白猫姫 オリヴィエ百合夢

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「オリ…ヴィ…エ…?え?なに?どういうこと?」

[#dn=1#]は眉間に皺を寄せて、混乱を隠せないでいる。

だがしかし。

「まだ、漠然とした不安があるのか?」

「え?」

私は[#dn=1#]の頬に手を添える。

説明よりも優先すべきは[#dn=1#]の不安を拭うこと。

「先ほど言っていただろう」

[#dn=1#]は見る見るうちに顔が赤くなってきて。

「や…聞いてた……わよね…そりゃ…」

「どうなんだ。まだ不安か?」

「……今は…大丈夫…」

私から視線を逸らす。

「あのね…?」

「なんだ」

「…シリアスの中、申し訳ないんだけど…」

「あぁ」

チラッと私を見て。






「…オリヴィエ、全裸なのよね…」





衝撃の事実を口にした。

「「………」」

静寂。

寝室へ移動して服を着る。

私の服は常備されている。

[#dn=1#]はベッドに腰をかけ、足を組んでいる。

「…でも、なんで猫に?」

「…私のデスクにだな」

事情を説明すれば、[#dn=1#]は呆れるようにため息を零して。

「バカねぇ…私が一本だけを送るなんてことするわけないじゃない…」

「…うむ」

「栄養ドリンクを送るなら、一週間分を人数分箱ごと送るわ」

「…そうだな」

そうだ、[#dn=1#]が一本だけを寄越すなど有り得ない。

こいつなら今言ったように箱ごと送りつけてくるだろう。

「「……」」

また静寂。

嫌な静寂ではなく、どこか気恥ずかしい静寂。

“好きな人のミドルネーム”について、聞いてみてもいいのだろうか。

「…[#dn=1#]「お願いオリヴィエ、聞かなかったことにして」

[#dn=1#]自身、そのことを聞かれたくないらしい。

お互いの弱点にならないように。

私たちは“その言葉”を避けてきた。

いや、口にせずとも想いは同じだから。

「…お願ーい…」

[#dn=1#]ははにかむように笑っている。

「…わかった」

「ん、ありがと」

そんな[#dn=1#]の肩を押してベッドへ押し倒す。

「ただ、一つだけ言っておく」

「なぁに?」

[#dn=1#]の顔に自分の顔を近づけて。






「お前が私の声が聞きたいと思っているように、私もお前の声が聞きたい」





そう伝えた。

「…うん」

[#dn=1#]の腕が私の首に回る。

「だから、時間問わずに連絡しろ。必ず出る」

「……うん」

私たちは見つめ合って。

そうして。

「…ちょっと加減してね」

「無理だな」

溺れるように、熱を分かち合った。

猫になってみて思ったのは、[#dn=1#]から無条件に愛されるということ。

他の人間?

どうでもいいわ。

些細な行動、仕草、鳴き声。

それだけで笑みを浮かべてくれる。

得な生き物だと思った。

しかし。

[#dn=1#]に何あった場合、駆けつけられない。

傍には居ることは出来るが支えてやれない。

抱き締められない、不安を拭うことも出来ない。

“早く人に戻りたい”

強くそう思った。

「タンクトップとショーツだけの格好をやめろ」

「楽なのよ」

「また猫に舐められるぞ」

「っあれは…!ね、猫があんなことすると思わないでしょ…!」

「私だがな」

「…っっ!バカ…!!」

やはり人ではなきゃ駄目だ。

人ならば[#dn=1#]を支えてやれる。

抱き締めて、大丈夫だと伝えられる。




後日。

「これはこれはアームストロング少将。今日も麗しいですね」

「誰に言ってるんだ阿保」

マスタングと二人きりの食事などさせてやるものかと思い、同行した。

“例の件”とやらも気になるしな。

「ロイ君、オリヴィエが居るってわかってたの?」

「もちろん。お電話した際、近くにいらっしゃる気配がありましたので」

「「……」」

「?どうされました?」

「…いや、まぁ間違ってはいないな」

「そ、そうね」

私たちは咳払いをして。

そして。

「じゃあロイ君、“例の件”についてわかったことを聞かせてもらえる?」

「私にもお聞かせ願おうか」

「はい。ではでは中へ」

店の中へと入った。


END
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