ハガレン 旧拍手文置き場
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『あなただけ』
「ホークアイ中尉」
「!ルビア准将、お疲れ様です」
「お疲れ様ー」
ある日。
東方司令部の女性用トイレに。
中央司令部勤務であるロア・ルビア准将が入ってきた。
…いつ東方司令部にいらしたのかしら。
私が敬礼すると、ルビア准将が片手を上げたので敬礼を解き後ろに組む。
「………」
「…なにか?」
ルビア准将がじっと鏡越しに私を見てる…。
「ホークアイ中尉って、セイフォード少将…いえ、この場合はアイリって呼ばせてもらおっかな。アイリと交際して随分経つわよね」
なに。
いきなり。
「……はい、まぁ」
アイリさんを呼び捨てにして。
アイリさんのご友人?
「そりゃあもちろん、夜の営みだってしてるでしょ?」
「…ルビア准将、話の意図が見えませんが」
私がそう言うと、ルビア准将はクスリと笑って。
「アイリとシてる時に」
私へ近づき耳元で。
「愛撫なしに挿入されたことある?」
小さく囁いた。
「ッ!!」
私は目を見開く。
え?
なに?
なんなの、この人。
「アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよ」
痛みを伴う行為なんてしたことない。
アイリさんは優しいし、痛くないようにしてくれるから。
「私もドMなのかなぁ。すぐイッちゃってね?あー、また抱いてくれないかなー」
こんなの。
こんな話、今の恋人である私にすることなの?
「ねぇ、聞いてる?ホークアイ中尉」
ルビア准将は私の頬に手を添えてきたから、そっと顔を逸らして。
「…ご冗談が過ぎます。ルビア准将」
拳を握ることで、手の震えを悟られないようにする。
「あ、ごめんね?ホークアイ中尉にもするのか気になっちゃって。」
ルビア准将はクスクス笑いながら、私の横を通り過ぎる時に私の肩に手を置いて。
「してもらえるといいわね、あなたも」
そう吐き捨て、去って行った。
「…ッ」
私は口を押さえ、洗面台へ片手を付く。
口を押さえていた手で水を最大まで出して。
「ぅ…っ」
嘔吐く。
気持ち悪い。
なにあれ。
なにあれ。
本当に気持ち悪い。
“愛撫なしに挿入されたことある?”
「…ッ」
頭の中でリピートされる言葉。
“アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよね”
「……ッッ」
ダメ。
ダメよ。
こんなことで心を持って行かれてはダメ。
過去のこと。
過去のことなんだから。
“アイリって”
あの呼び捨て。
ご友人なのよ、きっと。
そう、ご友人。
でも。
アイリさんのご友人が、友人の恋人を傷つけるようなことをする?
友人の恋人に、友人との夜の事情を話したりするの?
「…ッ」
また嘔吐く。
ああ、心が持って行かれる。
苦しい。
気持ち悪い。
「……っアイリさん…っ」
会いたい。
今、すごく会いたい。
抱き締めて欲しい。
好きだと言って欲しい。
愛しているのは私だけだと言って欲しい。
でも。
それを言ってしまうと心配させてしまう。
アイリさんを悲しませてしまう。
フィリックス准将の時のように、アイリさんを怒らせてしまう。
「う…っぅ…っ」
私は再び口を押さえて、屈み込んで。
「…っアイリさん…っ」
静かに涙を零した。
それから。
司令部ではアイリさんやみんなには何度もどうしたのかを聞かれた。
その都度何でもないとお伝えしてもなかなか信用してくれなくて。
信用してくれなくても、ルビア准将に言われたことを伝えてはならない。
アイリさんを悲しませ、怒らせてしまうから。
私一人で耐えればいいだけ。
大丈夫、過去のことなんだから。
今はアイリさんは私しか見てないんだから。
「…リザ?」
私に覆い被さるアイリさんを見上げる。
「…アイリさん」
“愛撫なしに挿入されたことある?”
「ん?」
「…もう指を挿れてくれませんか」
「え?」
私の言葉に、アイリさんは眉間に皺を寄せる。
「…今挿れたら痛いかもしれないし…」
痛いかもしれない?
「いいんです。痛くても」
それでもいい。
「……リザ、どうしたの?今日のリザなんだか変よ?」
アイリさんは離れ、私の腕を引いて起こした。
「…何でもありませんって何度も言いましたよ」
“アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよね”
頭の中に、繰り返し繰り返しリピートされる。
会話時間は長くないのに。
私の心に傷をつけるには十分な時間と言葉で。
「何かあったんでしょ?」
「何もないです…」
アイリさんは私の頬に手を当てて。
「じゃあどうして泣いてるのよ…」
泣きそうな表情を浮かべた。
ああ、ダメ。
「な…にも…っないん…です…っ」
ダメ。
「…リザ、大丈夫だから…」
アイリさんは私を抱き締めてくれて、背中を摩ってくれた。
ああ、もう。
ダメなのに。
話てはダメなのに。
「…っアイリさん…っ」
「うん、大丈夫…ゆっくり話して…?」
私はアイリさんの服を握って、今日ルビア准将から聞いたことを話してしまった。
「ルビア准将、ねぇ…」
アイリさんは小さく笑って。
「あのね?リザ」
私の頬に手を添えて。
「私、ルビア准将と寝たことないわよ?」
ちゅ、とキスをしてくれた。
「…ぇ?」
え?
ルビア准将と寝たことがない?
え?
ルビア准将の嘘だったの?
「ルビア准将はアウル中将と仲が良いから聞いたのかもしれないわね」
「…アウル中将にはそういう抱き方をしたんですね…」
「えぇ、したわ」
“愛撫なしに挿入されたことある?”
愛撫をせずに挿入を…?
「だって」
アイリさんは私を押し倒して。
「面倒くさいでしょ?」
「ぇ…?…ん…っ」
胸の先を舌を舐め上げられて、ピクッと身体が震えてしまった。
面倒くさい?
「私は別に、アウル中将が好きで抱いたわけじゃなく、階級を上げるために抱いたの」
「ぁ…っあ…っ」
もう片方の胸の先を指で摘まれ、また身体が跳ねた。
「こんなふうに、艶かしい声が聴きたいとか快楽に浮かされた表情が見たいとか思って抱いたわけじゃなくてね?」
アイリさんの細められた眼差しから視線を逸らせず。
「リザにするような執拗なまでの愛撫なんてせず、手っ取り早くイかせたの」
「ああ…っあ…っ」
「わかる?リザ」
アイリさんは優しく微笑んで、そして。
「艶かしい声が聴きたい、厭らしい表情が見たい、キスをしたい、ギューッて抱き締めたらもう離したくないって思ったのは、あなたが初めてなの」
そう言ってくれた。
「アイリさ…っん…っん…っ」
「だからね?リザがどんなに望んでも痛みなんて感じさせない。させたくない」
ああ、好き。
愛しい。
愛しい。
「愛してる、リザ」
アイリさんの優しい笑みと、優しい愛撫。
心から安心する。
「わ…っわたしも…っあっあっあっあぅうっあっあん…っ」
アイリさんの言葉で心が救われていく。
アイリさんの愛撫で身も心も満たされていく。
ああ、愛おしい。
本当に何よりも誰よりも愛おしい人––––
数日後。
「セイフォード少将!」
「!ルビア准将」
アイリさんに書類の確認をしてもらっていた時。
ルビア准将がやって来た。
「!」
私がルビア准将に敬礼しようとすると、アイリさんに手を掴まれた。
「セイフォード少将、お疲れ様です」
「あなたもね。私に何か用事?」
「中央から書類を持ってきました。クレミン准将がくれぐれも目を通してくださいとのことです」
ルビア准将はアイリさんの傍に立ち、ニコニコしている。
「そう。ありがと」
「クレミン准将も懲りませんよねぇ。セイフォード少将に怒られてばかりいるのに」
「本当よね。嫌になるわ」
アイリさんは肩を竦めて。
「あ、そうそう、ルビア准将」
「はい?」
ルビア准将から書類を受け取って。
「この間はリザに有る事無い事吹き込んでくれたみたいね?」
書類を確認しながら、ルビア准将のほうを見ずにそう言った。
「「ッ!!」」
ああ、フィリックス准将の時のように怒ってしまう。
「あ、いえ、あの…」
そう思った時。
「おかげでリザが信用しきってね?それはもう可愛いの何のって。だって、最中に嫉妬で泣くのよ?可愛くない?」
あの時の話をし出した。
「っセイフォード少将!」
私はすぐに止めようとしたけど。
アイリさんの目を見て、無理だ止められないと悟った。
だって、笑顔だけど目は笑っていないから。
静かに怒っているから。
「え、あの「本当、私を萌え殺す気みたいでね?もう可愛くて可愛くて。」
アイリさんはルビア准将に笑みを向けて。
「だから、ありがとうね。あなたのおかげでもっとリザが好きになったわ」
「…ッ」
そう放った瞬間、ルビア准将が泣きそうな表情を浮かべた。
「さて、行きましょうか。リザ」
「あ…」
アイリさんに手を引かれ、歩き出す私たち。
私は少しだけルビア准将へ振り返ると。
「な…なんでホークアイ中尉なんですか!?」
ルビア准将が叫んだ。
なぜ私なのか。
なぜ自分じゃなく、私を好きなのか。
そう言いたいのでしょうね。
「私の方が先にセイフォード少将を好きになったのに…ッ!」
私とアイリさんが会話をするようになったのは、マスタング大佐とアイリさんが親しかったから。
数年前とは言え、ルビア准将はそれよりも前からアイリさんを好きだった。
私はギュッと拳を握ると、アイリさんはクスリと笑って。
「それ、私に関係ある?」
そう放った。
「え…?」
「あなたが先に私を好きになろうが、私には関係ないわ。」
拳を握る私の手に触れて、指を絡ませるように握って。
「自分の好きな人の大切な人を傷つけるような人を、私は今後好きになることもなければ理解もしない。だからね?ルビア准将」
真っ直ぐ鋭い眼差しをルビア准将へと向けて。
「次はないわよ」
そう警告し、歩き出した。
「…アイリさん」
「んー?なぁに?」
アイリさんの名前を口にすると、アイリさんはいつも通りの優しい笑みを浮かべていて。
私はまた少しだけルビア准将へと振り返って。
両手で顔を覆い、屈み込んでいるのを見つめ目を閉じて。
「…公私混同は良くありませんよ」
「えー!?私に公私混同させるのはリザなのにぃ!」
ギュッとアイリさんの手を強く握って。
「…好きです…アイリさん…」
「ほらぁんもう、可愛いなぁもう…私を萌え殺す気でしょー…」
アイリさんへ、笑みを贈った。
傷ついた。
本当に傷ついた。
このままどうにかなってしまいそうなくらい、心を抉られた。
でもそれは、アイリさんがまた助けてくれた。
私の心を救ってくれた。
好きだと言ってくれた。
愛してると言ってくれた。
「不安に思ったことは全部言って。全部聞くし、話すし、受け止めるから。一人で抱え込まないで?リザ」
「…はい…アイリさん…好きです…」
「~~~ッねぇ!抱いてもいい!?」
「だ、だめですっ仕事中ですよ!」
「じゃあ誘わないでもう!理性がヤバいのよ!」
もう大丈夫。
もう揺らがない。
こんなことがまたあったとしても。
“あなただけよ、リザ”
アイリさんの、この言葉を信じる。
だから、もう大丈夫。
「今日は寝かさないから」
「…っ明日も仕事ですからね…!」
「知らなーい。誘うリザが悪いんだもん」
あなたのために、強くならないと。
あなたを悲しませないように。
不安にさせないように。
「…愛してます…アイリさん…」
「はぁ…可愛い…なんでそんなに可愛いの…もう可愛すぎてつらい…」
あなたが安心して笑って居られるように。
END
「ホークアイ中尉」
「!ルビア准将、お疲れ様です」
「お疲れ様ー」
ある日。
東方司令部の女性用トイレに。
中央司令部勤務であるロア・ルビア准将が入ってきた。
…いつ東方司令部にいらしたのかしら。
私が敬礼すると、ルビア准将が片手を上げたので敬礼を解き後ろに組む。
「………」
「…なにか?」
ルビア准将がじっと鏡越しに私を見てる…。
「ホークアイ中尉って、セイフォード少将…いえ、この場合はアイリって呼ばせてもらおっかな。アイリと交際して随分経つわよね」
なに。
いきなり。
「……はい、まぁ」
アイリさんを呼び捨てにして。
アイリさんのご友人?
「そりゃあもちろん、夜の営みだってしてるでしょ?」
「…ルビア准将、話の意図が見えませんが」
私がそう言うと、ルビア准将はクスリと笑って。
「アイリとシてる時に」
私へ近づき耳元で。
「愛撫なしに挿入されたことある?」
小さく囁いた。
「ッ!!」
私は目を見開く。
え?
なに?
なんなの、この人。
「アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよ」
痛みを伴う行為なんてしたことない。
アイリさんは優しいし、痛くないようにしてくれるから。
「私もドMなのかなぁ。すぐイッちゃってね?あー、また抱いてくれないかなー」
こんなの。
こんな話、今の恋人である私にすることなの?
「ねぇ、聞いてる?ホークアイ中尉」
ルビア准将は私の頬に手を添えてきたから、そっと顔を逸らして。
「…ご冗談が過ぎます。ルビア准将」
拳を握ることで、手の震えを悟られないようにする。
「あ、ごめんね?ホークアイ中尉にもするのか気になっちゃって。」
ルビア准将はクスクス笑いながら、私の横を通り過ぎる時に私の肩に手を置いて。
「してもらえるといいわね、あなたも」
そう吐き捨て、去って行った。
「…ッ」
私は口を押さえ、洗面台へ片手を付く。
口を押さえていた手で水を最大まで出して。
「ぅ…っ」
嘔吐く。
気持ち悪い。
なにあれ。
なにあれ。
本当に気持ち悪い。
“愛撫なしに挿入されたことある?”
「…ッ」
頭の中でリピートされる言葉。
“アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよね”
「……ッッ」
ダメ。
ダメよ。
こんなことで心を持って行かれてはダメ。
過去のこと。
過去のことなんだから。
“アイリって”
あの呼び捨て。
ご友人なのよ、きっと。
そう、ご友人。
でも。
アイリさんのご友人が、友人の恋人を傷つけるようなことをする?
友人の恋人に、友人との夜の事情を話したりするの?
「…ッ」
また嘔吐く。
ああ、心が持って行かれる。
苦しい。
気持ち悪い。
「……っアイリさん…っ」
会いたい。
今、すごく会いたい。
抱き締めて欲しい。
好きだと言って欲しい。
愛しているのは私だけだと言って欲しい。
でも。
それを言ってしまうと心配させてしまう。
アイリさんを悲しませてしまう。
フィリックス准将の時のように、アイリさんを怒らせてしまう。
「う…っぅ…っ」
私は再び口を押さえて、屈み込んで。
「…っアイリさん…っ」
静かに涙を零した。
それから。
司令部ではアイリさんやみんなには何度もどうしたのかを聞かれた。
その都度何でもないとお伝えしてもなかなか信用してくれなくて。
信用してくれなくても、ルビア准将に言われたことを伝えてはならない。
アイリさんを悲しませ、怒らせてしまうから。
私一人で耐えればいいだけ。
大丈夫、過去のことなんだから。
今はアイリさんは私しか見てないんだから。
「…リザ?」
私に覆い被さるアイリさんを見上げる。
「…アイリさん」
“愛撫なしに挿入されたことある?”
「ん?」
「…もう指を挿れてくれませんか」
「え?」
私の言葉に、アイリさんは眉間に皺を寄せる。
「…今挿れたら痛いかもしれないし…」
痛いかもしれない?
「いいんです。痛くても」
それでもいい。
「……リザ、どうしたの?今日のリザなんだか変よ?」
アイリさんは離れ、私の腕を引いて起こした。
「…何でもありませんって何度も言いましたよ」
“アイリって結構ドSなところがあってね?“痛い?痛い?あー、痛いかぁ”ってニヤニヤしながら愛撫するのが好きなのよね”
頭の中に、繰り返し繰り返しリピートされる。
会話時間は長くないのに。
私の心に傷をつけるには十分な時間と言葉で。
「何かあったんでしょ?」
「何もないです…」
アイリさんは私の頬に手を当てて。
「じゃあどうして泣いてるのよ…」
泣きそうな表情を浮かべた。
ああ、ダメ。
「な…にも…っないん…です…っ」
ダメ。
「…リザ、大丈夫だから…」
アイリさんは私を抱き締めてくれて、背中を摩ってくれた。
ああ、もう。
ダメなのに。
話てはダメなのに。
「…っアイリさん…っ」
「うん、大丈夫…ゆっくり話して…?」
私はアイリさんの服を握って、今日ルビア准将から聞いたことを話してしまった。
「ルビア准将、ねぇ…」
アイリさんは小さく笑って。
「あのね?リザ」
私の頬に手を添えて。
「私、ルビア准将と寝たことないわよ?」
ちゅ、とキスをしてくれた。
「…ぇ?」
え?
ルビア准将と寝たことがない?
え?
ルビア准将の嘘だったの?
「ルビア准将はアウル中将と仲が良いから聞いたのかもしれないわね」
「…アウル中将にはそういう抱き方をしたんですね…」
「えぇ、したわ」
“愛撫なしに挿入されたことある?”
愛撫をせずに挿入を…?
「だって」
アイリさんは私を押し倒して。
「面倒くさいでしょ?」
「ぇ…?…ん…っ」
胸の先を舌を舐め上げられて、ピクッと身体が震えてしまった。
面倒くさい?
「私は別に、アウル中将が好きで抱いたわけじゃなく、階級を上げるために抱いたの」
「ぁ…っあ…っ」
もう片方の胸の先を指で摘まれ、また身体が跳ねた。
「こんなふうに、艶かしい声が聴きたいとか快楽に浮かされた表情が見たいとか思って抱いたわけじゃなくてね?」
アイリさんの細められた眼差しから視線を逸らせず。
「リザにするような執拗なまでの愛撫なんてせず、手っ取り早くイかせたの」
「ああ…っあ…っ」
「わかる?リザ」
アイリさんは優しく微笑んで、そして。
「艶かしい声が聴きたい、厭らしい表情が見たい、キスをしたい、ギューッて抱き締めたらもう離したくないって思ったのは、あなたが初めてなの」
そう言ってくれた。
「アイリさ…っん…っん…っ」
「だからね?リザがどんなに望んでも痛みなんて感じさせない。させたくない」
ああ、好き。
愛しい。
愛しい。
「愛してる、リザ」
アイリさんの優しい笑みと、優しい愛撫。
心から安心する。
「わ…っわたしも…っあっあっあっあぅうっあっあん…っ」
アイリさんの言葉で心が救われていく。
アイリさんの愛撫で身も心も満たされていく。
ああ、愛おしい。
本当に何よりも誰よりも愛おしい人––––
数日後。
「セイフォード少将!」
「!ルビア准将」
アイリさんに書類の確認をしてもらっていた時。
ルビア准将がやって来た。
「!」
私がルビア准将に敬礼しようとすると、アイリさんに手を掴まれた。
「セイフォード少将、お疲れ様です」
「あなたもね。私に何か用事?」
「中央から書類を持ってきました。クレミン准将がくれぐれも目を通してくださいとのことです」
ルビア准将はアイリさんの傍に立ち、ニコニコしている。
「そう。ありがと」
「クレミン准将も懲りませんよねぇ。セイフォード少将に怒られてばかりいるのに」
「本当よね。嫌になるわ」
アイリさんは肩を竦めて。
「あ、そうそう、ルビア准将」
「はい?」
ルビア准将から書類を受け取って。
「この間はリザに有る事無い事吹き込んでくれたみたいね?」
書類を確認しながら、ルビア准将のほうを見ずにそう言った。
「「ッ!!」」
ああ、フィリックス准将の時のように怒ってしまう。
「あ、いえ、あの…」
そう思った時。
「おかげでリザが信用しきってね?それはもう可愛いの何のって。だって、最中に嫉妬で泣くのよ?可愛くない?」
あの時の話をし出した。
「っセイフォード少将!」
私はすぐに止めようとしたけど。
アイリさんの目を見て、無理だ止められないと悟った。
だって、笑顔だけど目は笑っていないから。
静かに怒っているから。
「え、あの「本当、私を萌え殺す気みたいでね?もう可愛くて可愛くて。」
アイリさんはルビア准将に笑みを向けて。
「だから、ありがとうね。あなたのおかげでもっとリザが好きになったわ」
「…ッ」
そう放った瞬間、ルビア准将が泣きそうな表情を浮かべた。
「さて、行きましょうか。リザ」
「あ…」
アイリさんに手を引かれ、歩き出す私たち。
私は少しだけルビア准将へ振り返ると。
「な…なんでホークアイ中尉なんですか!?」
ルビア准将が叫んだ。
なぜ私なのか。
なぜ自分じゃなく、私を好きなのか。
そう言いたいのでしょうね。
「私の方が先にセイフォード少将を好きになったのに…ッ!」
私とアイリさんが会話をするようになったのは、マスタング大佐とアイリさんが親しかったから。
数年前とは言え、ルビア准将はそれよりも前からアイリさんを好きだった。
私はギュッと拳を握ると、アイリさんはクスリと笑って。
「それ、私に関係ある?」
そう放った。
「え…?」
「あなたが先に私を好きになろうが、私には関係ないわ。」
拳を握る私の手に触れて、指を絡ませるように握って。
「自分の好きな人の大切な人を傷つけるような人を、私は今後好きになることもなければ理解もしない。だからね?ルビア准将」
真っ直ぐ鋭い眼差しをルビア准将へと向けて。
「次はないわよ」
そう警告し、歩き出した。
「…アイリさん」
「んー?なぁに?」
アイリさんの名前を口にすると、アイリさんはいつも通りの優しい笑みを浮かべていて。
私はまた少しだけルビア准将へと振り返って。
両手で顔を覆い、屈み込んでいるのを見つめ目を閉じて。
「…公私混同は良くありませんよ」
「えー!?私に公私混同させるのはリザなのにぃ!」
ギュッとアイリさんの手を強く握って。
「…好きです…アイリさん…」
「ほらぁんもう、可愛いなぁもう…私を萌え殺す気でしょー…」
アイリさんへ、笑みを贈った。
傷ついた。
本当に傷ついた。
このままどうにかなってしまいそうなくらい、心を抉られた。
でもそれは、アイリさんがまた助けてくれた。
私の心を救ってくれた。
好きだと言ってくれた。
愛してると言ってくれた。
「不安に思ったことは全部言って。全部聞くし、話すし、受け止めるから。一人で抱え込まないで?リザ」
「…はい…アイリさん…好きです…」
「~~~ッねぇ!抱いてもいい!?」
「だ、だめですっ仕事中ですよ!」
「じゃあ誘わないでもう!理性がヤバいのよ!」
もう大丈夫。
もう揺らがない。
こんなことがまたあったとしても。
“あなただけよ、リザ”
アイリさんの、この言葉を信じる。
だから、もう大丈夫。
「今日は寝かさないから」
「…っ明日も仕事ですからね…!」
「知らなーい。誘うリザが悪いんだもん」
あなたのために、強くならないと。
あなたを悲しませないように。
不安にさせないように。
「…愛してます…アイリさん…」
「はぁ…可愛い…なんでそんなに可愛いの…もう可愛すぎてつらい…」
あなたが安心して笑って居られるように。
END