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「これで、完了…と。あら、丁度いいタイミングね」

クロノから連絡が入った。

ターゲットの自宅からそう離れてない場所にバイクを停めて、クロノの依頼人とメールのやり取りをしていた。

報酬の受け渡しの日時と場所をね。

「いたいた」

クロノを迎えに行くと、クロノは公園のベンチで携帯電話をいじっていた。

「お待たせ」

「ん」

ヘルメットを渡せば、携帯電話を閉じた。

「誰にメール？」

「新ちゃん。課題忘れてたから、新ちゃんちに行って」

「その新ちゃんちはどこ？女なの？」

「ナビする。女じゃない」

「ならいいわ」

バイクを走らせ、人を殺したその足で友人宅へ。

精神鑑定されれば、おそらく正常ではないと言われるわね。

「ターゲットはどんな感じだったの？」

「いい感じにビビってた」

「そう。依頼人の要望には応えれたようね」

「うん」

それでも一度も取り乱すことはなく、常に冷静で。

冷酷で。

「報酬の受け渡しは指定しといたわよ。」

「ウイルスは？」

「送ったわ」

「ん」

クロノに報酬の受け渡し場所と時間を指定したことを教える。

ウイルスは、コンピューターウイルスのこと。

組織が開発したコンピューターウイルスは、パソコンを内部から破壊して閲覧はおろか電源すら出来なくさせるもの。

データも完璧に破壊出来るから復元も不可能。

「これで依頼人の恨みと憎しみ、悲しみが少しでも晴れるといいなぁ」

「…そうね」

クロノは人の心に敏感な子。

特に虐待されてる子は一目見ただけで気づいてしまうくらい。

深い傷を背負う子。

世間から見たら、２１世紀最大の悪なんでしょうけど。



その２１世紀最大の悪は。



誰よりも何よりも。








大切な人を理不尽に殺された遺族の、最大の味方だった。







“神だ”

“また神の裁きが下ったんだ”

“神がいれば、殺人事件も減るんじゃないか？”

クロノを崇拝する人もいれば。

“早く捕まれ”

“怖い世の中だよ…”

“何してんだ警察。早く捕まえろよ”

非難する人もいる。

どちらが正しいかなんてわからない。

「眠くなってきた」

「今日はしないの？」

「する」

「はいはい」

ただ私が思うのは。

痛みを知るこの愛しい子の、永遠の味方で居たいということ。



「サンキュー、新一」

「おう。明日忘れずに持ってきてくれよな」

「忘れたらごめんな」

「ぜってー忘れんなっ！」

この数ヵ月後、クロノの友人である工藤新一が平成のホームズとその名を馳せることになる。



クロノの前に辿り着ける日は、いつになるのかしらね。

楽しみだわ、ふふっ。



END