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「………中尉、絶対に体調悪いっすよね？」

「……物凄く調子良いわ」

「……そんなわかりやすい嘘を吐く中尉も珍しいっすね…」



12月31日。

翌日に新年を控えたある日。

私は風邪を引いた。

眠る時に寒かったなどはなく、どうして風邪を引いたのかわからない。

でも風邪を引いてしまったの。

「中尉、帰ったほうがいいっすよ？」

「大丈夫よ。そこまで体調悪くないから」

熱は計って来ていない。

計ってあったら困るから。

休まないといけなくなるから。

「いや、すごく体調悪そうですよ…」

ファルマン准尉も心配してくれているけれど。

「やるべき仕事があるから」

明日から新しい年が明けるというのに、休んでいる場合じゃない。

それに、ニューイヤーを祝う人たちで溢れる大通りの警備にも行かないと。

「中尉の分の仕事は俺らでやりますんで、早退して病院行ってください」

ハボック少尉が気を使ってくれる。

「…でも」

こんな大変な日に、こんな早く退勤なんて申し訳なくて帰れない。

「いいですか、中尉」

すると、ファルマン准尉が。

「もしインフルエンザでしたら、どうしますか？」

「え？」

私の風邪が、インフルエンザかもしれないと言い出した。

「今は流行ってますしね。なので、直ちに病院へ行ってご自宅で安静にしてほしいです」

…確かに。

インフルエンザならみんなに移してしまう可能性が高い。

インフルエンザじゃなくても移してしまうかもしれないんだけれど。

「…じゃあ、マスタング大佐に報告して…帰らせてもらおうかしら」

「うっす。それがいいっすよ」

「お疲れ様でした、お大事に、良いお年を！」

お言葉に甘えさせてもらい、帰宅することにした。

こんな忙しい時期に申し訳ないけれど、無理をして倒れた方が迷惑をかけてしまう。

「セイフォード少将に連絡入れときましょうか？」

「いえ、今年の年末年始は忙しさ極みらしく、会える時に連絡が来るから大丈夫よ」

アイリさんとは、あまりの忙しさに12月31日と1月1日は会えない。

“あまりのポンコツさに殺意を覚える”と物凄く怒っていたわ。

去年は初めてのお正月だったから、一緒に過ごせたけれど。

あの時も無理やり休んだみたいだからね。

会いたい気持ちはもちろんある。

しかし、我儘は言えないから。

「それじゃあ、申し訳ないけれど大佐に報告してから退勤させてもらうわね。お疲れ様。良いお年を」

「さまっす、良いお年を〜」

「お大事に！良いお年を！」

帰り支度をし、私はマスタング大佐の執務室へ向かった。


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