手を伸ばせば ベルモット百合夢
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志保のお母さんが亡くなったって聞いたのは、10歳の時。
病気なのか事故なのか。
聞いても教えてくれなかった。
志保と会える機会が劇的に減った。
会いたいって言っても、また今度ねと返される。
一人で留守番が出来るようになってからは、お母さんの帰宅日数も減って。
一週間に一度会えればいいくらい。
お母さんにも会えなくなってきた。
寂しいと言える相手もいない。
悲しいと言える相手もいない。
一人の時間が苦痛だった。
独りで11歳を迎えたある日。
11歳らしからぬ知識は、時に残酷だと知った。
きっかけは、大柄な男の人が私の前に現れた時。
冷たく見下ろされ、身動き取れなかった私。
お母さんが来て、クスリと笑みを浮かべて。
『威嚇しないでくれる?』
私の頭に手を置いた。
そう。
そうだ。
私の頭に手を置いた瞬間。
お母さんが悪いことをしていると気付いたのは。
相変わらず私には優しい笑みを浮かべてくれるけど。
お母さんの手が少しだけ震えていたから。
ああ。
人質なんだと。
お母さんがこの男の人を裏切ったら私が殺される。
そしてお母さんも殺される。
11歳を迎えた日だ。
私がお母さんの足枷にしかなっていないと気付いたのは。
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