赤眼の鬼 しのぶさん百合夢
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一月前。
「ふぅ」
複数の鬼の討伐に赴いた私。
柱になれば、複数の鬼の討伐にも一人で向かわさせられる。
鬼が纏っていた服の数を数える。
任務内容の数と照らし合わせ、討伐残しがないかをチェックする。
「うん、間違いなし」
任務完了に、クッと背中を伸ばす。
複数の鬼の討伐は久しぶり。
疲れはないものの、手間がかかることに深く息を吐く。
「今日は月が綺麗ですね」
誰かに語りかけるわけでもなく、見上げた月が綺麗だったからそう零れた。
「本当、綺麗な月よね」
その呟きに返答があった。
「……ッッ!!」
私の背後、すぐ後ろ。
足音はもちろん、気配もなかった。
こんな真後ろに立たれるまで気付かないなんて。
背後から感じる気配は、人間のそれではない。
振り返る暇はあるか。
いえ、飛び退く暇は?
こんな真後ろに立たれるまで気付けないのに、間合いを取る暇なんて。
「なぁに?怖がってるの?」
後ろからクスクス笑う声。
「…っ」
何にせよ、このまま立ちすくんで居られない。
全集中 全ての力を足へと溜めて。
一気に解放し、瞬間で間合いを取る。
数十mは離れたはずなのに。
「早いのね、あなた」
ポン、と。
後ろから肩に手を置かれた。
悟った。
私は死ぬ。
姉さんの仇を討つ前に。
私はここで死ぬ。
でもせめて。
一撃だけでも食らわせたい。
「…ッ!」
私は振り向き様に刀を振るった。
そこで初めて。
戦慄した。
私の背後にいた鬼は。
赤い瞳をしていた。
“赤眼の鬼”
御伽噺だと思っていた“赤眼の鬼”が。
目の前にいる。
怖い、怖い。
柱になって初めて感じた恐怖。
“赤眼の鬼”は首元で止まっている私の刀を見つめ、妖艶に笑む。
「あなたの力では、私の首に傷一つ付けられないわよ?」
鋒に毒があることに気付き、指先で鋒に触れて。
その指を舐めた。
「舌が痺れるくらいかしら」
クスクス笑う“赤眼の鬼”
その笑みを見て、恐怖よりも。
なんて綺麗な鬼だろうと思ってしまった。
月明かりに照らされ輝く白銀の髪。
前髪の左側を銀装飾の髪飾りで留め、胸が零れるんじゃないかというくらい開いた着物。
それら全てを引き立てる赤い瞳。
先程まであった恐怖よりも。
こんな美しい鬼が存在するんだと。
ただ、見惚れた。
「ふふ、あなたを殺すつもりないから大丈夫よ。ただ、お礼言いたかっただけ」
「…お礼…?」
“赤眼の鬼”は後方へと視線を向けて。
「あいつらのしつこさには参っていたの。」
私が討伐した鬼たちの服を見た。
「あれらは私を喰うために、私を追ってきたのよ」
鬼たちは“赤眼の鬼”を喰えば、より強力な力が手に入ると信じていたらしい。
「そんなことないって何回も言って、何回も斬り刻んでやったんだけど」
肩を竦め、ため息を溢す。
「いい加減鬱陶しいから殺してやろうと思ったら、あなたが先に討伐してくれていた。というわけ」
だから、ありがとうと。
“赤眼の鬼”は綺麗に微笑んだ。
「さて、と。陽も昇るし帰って寝ようかしら」
「え?」
「え?なに?」
“赤眼の鬼”は欠伸をし、私へと背中を向けたため、声が出てしまった。
「…私を喰らわないんですか?」
身体能力が高く、優秀な肉体を持つ“柱”
その柱である私を喰えば、肉体強化にも繋がるでしょう。
それなのに、喰わずに背中を向けた。
“赤眼の鬼”はきょとんとして、すぐに目を細め妖艶に笑んで。
「私、人間喰わないから」
じゃあね、と去って行った。
鬼なのに、人間を喰わない?
そんなはずない。
嘘に決まっている。
なぜなら鬼は自分の保身のために嘘ばかり吐いて逃れようとするから。
でも。
“赤眼の鬼”は私よりも遥かに強い鬼。
保身なんてしなくてもいい。
…人間を喰わない?
…本当に?
「……」
私は“赤眼の鬼”の遠くなっていく背中を見つめて。
後を追った。
.
一月前。
「ふぅ」
複数の鬼の討伐に赴いた私。
柱になれば、複数の鬼の討伐にも一人で向かわさせられる。
鬼が纏っていた服の数を数える。
任務内容の数と照らし合わせ、討伐残しがないかをチェックする。
「うん、間違いなし」
任務完了に、クッと背中を伸ばす。
複数の鬼の討伐は久しぶり。
疲れはないものの、手間がかかることに深く息を吐く。
「今日は月が綺麗ですね」
誰かに語りかけるわけでもなく、見上げた月が綺麗だったからそう零れた。
「本当、綺麗な月よね」
その呟きに返答があった。
「……ッッ!!」
私の背後、すぐ後ろ。
足音はもちろん、気配もなかった。
こんな真後ろに立たれるまで気付かないなんて。
背後から感じる気配は、人間のそれではない。
振り返る暇はあるか。
いえ、飛び退く暇は?
こんな真後ろに立たれるまで気付けないのに、間合いを取る暇なんて。
「なぁに?怖がってるの?」
後ろからクスクス笑う声。
「…っ」
何にせよ、このまま立ちすくんで居られない。
全集中 全ての力を足へと溜めて。
一気に解放し、瞬間で間合いを取る。
数十mは離れたはずなのに。
「早いのね、あなた」
ポン、と。
後ろから肩に手を置かれた。
悟った。
私は死ぬ。
姉さんの仇を討つ前に。
私はここで死ぬ。
でもせめて。
一撃だけでも食らわせたい。
「…ッ!」
私は振り向き様に刀を振るった。
そこで初めて。
戦慄した。
私の背後にいた鬼は。
赤い瞳をしていた。
“赤眼の鬼”
御伽噺だと思っていた“赤眼の鬼”が。
目の前にいる。
怖い、怖い。
柱になって初めて感じた恐怖。
“赤眼の鬼”は首元で止まっている私の刀を見つめ、妖艶に笑む。
「あなたの力では、私の首に傷一つ付けられないわよ?」
鋒に毒があることに気付き、指先で鋒に触れて。
その指を舐めた。
「舌が痺れるくらいかしら」
クスクス笑う“赤眼の鬼”
その笑みを見て、恐怖よりも。
なんて綺麗な鬼だろうと思ってしまった。
月明かりに照らされ輝く白銀の髪。
前髪の左側を銀装飾の髪飾りで留め、胸が零れるんじゃないかというくらい開いた着物。
それら全てを引き立てる赤い瞳。
先程まであった恐怖よりも。
こんな美しい鬼が存在するんだと。
ただ、見惚れた。
「ふふ、あなたを殺すつもりないから大丈夫よ。ただ、お礼言いたかっただけ」
「…お礼…?」
“赤眼の鬼”は後方へと視線を向けて。
「あいつらのしつこさには参っていたの。」
私が討伐した鬼たちの服を見た。
「あれらは私を喰うために、私を追ってきたのよ」
鬼たちは“赤眼の鬼”を喰えば、より強力な力が手に入ると信じていたらしい。
「そんなことないって何回も言って、何回も斬り刻んでやったんだけど」
肩を竦め、ため息を溢す。
「いい加減鬱陶しいから殺してやろうと思ったら、あなたが先に討伐してくれていた。というわけ」
だから、ありがとうと。
“赤眼の鬼”は綺麗に微笑んだ。
「さて、と。陽も昇るし帰って寝ようかしら」
「え?」
「え?なに?」
“赤眼の鬼”は欠伸をし、私へと背中を向けたため、声が出てしまった。
「…私を喰らわないんですか?」
身体能力が高く、優秀な肉体を持つ“柱”
その柱である私を喰えば、肉体強化にも繋がるでしょう。
それなのに、喰わずに背中を向けた。
“赤眼の鬼”はきょとんとして、すぐに目を細め妖艶に笑んで。
「私、人間喰わないから」
じゃあね、と去って行った。
鬼なのに、人間を喰わない?
そんなはずない。
嘘に決まっている。
なぜなら鬼は自分の保身のために嘘ばかり吐いて逃れようとするから。
でも。
“赤眼の鬼”は私よりも遥かに強い鬼。
保身なんてしなくてもいい。
…人間を喰わない?
…本当に?
「……」
私は“赤眼の鬼”の遠くなっていく背中を見つめて。
後を追った。
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