祈り しのぶさん百合夢
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「しのぶー」
小一時間ほどで、白麗さんが蝶屋敷へとやってきた。
「お話は終わりましたか?」
「えぇ。時間も時間だし、耀哉の体調を考えて今日はお開き」
お館様の体調を考えてくれたようで、早めに切り上げたらしい。
「白麗さん、それは…」
「ん?ああ、日輪刀をくれたの」
白麗さんの手には、日輪刀が握られていて。
「鬼の私に、鬼退治の手助けをしてほしい、ですって」
白麗さんが日輪刀を鞘から抜くと、真っ白な刀身の刃が現れた。
刀身には、黒字で何か文字が刻まれている。
「なんて書いてあるんでしょう」
この国の文字ではなく、異国の文字に見えるそれ。
白麗さんはクスリと笑んで。
刀身を握り締め、一気に引いた。
「ッッ!白麗さん…ッ!」
白麗さんの掌から滴り流れる血液。
私は慌てて白麗さんの手を掴むと。
「…もう治ってる」
すでに怪我は治っていて。
「ほら、しのぶ。見て」
「え?」
促されるまま、白麗さんの日輪刀を見る。
「…こ、これは…」
白い刀身だった刀は漆黒になり、黒字だった文字が赤くなっていて。
「“我 鬼を 斬り裂く 者”って書いてあるわ」
文字を読んでくれた。
「私の血に反応するよう打たれた刀みたい」
すごい技術…と白麗さんが感心している。
「……」
その文字を見て、心が痛くなる。
だって。
白麗さんも鬼だから。
白麗さんを斬り裂く刀でもあるから。
私たちの刀で首を落とせば、白麗さんは死んでしまうと改めて感じた。
鬼になんて同情はしないし、滅びればいいとさえ思っているのに。
白麗さんは失いたくないという矛盾に戸惑ってしまう。
「なに神妙な顔をしてるのよ」
白麗さんはクスクス笑って、私の額を小突く。
月夜に輝く白銀の髪を靡かせて。
少しだけ伏せられた赤い瞳に魅せられて。
「いつか訪れる結末に、戸惑いを見せるのは柱として失格よ」
わかっている。
わかってますよ、そんなこと。
でも私は。
私は。
「…白麗さん、私は……」
言いかけて、止めた。
なぜなら、白麗さんがとても綺麗に微笑んでいたから。
「さて、と。帰るのは明日の夜にして、今日は泊めてね」
言葉にせずとも伝わっている私の想い。
言葉に出してはいけない想いだから、白麗さんは止めてくれた。
「…太陽光が差し込まないように準備しますから、手伝ってくださいね」
「えー。私客人だけどー」
いつか訪れる結末が。
どうか悲しいものではないようにと祈らずにはいられない。
「しのぶ、お酒ないの?」
「消毒液でもいいですか?」
「ダメに決まってるでしょ」
どうかこの綺麗な鬼がいつまでも。
誰にも倒されないように。
人と鬼の寿命の差は比べ物にならないけれど。
だからこそ。
何度生まれ変わっても。
またこの綺麗な鬼に、出会い続けられますように。
END
「しのぶー」
小一時間ほどで、白麗さんが蝶屋敷へとやってきた。
「お話は終わりましたか?」
「えぇ。時間も時間だし、耀哉の体調を考えて今日はお開き」
お館様の体調を考えてくれたようで、早めに切り上げたらしい。
「白麗さん、それは…」
「ん?ああ、日輪刀をくれたの」
白麗さんの手には、日輪刀が握られていて。
「鬼の私に、鬼退治の手助けをしてほしい、ですって」
白麗さんが日輪刀を鞘から抜くと、真っ白な刀身の刃が現れた。
刀身には、黒字で何か文字が刻まれている。
「なんて書いてあるんでしょう」
この国の文字ではなく、異国の文字に見えるそれ。
白麗さんはクスリと笑んで。
刀身を握り締め、一気に引いた。
「ッッ!白麗さん…ッ!」
白麗さんの掌から滴り流れる血液。
私は慌てて白麗さんの手を掴むと。
「…もう治ってる」
すでに怪我は治っていて。
「ほら、しのぶ。見て」
「え?」
促されるまま、白麗さんの日輪刀を見る。
「…こ、これは…」
白い刀身だった刀は漆黒になり、黒字だった文字が赤くなっていて。
「“我 鬼を 斬り裂く 者”って書いてあるわ」
文字を読んでくれた。
「私の血に反応するよう打たれた刀みたい」
すごい技術…と白麗さんが感心している。
「……」
その文字を見て、心が痛くなる。
だって。
白麗さんも鬼だから。
白麗さんを斬り裂く刀でもあるから。
私たちの刀で首を落とせば、白麗さんは死んでしまうと改めて感じた。
鬼になんて同情はしないし、滅びればいいとさえ思っているのに。
白麗さんは失いたくないという矛盾に戸惑ってしまう。
「なに神妙な顔をしてるのよ」
白麗さんはクスクス笑って、私の額を小突く。
月夜に輝く白銀の髪を靡かせて。
少しだけ伏せられた赤い瞳に魅せられて。
「いつか訪れる結末に、戸惑いを見せるのは柱として失格よ」
わかっている。
わかってますよ、そんなこと。
でも私は。
私は。
「…白麗さん、私は……」
言いかけて、止めた。
なぜなら、白麗さんがとても綺麗に微笑んでいたから。
「さて、と。帰るのは明日の夜にして、今日は泊めてね」
言葉にせずとも伝わっている私の想い。
言葉に出してはいけない想いだから、白麗さんは止めてくれた。
「…太陽光が差し込まないように準備しますから、手伝ってくださいね」
「えー。私客人だけどー」
いつか訪れる結末が。
どうか悲しいものではないようにと祈らずにはいられない。
「しのぶ、お酒ないの?」
「消毒液でもいいですか?」
「ダメに決まってるでしょ」
どうかこの綺麗な鬼がいつまでも。
誰にも倒されないように。
人と鬼の寿命の差は比べ物にならないけれど。
だからこそ。
何度生まれ変わっても。
またこの綺麗な鬼に、出会い続けられますように。
END
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