愛しき人よ リザさん百合長編夢

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夢主の設定です。
ハガレン百合夢、リザさんお相手の長編です。
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「ぇ…」

「どうしました?」

「こ…ここ…です…か…?」

「はい、ここが自宅です」

「…ぇ…」

自宅に着くと、アイリさんが固まった。

自宅の大きさに絶句、と言ったところかしら。

「大きくて広いですが、居住区はそれほど広くありませんよ」

「…居住区って言ってる時点ですでに広いです…」

中へ入り、階段を上がる。

「………これ…その…記憶をなくす前の…私が…?」

「そうです。広い書斎が欲しいと仰っていて」

一階が書斎で、二階が居住区、三階がお客様用。

アイリさんの人望と人脈の広さはすごくて、軍役退役後は地下空洞の件の会議など、アイリさんの体調を考慮して自宅で行ったりもした。

「広い書斎…私は科学者か何かだったのかな…」

「あ、いえ。読書好きが好じたと…」

科学者だったと言えば、もしかしたら記憶が戻るかもしれない。

国家錬金術師で、国軍少将で。

全部告げたら記憶が。

でも、戻らなかったら?

プレッシャーを与えるだけ。

記憶を失う前にこなしていたことをしなければというプレッシャーを。

「寝室はこっちです」

「ぁ…はい…」

私たちの寝室へと行って。

「「………」」

大きなベッドに言葉を無くすアイリさん。

一緒に寝ているからベッドは大きめ。

「私はお客様用の部屋で眠りますので、アイリさんは寝室で眠ってください」

「え…ですが…」

手前にあるアイリさんの枕を持つ。

「大丈夫です。何あったらすぐに言ってくださいね」

今のアイリさんにとって私は他人だから、一緒には寝られない。

だからせめて、アイリさんの香りがするこの枕だけを…。

「あの…本当に「アイリさん、謝らないでください。本当に大丈夫なので」

アイリさんはまた申し訳なさそうな表情を浮かべた。

…キスをしたい衝動に駆られるけれど、我慢しないと。

「それでは着替えたら家の中を案内しますね」

「はい…」

着替えを何着か持って、しばらくは私の部屋となるお客様用の部屋へ行く。

それから、家の中を少し案内をした。

自分の家なのだから、好きなようにしていいし入ってもいいって告げて。

書斎の本の山にまた絶句していたわ。

まぁ実際にアイリさんは読書好きではあったけど、ほとんどが研究資料。

小説などの本はあちらの本棚三つ分。

私もたまに借りて読んだりしていたわ。

あとは、あちらの本棚はアイリさんの命である“雷鳴の構築式”

あの本棚のものを全部読み解ければ、“雷鳴の錬金術”を使うことが出来る。

エドワード君たちが錬金術を失う前に、解読チャレンジをしたけれど。

『一文字も解けませんでした』

『…これ本当に内容あります?適当に書いてません…?』

『ふふっ、歴とした暗号文よ?解けないならあなたたちはそこまでってことかしらねー?』

『ぐ…っ』

『言い返せない…っ』

『大丈夫よ、二人とも。アイリさんが異常なだけだから』

『ちょっとリザ!リザは私の味方になってよ!』

という会話を思い出し、小さく笑う私。

「では、体調も万全ではないですし、もう眠りましょうか」

「ぁ…はい、そうですね」

「おやすみなさい」

「おやすみなさい…」

アイリさんは私たちの寝室へ。

私は三階のお客様用のへ。

アイリさんは自分に関する全てのことを忘れている。

自分の名前、住所、電話番号、自分が何をしていたのか、自分に関わった人物の顔と名前。

でもそれ以外は覚えているから、働かなきゃいけないことも、イシュヴァール人という民族のことも覚えている。

目の前に居るのはアイリさんなのに。

「…ふぅ」

ベッドに腰をかけ、枕に触れる。

アイリさんが使っていた枕。

顔を埋めれば、アイリさんの良い香りがして。

「……ぅ」

涙が出てきた。

私のことも。

何も覚えていない事実に。

涙が出てきて。

止まらない。

“疲れた…私を癒してリザ…”

“本当…なんでリザってそんな可愛いの?”

あなたの声で、私を“リザ”と呼ぶ声が聞きたい。

今みたいな、他人を呼ぶような声色じゃなくて。



愛おしそうに私を呼んでくれるあの声が。

たまらなく恋しかった。


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