白猫姫 オリヴィエ百合夢

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そいつと私は同時に振り返って。

「ニャア!([#dn=1#]!)」
「[#dn=2#]少将!」

名を呼ぶ。

そう、声の主は[#dn=1#]だ。

遥々北の地から会いに来た本人が立っていた。

「あら、猫?」

「は、はい。どこから入ったんでしょうね…」

「すごい潜入上手い子なのね」

[#dn=1#]はクスクス笑いながら歩み寄ってきて。

「あ、危ないですよ!めっちゃ暴れます!」

手を伸ばして来たから素直に抱かれた。

「大人しいわよ?」

「………なんで」

[#dn=1#]の腕の中で静かにしている私に、そいつは不服そうだ。

目的の人物に抱かれて、暴れるわけがない。

顎を撫でられ、ゴロゴロと鳴る。

私の意思ではないが、猫だからか。

「まぁ、この子のことは私が何とかするから、あなたは仕事に戻って」

「わ、わかりました、失礼します」

そいつは[#dn=1#]に敬礼をし、去って行った。

ふぅ、ようやく落ち着ける。

「何かお腹空いてる?」

「ニャアニャア(いや、空いてない)」

「わっ、今返事したのかな?」

抱き方を変え、私の両脇を持って。

「天才かにゃあ?」

ちゅ、と。

鼻先にキスをしてきた。

「……」

キュン、としたことはバレないだろう。

「っと、大総統府に行かなきゃだった」

[#dn=1#]は踵を返し、自分の執務室へと向かう。

「ねこちゃん、ちょっと待っててね」

「ニャー(うむ)」

ソファーに置かれ、頭を撫でられて。

「良い子」

ちゅ、と。

頭にキスを落とし、執務室を出て行った。

「………」

キスをされた頭を前足で掻いて。

「ニャアニャニャ(猫も悪くないな)」

ソファーの上で丸くなった。





「ふぅ…」

扉が開いて戻ってきた[#dn=1#]。

時間にして1時間もかかってはいない。

「ただいま、ねこちゃん」

「ニャア(おかえり)」

すぐにソファーまで来て、私を抱き上げる。

「お腹空いてない?」

「ニャ、ニャアニャ(いや、空いてはおらん)」

「ちょっと食堂“プルル プルル”

[#dn=1#]の言葉を遮ったのは電話の音。

「出たくないなぁ…」

つ、と[#dn=1#]が舌打ちをする。

出なくてもいいと思うが。

「もしもし、どうしたの?」

こいつは出るんだよ。

無視出来ないからな。

『東のマスタング大佐からお電話入ってます』

「ロイ君から?」

なに?マスタング?

「繋いでちょうだい」

『はい』

あの若造、何の用で[#dn=1#]に電話なぞするんだ。

『もしもし、お疲れ様です』

「あなたもご苦労様。それで、どうしたの?」

椅子に座る[#dn=1#]の前で丸くなり、聞き耳を立てる。

『以前仰っていた例の件、少し進展がありました』

「…へぇ」

[#dn=1#]の口元が緩く曲線を描く。

なんだ、“例の件”とは。

[#dn=1#]とマスタングしか知り得ないことか?

『なので、近いうちに食事でもどうですか?』

なぜそうなる。

「いいわよ。日時は何とかするから任せてもいいかしら?」

『もちろんです。ではまた』

「えぇ、楽しみにしてる」

と、短い会話で電話を終えた。

“例の件”と“食事”というワードがどうにも気に入らん。

「本当、優秀だなぁロイ君は」

私の顎をこちょばしながらそう言う。

サボり癖がなければな。

「オリヴィエに内緒にしないと、すぐ怒るから」

「ニ゙ャア、ニャ(バレてるぞ、阿呆)」

「あら、なんか不機嫌?お腹空いた?」

違うわ阿保。

「ちょっと食堂に行って食べれそうなのあったらもらって来よっか」

ひょいっと抱き上げられ、扉の方へ。

「「「!!」」」

開けたと同時に。

「…お戻りになられていたのですね」

クレミンの奴が現れた。

「えぇ。で、どうしたの?」

クレミンは私に視線を向けながら。

「…レイブン中将より、“もう帰るからこの書類を今日中に頼む”とのことです」

バサッと[#dn=1#]に書類の束を渡した。

「はい?まだお昼なのに?もう帰ったの?」

「…はい。私は頼まれただけですので、失礼します」

渡すだけ渡して去って行った。

「…暗殺してやろうかしら…あのポンコツ…」

「ニャア(いいと思う)」

[#dn=1#]はため息を零して。

「…今日は早く帰ってあなたのグッズ買いに行こうと思ってたのになぁ…」

残業決定であることに、続け様にまたため息を吐いた。

こうやって書類が増えていくのか。

あとは留守中に勝手に置かれていたり。

真面目な話、中央司令部は[#dn=1#]が居なければ何も出来ないだろう。

緊急時に即判断と即決断が出来ず、パニックに陥って堕とされる最弱の城。

まぁ、[#dn=1#]が居れば鉄壁だろうがな。

「…もう本当に辞めたい…」

…不憫だ。

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