白猫姫 オリヴィエ百合夢

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「ニャニャニャ(ここまででいい)」

「どうしました?まさかここまででいいと?」

「ニャニャニャアニャ(後は自分で何とかする)」

「…なんて言ってるかわかりませんが、自分で何とかするおつもりですね…。お気をつけて…」

ノースシティ駅にて。

マイルズを帰らせて一人でセントラルシティへ行く。

いくら猫と言えど、そのくらい造作もない。

とは言っても、駅員に見つかると厄介だな。

私は駅の窓口の下を歩き、駅員の死角に入りつつ足早に汽車に乗り込む。

ほら、簡単な潜入だ。

猫は体が小さいため、人間の視界に入りにくい。

それこそ下を向いて歩いていなければ、なかなか気づくまい。

しかし、例外は存在するもので。

例えば。


「あ!ねこちゃん!ママ!ねこちゃんいるよ!」


視界の低い子供。

「あらぁ、本当ねぇ。可愛いね」

「なでなでしてもいいかなぁ!?」

「優しくね?」

「うん!」

ツインテールをした少女は、私に手を伸ばしてきた。

正直、今は[#dn=1#]以外に触られたくはないが。

「ふわふわぁ」

子供ならば引っ掻くわけにもいかん。

ここは大人しく撫でられてやろう。

「ひとりぼっちかなぁ」

「首輪してないから、野良猫かもしれないね」

母親の言葉に、少女はとても悲しそうな顔をした。

今は一人だが、人に会いに向かってる最中だから心配するな。

と言いたくとも話せない。

歯痒い気もある反面、話せなくてよかったとすら思う。

話せたら確実に連れて帰られるからな。

「ねぇママ、この子飼っちゃだめ?」

ダメに決まってるだろう。

私は立ち上がり、歩き出す。

「あ、ねこちゃん…」

母親はクスッと笑って。

「ねこちゃん、もしかしたら家族いるかもしれないね?」

今はきっとお散歩中なのかも、と子供に言い聞かせた。

良い母親だ。

きっと良い子になるだろう。

私は子供へ振り返って。

「ニャー(またな)」

別れを告げ、車両を移った。

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