'



「へ？」

男はきょとん顔を浮かべた。

「アイリ？なんて言ったの？」

「早く免許証を出さないと、男の警察呼びますよ。です」

アイリ…はニコリとまた笑う。

「な、なんだそうか…殺す言われたのかと思った…」

男はフランス語を話せるのは、日常会話くらいで普段使わない言葉はわからないようだ。

「いかつーいおじさんよりも、若い私たちに免許証を出して切られたほうがいいでしょ？」

「まぁ…そうだけど…」

「だからほら、早く免許証出して」

「でもデート…」

「出してくれたら考えるわ」

「ほんと？じゃあはい」

「ん、はい。ありがとう。考えた結果、やっぱりやめとくわ」

「ええ！？」

ということで、ようやく事が解決した…。









「ということがあったわ」

「…私の警察生命に関わるじゃないそれ…」

ベルモットは帰宅後、変装を解いてアイリの自宅へ。

アイリがなぜ自分で仕事へ行かなかったかと言うと。

「で？あなたは調子どうなの？」

「熱は下がったわ。」

風邪を引いたため。

休むために電話をかけようとしたところ、ベルモットに止められ自分が行くと言い出したのだ。

最初こそ必死に止めたが。

『煩いわね。ヤるわよ？』

と脅されたため、泣く泣く行かせたということだ。

「一応、解熱剤買ってきたのだけど、必要なかったわね」


「解熱剤くらいありますー」

と言うが、その解熱剤もいつぞやベルモットが薬箱に忍ばせたものだった。

ベルモットはそれにまったく気付かないアイリにため息を零して、ベッドに膝をついて、アイリへ顔を寄せて。

「…風邪移るわよ？」

額を合わせた。

「なに？額を合わせただけで風邪が移るとか、あなたのウイルスはそんな悪質なの？」

「ねぇ、風邪のウイルスに良質なんてあるの？」

ぶちぶち文句を言うアイリを見つめ、ふと笑う。

「元気になったじゃない。私のおかげね」

「今回は看病されませんがぁ」

いつになく毒を吐くアイリ。

ベルモットは目を細めて。




「もしかして、寂しかった？」




なーんて言ってみた。



.