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｢……｣

アイリの寝室。

枕に顔を埋めれば、アイリの良い香りがする。



“誰かあげる人はいないんですか？”



いるわよ。

あなたたちが独占してるんじゃない。

あなたたちがいるから普段のような会話も出来ないし、素の私でいられない。

早く帰ってよ。

なんて、口に出せたらいいのに。

口に出してしまえば、アイリが傷つく。

だから言わない。

アイリの傷つく顔は、もう見たくない。

そんな顔をさせてしまったら、アイリの祖父との約束に反してしまう。

だから寝室へ逃げた。

余計なことを言わないように。

｢……ハリウッド女優の私が、なんでこんな子供みたいなことをしてるのかしら…｣

部屋に引きこもるなんて、子供みたいなことをする自分に笑みが零れた。












｢何笑ってるのよ…｣










ふいに聞こえた声。


視線だけをそちらに向けると、呆れ顔のアイリが立っていた。

｢それ、さっきボウヤにも言われたわ｣

｢じゃあもう不審者ね。ほら不審者、起きてリビングへ行くわよ｣

アイリに手を引かれ、無理やり起こされる。

｢嫌よ。今寝室に来たばかりだから寝てないの｣

｢…はぁ｣

アイリはため息を零して。

｢蘭さんたち、今帰ったわ｣

なんて、言うものだから。

｢……………なぜ？｣

不覚にも驚いてしまったわ…。

｢チョコは出来たし、あなたが体調悪そうだからって帰ったわよ｣

…ここが誰の家なのか、あの子たちわかってるのかしら…。

｢…じゃあ、マスク外しても？｣

｢えぇ、いいわ｣

言われてすぐマスクを取り、一息吐く。

｢やっぱり素顔が一番ね｣

｢…本当に素顔？｣

｢煩いわね。ほら、行くわよ｣

の手を取り、リビングへ。

本当に帰ったみたい。

｢コナン君から伝言｣

｢なに？｣

｢“ガキかオメーは”｣

｢…現在進行形のガキに言われたくない台詞ね｣

どうやら、ボウヤには気づかれてたみたい。

何かと鋭くて嫌になるわ、まったく。

｢ね、どこが“ガキ”だったの？｣

｢私に聞かないで。｣

｢じゃあ誰に聞けばいいのよ！｣

｢知らないわよそんなの｣

アイリはアイリで鈍すぎるし。

｢…あなた、今日は何がしたかったのかまったくわからなかったわ｣

リビングのソファーに座り、タバコに火を点ける。

｢でしょうね。あなたはいつも鈍いもの｣

アイリは何度目かのため息を零して。

｢はいこれ｣

｢なに？｣

あるものを差し出してきた。


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