見て。
もう一度アイリと顔を見合わせて。
「食事は私が作らないとダメかしら?」
「うん」
小さく笑い合った。
15年前の。
幸せだったあの頃を。
少しだけ思い出すことが出来た――…。
NEXT
「どうした?ベルモット」
「……え?」
「何か考え事か?」
ボウヤとの密会を終えて、数日。
とある企業との極秘取り引きの後。
ジンの愛車の後部座席にて。
何も語らないまま、流れる景色を見ていたら。
ジンがバックミラー越しに私を睨んでいた。
「そうだ、と言ったら?」
「何を考えていた」
「私が話すとでも?」
「…ふん」
ジンは舌打ちをして、視線を戻した。
“ベルモットお前、組織を抜けろ”
頭の中で、ボウヤのあの言葉がリピートされる。
“あの人”を失った今、私が組織に残る理由はただ一つ。
組織に復讐をすること。
私に“あの人”を殺すよう命じた存在と。
アイリの存在を組織に告げた男へ。
この二人の人間を殺すためだけに私は組織に残ったの。
けれど。
“オメーの旦那、もしかしたら生きてるんじゃねぇか?”
ボウヤが見出だした一つの可能性に、その憎しみが揺らいでしまった。
アイリの存在を告げたのはジンではなく。
“あの人”…クロノ自身かもしれない。
アイリの存在が組織に知られてしまうかもしれないという恐怖から、解放させるために。
チラリと気付かれないようにジンを見る。
憎くて憎くて仕方がなかったこの男への憎しみも。
薄れてきてしまっている。
“もし旦那が生きていたら、オメーにはもう組織にいる理由がねぇじゃねぇか”
そうだけれど。
“この条件を飲まねぇなら、手は貸さねぇ”
弱味につけ込むなんて、いい性格をしているわ。
“アイリの傍に居てやれよ。安心させてやれよ。ずっと苦しんでるんだから”
組織はアイリの行方を知らない。
“オメーが組織を抜けたとしても、アイリがオレの傍にいる以上、人質にされることなんてねぇ”
6才の姿になっていることなんて夢にも思っていないでしょう。
だから。
…組織を抜けるなら。
今しかない。
「ありがとう」
「…」
マンションの前。
車から出る。
「…何を考えてるか知らねぇが、我々を裏切ることは許さねぇ」
「わかっているわ」
ジンは探るように私を睨み、去って行った。
許さない、か。
私は小さく笑み、右ウィンカーを上げたジンの車を見つめて。
「許さなくても結構よ」
許してもらうつもりなんてない。
むしろ、恨んでくれて構わない。
「さようなら、ジン」
私は組織よりも。
クロノを選ぶ。
アイリを選ぶ。
“もし組織を抜けるなら、江戸川文代に変装して探偵事務所に来い。オメーなら江戸川文代が誰か、わかってんだろ”
組織を抜けるフリだって出来るけれど。
「…どうにも、甘くなったものね」
ボウヤは本気で“あの人”を探してくれようとしているから。
嘘を吐くことはしたくない。
それに。
アイリが悲しむから。
アイリの傍に居たいから。
だから私は。
「江戸川文代です」
可能性に賭ける。
クロノは生きていると。
信じる。
「…気は確かなの?」
「当たり前だ。それにここのほうが、灰原にとってもオメーにとっても安全なんだよ」
「…コナン」
「…彼に何を言っても無駄ね…」
シェリーにとって安全ということは。
万が一組織に知られても、私がいれば先手を打てるということ。
私にとって安全ということは。
組織と関わりがまったくないこの家なら、最高の隠れ家になるということ。
「まぁ、外に出る時は変装してもらわねぇと」
「…わ、若い女性と…一つ屋根の…」
「博士、こう見えて「言わなくていいの、アイリ」
私はアイリと顔を見合わせて。
シェリーと阿笠博士を見て。
もう一度アイリと顔を見合わせて。
「食事は私が作らないとダメかしら?」
「うん」
小さく笑い合った。
15年前の。
幸せだったあの頃を。
少しだけ思い出すことが出来た――…。
NEXT