背中合わせ ベルモット百合夢
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「………」
あなたの家の、玄関の前よと言えればいいのにね。
「…あるホテルの、地下駐車場よ」
そうすれば、あなたの顔も見れるしちゃんと声も聞けるのに。
『…そう』
こうして嘘を吐くことしか出来ない。
『ホテルの…』
「そうよ」
会いたいはずなのに会ってはいけない。
怪我のこと、バカにされそうだしね。
なんて、皮肉に笑った時。
「…ッ!」
ドアの向こうに気配を感じた。
『…ホテルは…暖かい…?』
電話越しにも、ドアの向こうからも聞こえるアイリの声。
…気づかれちゃったわね。
「……そうね」
ドアに背中を預け、空を見上げて。
「少し、寒いかしら」
肩を竦めれば。
カチャ、と。
鍵が開く音。
…バカね、本当に。
「心配してるの?」
『してません!』
問えばすぐに返って来る返事。
それがすごく、心地良い。
「…じゃあ、そろそろ寝るわ」
さすがに痛みも強くなってきたし。
そろそろ戻らなければ、ジンたちが来るかもしれない。
『……来ないの?』
「さっきも言ったけど、色々と忙しいのよ」
怪我が治ってから、また来るから。
『…そっか…』
「…えぇ。じゃあね、全裸で寝て風邪引くんじゃないわよ?」
からかうように言うと。
『寝ないわよっ!』
と、また怒ってきた。
「ふふっ、おやすみなさい」
『…おやすみなさい』
ピッと。
名残惜しく。
電源ボタンを押した。
ドアの向こうの気配は離れないまま。
私もドアから離れず、ただ空を見上げて。
「…星が綺麗ね」
独り言を言うと。
『見えないし…』
ドアの向こうからも独り言が聞こえた。
「『……』」
お互い無言になって。
『…私も星、見たいな…』
静寂を破ったその独り言に、私は目を閉じて。
「このホテル、寒いわよ?」
そう返せば。
『毛布持って行くわ』
ドアの向こうの気配がなくなった。
この瞬間に帰ればよかったのに。
「ふふっ、アイリにバカなんてもう言えないわね」
自分の甘さに笑みが零れた。
それからは…。
「怪我してるなら早く言いなさいよねっ!」
「もう治療も終えたから大丈夫よ」
「痛いんでしょ!?」
「痛いわ」
「じゃあ大丈夫じゃないじゃない!」
怪我をしていることがバレて、無理やり自宅へ押し込まれた。
甘い時間なんて必要ない。
「撃たれるなんて…」
「私もびっくりしたわよ」
「びっくりしただけで済んだあなたがすごいわね…」
アイリの顔を見れた。
声も聞けた。
その暖かさに触れることが出来た。
甘い言葉なんて必要ない。
ただこうして。
「お腹減らない?」
「何も食べてないの?」
「えぇ」
「じゃあ、渋々作ってあげるわ」
「嫌々お願いするわ」
「んま!可愛くないっ!」
「お互い様でしょ?」
アイリと過ごせれば。
貶し合ってるだけでもいい。
ただこうして。
同じ空間に居れるだけで…──
END
「………」
あなたの家の、玄関の前よと言えればいいのにね。
「…あるホテルの、地下駐車場よ」
そうすれば、あなたの顔も見れるしちゃんと声も聞けるのに。
『…そう』
こうして嘘を吐くことしか出来ない。
『ホテルの…』
「そうよ」
会いたいはずなのに会ってはいけない。
怪我のこと、バカにされそうだしね。
なんて、皮肉に笑った時。
「…ッ!」
ドアの向こうに気配を感じた。
『…ホテルは…暖かい…?』
電話越しにも、ドアの向こうからも聞こえるアイリの声。
…気づかれちゃったわね。
「……そうね」
ドアに背中を預け、空を見上げて。
「少し、寒いかしら」
肩を竦めれば。
カチャ、と。
鍵が開く音。
…バカね、本当に。
「心配してるの?」
『してません!』
問えばすぐに返って来る返事。
それがすごく、心地良い。
「…じゃあ、そろそろ寝るわ」
さすがに痛みも強くなってきたし。
そろそろ戻らなければ、ジンたちが来るかもしれない。
『……来ないの?』
「さっきも言ったけど、色々と忙しいのよ」
怪我が治ってから、また来るから。
『…そっか…』
「…えぇ。じゃあね、全裸で寝て風邪引くんじゃないわよ?」
からかうように言うと。
『寝ないわよっ!』
と、また怒ってきた。
「ふふっ、おやすみなさい」
『…おやすみなさい』
ピッと。
名残惜しく。
電源ボタンを押した。
ドアの向こうの気配は離れないまま。
私もドアから離れず、ただ空を見上げて。
「…星が綺麗ね」
独り言を言うと。
『見えないし…』
ドアの向こうからも独り言が聞こえた。
「『……』」
お互い無言になって。
『…私も星、見たいな…』
静寂を破ったその独り言に、私は目を閉じて。
「このホテル、寒いわよ?」
そう返せば。
『毛布持って行くわ』
ドアの向こうの気配がなくなった。
この瞬間に帰ればよかったのに。
「ふふっ、アイリにバカなんてもう言えないわね」
自分の甘さに笑みが零れた。
それからは…。
「怪我してるなら早く言いなさいよねっ!」
「もう治療も終えたから大丈夫よ」
「痛いんでしょ!?」
「痛いわ」
「じゃあ大丈夫じゃないじゃない!」
怪我をしていることがバレて、無理やり自宅へ押し込まれた。
甘い時間なんて必要ない。
「撃たれるなんて…」
「私もびっくりしたわよ」
「びっくりしただけで済んだあなたがすごいわね…」
アイリの顔を見れた。
声も聞けた。
その暖かさに触れることが出来た。
甘い言葉なんて必要ない。
ただこうして。
「お腹減らない?」
「何も食べてないの?」
「えぇ」
「じゃあ、渋々作ってあげるわ」
「嫌々お願いするわ」
「んま!可愛くないっ!」
「お互い様でしょ?」
アイリと過ごせれば。
貶し合ってるだけでもいい。
ただこうして。
同じ空間に居れるだけで…──
END
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