ハガレン 旧拍手文置き場
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『雷鳴の由来』
それは。
「こんちわっス。“雷鳴の錬金術師”さんいますか?」
一人の青年が現れたことで、起きた。
ある晴れた日の東方司令部、練兵場で。
「……」
「なんで私が、って思ってることが顔に出てますよ」
アイリさんは練兵場の破損箇所の確認をしていた。
もちろん東方司令部のみんなもね。
「…これ、私が来る必要あった?東方司令部のみんなで確認して報告書を送ってくれればよくない?」
「何か考えがあったんですよ、きっと」
…私としては、仕事と言えど会えることに嬉しさを感じるけれど。
アイリさんはそうじゃないのかしら…。
「まぁ、あなたに会えるからいいんだけどね」
……アイリさんもそうだった。
「セイフォード少将、東側の建物も結構傷んでます。これは相当な経費がかかりますね…」
マスタング大佐が来て、肩を竦める。
「グラマン中将が私を呼んだということは、徹底的に調査をして新品にして欲しいということよね」
「…経費をかけすぎるのはどうかと」
「まともな演習出来ませんって言えばいいの」
アイリさんはマスタング大佐から書類を受け取り、確認をしていた時。
「ん?」
「「?」」
マスタング大佐の声に、そちらを見れば。
「こんちわっス。“雷鳴の錬金術師”さんいますか?」
黒髪の青年が歩いてきた。
「……」
私は眉間に皺を寄せる。
「雷鳴の錬金術師は私だけど、何か用?」
「おっと、これは運がいい。あんたが“雷鳴の錬金術師”さんですか」
あんた、って。
肩の階級章を見れば、少佐であることがわかった。
それにしても少佐が少将に対しての口の利き方じゃない。
「どこから来たかは知らんが、上司に対しての態度を改めたまえ」
マスタング大佐がそう言うと、黒髪の青年は肩を竦めて。
「レオン・カトレフ、“雷の錬金術師”っす」
敬礼をした。
「ああ、先日国家錬金術師になったカトレフ少佐ね」
アイリさんはカトレフ少佐のことを知っているようで、再び書類へと視線を落とす。
「で、何の用?大した用じゃないなら下がってちょうだい」
「大した用でもないんすけど、ちょっと確認したいことがあって」
「確認したいこと?」
私と大佐は顔を見合わせる。
「あんたの“雷鳴”と俺の“雷”、どちらが“本物の雷”なのか、気になっちまって」
アイリさんの“雷鳴”と、カトレフ少佐の“雷”。
どちらが本物か、だなんて。
「…カトレフ少佐、セイフォード少将に失礼ですよ」
私がそう言うと、アイリさんはクスリと笑みを浮かべて。
「あなたが本物で構わないわ。」
さも興味なさそうにそう仰った。
それは…ダメ…。
私はアイリさんの“錬金術”を見たことがない。
でも“本当の雷”はアイリさんよ。
だって、アイリさんはアメストリス国 国軍最強って謳われているんだもの。
「?」
私がアイリさんの軍服の袖を握ると、きょとんと私を見た。
「どうしたの?ホークアイ中尉」
「…私はあなた以上の“雷”の錬金術を使う人はいないと思ってます」
「私の錬金術見たことないでしょ?」
「ありませ「いや、あるよ。ホークアイ中尉も見たことが」
私の言葉を遮ったのはマスタング大佐。
「え?」
私がアイリさんの錬金術を見たことある?
どうして大佐がそれを?
「とにかく、そんな下らない理由で少将の手を煩わせるな、カトレフ少佐。」
マスタング大佐もよく思っていないようで、眉間に皺を寄せていて。
「下らないこと?これは俺の国家錬金術師としてのプライドなんすけど」
どちらが“本物”か。
どちらが“最強”か。
カトレフ少佐はアイリさんを見据えて。
アイリさんは軽く息を吐き、書類から視線を上げて。
「時間がないから、5分でいいかしら」
書類を私に渡してきた。
持っててという意味で。
「5分で決着が付くっすかね?」
「あなたの心を折るには十分よ」
格好良い…。
私もマスタング大佐も、少し離れる。
「…大丈夫でしょうか」
強いのはアイリさんだろうけれど、怪我しないかしら…。
「大丈夫さ」
マスタング大佐は、腕を組んで。
「あの人とああして相対した時点で、勝ち目はない」
アイリさんは動体視力を持っているし、左目に錬成陣を焼き付けた人。
真正面から戦いを挑んで勝てるわけがない。
アイリさんを殺すには、数ヶ月前のトレインジャックのように狙撃するしかない。
「…そうですけど…」
それでも心配は心配…。
「見たまえ」
「え?」
マスタング大佐が空を指差す。
「?」
曇り空。
これが何の……。
曇り空?
さっきまで晴れていたのに?
「まずはご挨拶を」
カトレフ少佐は軍手をはめて、パチンと指を鳴らす。
すると。
「「「「うわぁあああ!!」」」」
「「!!」」
練兵場全体に、“雷”が奔った。
練兵場にいた軍人は驚いて悲鳴を上げて。
「な、なんだ今の…」
「あっちで何か揉めてるのか…?」
ざわざわとこちらに近づいてきた。
「今、あんた死んだっすよ」
本当なら今の雷撃でアイリさんは死んだ、と。
カトレフ少佐は言った。
…本当に“雷”を使うのね…。
アイリさんはカトレフ少佐の言葉や錬金術に動じず、真っ直ぐカトレフ少佐を見る。
「で?次は?」
「次?今のが“雷撃”っすよ。速すぎて見えませんでしたか?」
カトレフ少佐はニヤニヤ笑って、アイリさんに手を翳す。
「なるほどね」
アイリさんはまた軽く息を吐き、カトレフ少佐を見据えて。
「あなたの攻撃範囲内は練兵場全域といったところかしら」
「もう少し広げることは出来るけど、そんな感じっすね」
「そう」
空を見上げる。
「「?」」
私とマスタング大佐、カトレフ少佐も釣られるように空を見上げる。
さっきよりも暗く、ゴロゴロと雷が鳴り始めている。
「……まさか…使うのか…?」
マスタング大佐が呟く。
「?どういう「ねぇ、なぜ私が“雷”の二つ名ではなく…“雷鳴”と名付けられたのか、知ってる?」
アイリさんは空を見上げたまま、カトレフ少佐に問いかけて。
「知らないっすけど、ただの“雷”よりも“雷鳴”のほうが様になるからじゃないっすかね」
「様になるから、か」
クスリと笑う。
ゴロゴロと鳴る雷。
「じゃあ、この“雷鳴”はどこまで聴こえていると思う?」
「さっきから何なんすか?まぁ…少なくともイーストシティ全体には聴こえてると思いますが…」
さっきまで晴れていたのに。
突然曇り出した。
そして、今アイリさんが言った“雷鳴が聴こえる範囲”
「ん?」
カトレフ少佐も気付いて、また空を見上げて。
「………いや嘘だろ…」
顔が真っ青になり始めた。
「……まさか…」
ハッと大佐を見れば、大佐はコクンと頷いて。
「すでに、セイフォード少将の錬金術が発動されている」
そう言った。
そして。
「私の攻撃範囲は、この“雷鳴が聴こえる範囲内”。つまり、私はその気になれば数秒でイーストシティを堕とせるのよ」
そう言った。
「……いやいや、そんなの国が放っておくはずねぇだろ!!」
カトレフ少佐が噛み付く。
「そうだ、だからセイフォード少将は“許可なく錬金術の行使を禁止”されている。」
許可なく…錬金術の行使を…禁止…。
国は…この国はそれだけアイリさんを恐れている…。
アイリさんは不敵な笑みを浮かべ、カツンと音を立ててカトレフ少佐へ近づいて。
「命拾いしたわね。次からはもっと考えて発言をしなさい、坊や」
通り過ぎ様に、カトレフ少佐の肩に手を置いてそう仰って。
「執務室に戻るから、あとで報告書を持って来てちょうだい」
「了解しました」
アイリさんは行ってしまった。
「……なんだよあれ…化け物じゃねぇか…」
アイリさんの背中を見ながらカトレフ少佐がため息を吐く。
「…イシュヴァールの内乱の、終戦を告げる“蒼き雷”の話を聞いたことはないか?」
「「え?」」
私とカトレフ少佐は首を傾げる。
イシュヴァールの内乱の時、確かに凄い落雷が落ちたのは見たことがある。
でもその時は私はすでに軍用トラックの中で、撤退していた時だった。
「あの終戦した日、大総統は国家錬金術師を含め全軍を撤退させた。ただ一人、“雷鳴の錬金術師”だけを残して」
嘘。
……嘘。
あの落雷は…アイリさんの…錬金術によるもの…?
「“雷鳴の錬金術師”により発動された“雷の力”の凄まじさに、イシュヴァール人の戦意は最も簡単に失われた。」
そして同時に国はその力を恐れ、“雷鳴の錬金術師”を処刑することを考えたけれど。
簡単に処刑出来るほと弱くはなく。
だったら国の生物兵器として飼い、他国への圧力として使おう、と。
“アメストリス”という“檻”に入れた。
国が恐れた“雷の力”
国が許可なく行使することを禁止した“雷の力”
「しかも、これは後で知ったことだが終戦を告げる蒼き雷で死んだイシュヴァールの民は居ない」
「「ッッ!!」」
それって、それって…っ
バッとアイリさんのほうを見れば、遠くにいるアイリさんは私へと指を屈伸させて“おいで”と呼んでくれている。
「あの人は、雷を落とすタイミングも場所も、感電させる範囲すらも意のままなのだよ」
マスタング大佐の言葉に、私はカトレフ少佐を見て。
「“本物の雷”は、どちらでしょうね?」
小さく笑い、アイリさんへと走った。
「………」
「彼女はセイフォード少将の恋人だから、10:0で君の味方にはならないよ」
なんて話していたのは知らない。
「…アイリさん」
「ん?」
執務室へ向かいながら。
「……これ以上、好きにさせないでください」
そう言うと、アイリさんはきょとんと私を見て。
私の手を引いて、耳元で。
「もっと好きになってもいいのよ?」
と、囁かれれば。
「…っ」
顔が熱くなるのは当たり前…。
「…っ依存してしまいます」
「遠慮なくしてちょうだい」
アイリさんから放たれる数々の言葉に、簡単に心を持って行かれる…。
「…っ格好良かったです…」
格好良すぎてどうしようって思っちゃったわよ…。
本当にこの人は…。
どこまで好きにさせれば気が済むのだろう。
「今日は…中央に帰られますか…?」
「いえ、今日はリザを抱くために帰らないわ」
「…っ」
本当にもう…。
天候を支配するあなたこそ、“本物の雷”
雷鳴の錬金術師による“雷の力”の凄まじさを、直で見てみたい。
あなたの隣に立って。
国が恐れたその力を。
真っ直ぐ揺るぐことのない強い眼差しで、未来を見据えているあなたの傍で。
後日。
「……セイフォード君、何とかならない?」
「なりますよ。対価は何でしょう?」
「うむ、孫娘の小さい時の写真で「引き受けましょう」
「………私を交渉に使わないでくださいっ」
と、結局はアイリさんが錬金術で直して。
「………」
「……見過ぎですよ、セイフォード少将」
「確かに…水着…」
「っそんな写真までもらったんですか…っ」
普段真面目なアイリさんの、変態な一面を知ったわ…。
END
それは。
「こんちわっス。“雷鳴の錬金術師”さんいますか?」
一人の青年が現れたことで、起きた。
ある晴れた日の東方司令部、練兵場で。
「……」
「なんで私が、って思ってることが顔に出てますよ」
アイリさんは練兵場の破損箇所の確認をしていた。
もちろん東方司令部のみんなもね。
「…これ、私が来る必要あった?東方司令部のみんなで確認して報告書を送ってくれればよくない?」
「何か考えがあったんですよ、きっと」
…私としては、仕事と言えど会えることに嬉しさを感じるけれど。
アイリさんはそうじゃないのかしら…。
「まぁ、あなたに会えるからいいんだけどね」
……アイリさんもそうだった。
「セイフォード少将、東側の建物も結構傷んでます。これは相当な経費がかかりますね…」
マスタング大佐が来て、肩を竦める。
「グラマン中将が私を呼んだということは、徹底的に調査をして新品にして欲しいということよね」
「…経費をかけすぎるのはどうかと」
「まともな演習出来ませんって言えばいいの」
アイリさんはマスタング大佐から書類を受け取り、確認をしていた時。
「ん?」
「「?」」
マスタング大佐の声に、そちらを見れば。
「こんちわっス。“雷鳴の錬金術師”さんいますか?」
黒髪の青年が歩いてきた。
「……」
私は眉間に皺を寄せる。
「雷鳴の錬金術師は私だけど、何か用?」
「おっと、これは運がいい。あんたが“雷鳴の錬金術師”さんですか」
あんた、って。
肩の階級章を見れば、少佐であることがわかった。
それにしても少佐が少将に対しての口の利き方じゃない。
「どこから来たかは知らんが、上司に対しての態度を改めたまえ」
マスタング大佐がそう言うと、黒髪の青年は肩を竦めて。
「レオン・カトレフ、“雷の錬金術師”っす」
敬礼をした。
「ああ、先日国家錬金術師になったカトレフ少佐ね」
アイリさんはカトレフ少佐のことを知っているようで、再び書類へと視線を落とす。
「で、何の用?大した用じゃないなら下がってちょうだい」
「大した用でもないんすけど、ちょっと確認したいことがあって」
「確認したいこと?」
私と大佐は顔を見合わせる。
「あんたの“雷鳴”と俺の“雷”、どちらが“本物の雷”なのか、気になっちまって」
アイリさんの“雷鳴”と、カトレフ少佐の“雷”。
どちらが本物か、だなんて。
「…カトレフ少佐、セイフォード少将に失礼ですよ」
私がそう言うと、アイリさんはクスリと笑みを浮かべて。
「あなたが本物で構わないわ。」
さも興味なさそうにそう仰った。
それは…ダメ…。
私はアイリさんの“錬金術”を見たことがない。
でも“本当の雷”はアイリさんよ。
だって、アイリさんはアメストリス国 国軍最強って謳われているんだもの。
「?」
私がアイリさんの軍服の袖を握ると、きょとんと私を見た。
「どうしたの?ホークアイ中尉」
「…私はあなた以上の“雷”の錬金術を使う人はいないと思ってます」
「私の錬金術見たことないでしょ?」
「ありませ「いや、あるよ。ホークアイ中尉も見たことが」
私の言葉を遮ったのはマスタング大佐。
「え?」
私がアイリさんの錬金術を見たことある?
どうして大佐がそれを?
「とにかく、そんな下らない理由で少将の手を煩わせるな、カトレフ少佐。」
マスタング大佐もよく思っていないようで、眉間に皺を寄せていて。
「下らないこと?これは俺の国家錬金術師としてのプライドなんすけど」
どちらが“本物”か。
どちらが“最強”か。
カトレフ少佐はアイリさんを見据えて。
アイリさんは軽く息を吐き、書類から視線を上げて。
「時間がないから、5分でいいかしら」
書類を私に渡してきた。
持っててという意味で。
「5分で決着が付くっすかね?」
「あなたの心を折るには十分よ」
格好良い…。
私もマスタング大佐も、少し離れる。
「…大丈夫でしょうか」
強いのはアイリさんだろうけれど、怪我しないかしら…。
「大丈夫さ」
マスタング大佐は、腕を組んで。
「あの人とああして相対した時点で、勝ち目はない」
アイリさんは動体視力を持っているし、左目に錬成陣を焼き付けた人。
真正面から戦いを挑んで勝てるわけがない。
アイリさんを殺すには、数ヶ月前のトレインジャックのように狙撃するしかない。
「…そうですけど…」
それでも心配は心配…。
「見たまえ」
「え?」
マスタング大佐が空を指差す。
「?」
曇り空。
これが何の……。
曇り空?
さっきまで晴れていたのに?
「まずはご挨拶を」
カトレフ少佐は軍手をはめて、パチンと指を鳴らす。
すると。
「「「「うわぁあああ!!」」」」
「「!!」」
練兵場全体に、“雷”が奔った。
練兵場にいた軍人は驚いて悲鳴を上げて。
「な、なんだ今の…」
「あっちで何か揉めてるのか…?」
ざわざわとこちらに近づいてきた。
「今、あんた死んだっすよ」
本当なら今の雷撃でアイリさんは死んだ、と。
カトレフ少佐は言った。
…本当に“雷”を使うのね…。
アイリさんはカトレフ少佐の言葉や錬金術に動じず、真っ直ぐカトレフ少佐を見る。
「で?次は?」
「次?今のが“雷撃”っすよ。速すぎて見えませんでしたか?」
カトレフ少佐はニヤニヤ笑って、アイリさんに手を翳す。
「なるほどね」
アイリさんはまた軽く息を吐き、カトレフ少佐を見据えて。
「あなたの攻撃範囲内は練兵場全域といったところかしら」
「もう少し広げることは出来るけど、そんな感じっすね」
「そう」
空を見上げる。
「「?」」
私とマスタング大佐、カトレフ少佐も釣られるように空を見上げる。
さっきよりも暗く、ゴロゴロと雷が鳴り始めている。
「……まさか…使うのか…?」
マスタング大佐が呟く。
「?どういう「ねぇ、なぜ私が“雷”の二つ名ではなく…“雷鳴”と名付けられたのか、知ってる?」
アイリさんは空を見上げたまま、カトレフ少佐に問いかけて。
「知らないっすけど、ただの“雷”よりも“雷鳴”のほうが様になるからじゃないっすかね」
「様になるから、か」
クスリと笑う。
ゴロゴロと鳴る雷。
「じゃあ、この“雷鳴”はどこまで聴こえていると思う?」
「さっきから何なんすか?まぁ…少なくともイーストシティ全体には聴こえてると思いますが…」
さっきまで晴れていたのに。
突然曇り出した。
そして、今アイリさんが言った“雷鳴が聴こえる範囲”
「ん?」
カトレフ少佐も気付いて、また空を見上げて。
「………いや嘘だろ…」
顔が真っ青になり始めた。
「……まさか…」
ハッと大佐を見れば、大佐はコクンと頷いて。
「すでに、セイフォード少将の錬金術が発動されている」
そう言った。
そして。
「私の攻撃範囲は、この“雷鳴が聴こえる範囲内”。つまり、私はその気になれば数秒でイーストシティを堕とせるのよ」
そう言った。
「……いやいや、そんなの国が放っておくはずねぇだろ!!」
カトレフ少佐が噛み付く。
「そうだ、だからセイフォード少将は“許可なく錬金術の行使を禁止”されている。」
許可なく…錬金術の行使を…禁止…。
国は…この国はそれだけアイリさんを恐れている…。
アイリさんは不敵な笑みを浮かべ、カツンと音を立ててカトレフ少佐へ近づいて。
「命拾いしたわね。次からはもっと考えて発言をしなさい、坊や」
通り過ぎ様に、カトレフ少佐の肩に手を置いてそう仰って。
「執務室に戻るから、あとで報告書を持って来てちょうだい」
「了解しました」
アイリさんは行ってしまった。
「……なんだよあれ…化け物じゃねぇか…」
アイリさんの背中を見ながらカトレフ少佐がため息を吐く。
「…イシュヴァールの内乱の、終戦を告げる“蒼き雷”の話を聞いたことはないか?」
「「え?」」
私とカトレフ少佐は首を傾げる。
イシュヴァールの内乱の時、確かに凄い落雷が落ちたのは見たことがある。
でもその時は私はすでに軍用トラックの中で、撤退していた時だった。
「あの終戦した日、大総統は国家錬金術師を含め全軍を撤退させた。ただ一人、“雷鳴の錬金術師”だけを残して」
嘘。
……嘘。
あの落雷は…アイリさんの…錬金術によるもの…?
「“雷鳴の錬金術師”により発動された“雷の力”の凄まじさに、イシュヴァール人の戦意は最も簡単に失われた。」
そして同時に国はその力を恐れ、“雷鳴の錬金術師”を処刑することを考えたけれど。
簡単に処刑出来るほと弱くはなく。
だったら国の生物兵器として飼い、他国への圧力として使おう、と。
“アメストリス”という“檻”に入れた。
国が恐れた“雷の力”
国が許可なく行使することを禁止した“雷の力”
「しかも、これは後で知ったことだが終戦を告げる蒼き雷で死んだイシュヴァールの民は居ない」
「「ッッ!!」」
それって、それって…っ
バッとアイリさんのほうを見れば、遠くにいるアイリさんは私へと指を屈伸させて“おいで”と呼んでくれている。
「あの人は、雷を落とすタイミングも場所も、感電させる範囲すらも意のままなのだよ」
マスタング大佐の言葉に、私はカトレフ少佐を見て。
「“本物の雷”は、どちらでしょうね?」
小さく笑い、アイリさんへと走った。
「………」
「彼女はセイフォード少将の恋人だから、10:0で君の味方にはならないよ」
なんて話していたのは知らない。
「…アイリさん」
「ん?」
執務室へ向かいながら。
「……これ以上、好きにさせないでください」
そう言うと、アイリさんはきょとんと私を見て。
私の手を引いて、耳元で。
「もっと好きになってもいいのよ?」
と、囁かれれば。
「…っ」
顔が熱くなるのは当たり前…。
「…っ依存してしまいます」
「遠慮なくしてちょうだい」
アイリさんから放たれる数々の言葉に、簡単に心を持って行かれる…。
「…っ格好良かったです…」
格好良すぎてどうしようって思っちゃったわよ…。
本当にこの人は…。
どこまで好きにさせれば気が済むのだろう。
「今日は…中央に帰られますか…?」
「いえ、今日はリザを抱くために帰らないわ」
「…っ」
本当にもう…。
天候を支配するあなたこそ、“本物の雷”
雷鳴の錬金術師による“雷の力”の凄まじさを、直で見てみたい。
あなたの隣に立って。
国が恐れたその力を。
真っ直ぐ揺るぐことのない強い眼差しで、未来を見据えているあなたの傍で。
後日。
「……セイフォード君、何とかならない?」
「なりますよ。対価は何でしょう?」
「うむ、孫娘の小さい時の写真で「引き受けましょう」
「………私を交渉に使わないでくださいっ」
と、結局はアイリさんが錬金術で直して。
「………」
「……見過ぎですよ、セイフォード少将」
「確かに…水着…」
「っそんな写真までもらったんですか…っ」
普段真面目なアイリさんの、変態な一面を知ったわ…。
END