ハガレン 旧拍手文置き場
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『あなたは私の世界の全て』
嘘、嘘よ。
あの人が。
“リザー、チューしていい?いいわよね?するから!”
あの人が、敵?
『よく聞け…』
そんなの嘘に決まってる。
『…セイフォード少将もいた』
マスタング大佐が言っていた。
『え?』
緊急招集された将官の中に、アイリさんの姿もあったと。
驚愕の眼差しでアイリさんを見つめれば、アイリさんは小さな笑みを浮かべて手を振っていたと。
『あの人は』
マスタング大佐が拳を握って、苦しそうに辛そうに吐き出したのは。
『あの人は敵だ、ホークアイ中尉』
絶望の言葉だった。
信じない。
大佐は目の当たりにしたんでしょうけれど。
私は信じない。
信じられるわけがない。
だって。
“はぁ……可愛いなぁもう…”
嘘だったの?
“会いたかったぁ…”
私を想うあの言葉は全部。
“愛してるわ、リザ”
偽りだったの?
「……ッッ」
息が出来ない。
苦しい。
苦しいです、アイリさん。
息が出来ません。
嘘ですよね?
あなたが敵だなんて、私たちを裏切っていたなんて嘘ですよね?
「あら?待ち伏せにしては隠れられてないわよ?」
アイリさんのご自宅近くにある公園。
真実を知るために、アイリさんを待っていた。
通りかかるかわからないのに、きっと来るという確信があった。
私が居ると、アイリさんも確信していただろうから。
「…セイフォード少将。お疲れ様です」
アイリさんは笑顔だった。
「えぇ。あなたもね」
一定の距離を空けて。
私たちは相対する。
「その顔、ロイ君に聞いた感じ?」
「はい、聞きました」
先程まであった苦しさは今はなくて、どこか落ち着いていた。
「そう。大総統付き補佐って、かなりの出世じゃない。おめでとう」
「……」
私は眉間に皺を寄せて。
「嘘、だったんですか?」
問いかけた。
「なぁに?」
アイリさんは可愛らしく首を傾げる。
「“好き”、“愛してる”という言葉は、全部嘘だったんですか?」
本当だと言って。
お願い。
アイリさん。
お願い。
アイリさんは真っ直ぐ私を見つめて。
「バレた?」
小さく笑った。
「滑稽だったわ。あなたが私に溺れていくのを見るのは」
クスクスと。
「“好き”とか“愛してる”とか、その言葉を言えば顔を真っ赤にさせて」
面白かったと。
「そんなわけないのに、まんまと騙されて」
可哀想になっちゃった、と。
アイリさんは言う。
“好き”
“愛してる”
あの言葉が嘘なら。
この人はどうして。
酷く辛そうな表情を浮かべているのだろう。
真っ直ぐ、アイリさんを見つめる。
私をズタズタに傷を付けているのに。
泣きたいのは私なのに。
裏切り者と叫びたいのに。
最低だと罵りたいのに。
この人はどうして泣きそうな表情を浮かべているのだろう。
「あなたもさっさとこんな裏切り者を忘れて、良い人見つけなさいね。まぁ、生きてたらだけど」
ああ。
そうか。
この人は。
「…いつからですか」
「そうねぇ…もう20年近くになるかしら」
そんなに前から。
「そうですか」
そんなに前から。
「そんなに前から、戦っていたんですね」
独りで戦っていたんだ。
「え?」
アイリさんはきょとん顔を浮かべる。
今まで放った全ての言葉は。
私を突き放すため。
私に最低だと、裏切り者だと言わせるため。
自分から私を嫌うことが出来ないから。
私に嫌われようとしている。
あなたは。
その覚悟を。
いつからしていたのだろう。
私や他のみんなからも嫌われ、最低だと裏切り者だと罵られる覚悟を。
あなたはいつからしていたのだろう。
カツン、と靴を鳴らして。
一歩、前に出る。
「あなたは20年近くも前から、この国のために戦っていた。私たちの未来のために、独りで」
あなたが何を背負い、何と戦っているのか。
「なにを…言って…」
私には到底背負い切れないだろう。
私の力では到底太刀打ち出来ない敵だろうと思っていた。
でも違った。
あなたが背負っているものは、共に背負えるもので。
あなたが戦っているものは、共に戦えるもの。
カツン、と再び靴を鳴らしアイリさんへ近づく。
「もう独りで戦わないで。私も、私たちも一緒に戦わせてください。一緒に背負わせてほしい」
今まであなたが背負ってきたものを。
今まであなたが戦ってきたものと。
一緒に背負い、戦わせて。
「私たちは守られてばかりいるほど、弱くないんですよ。アイリさん」
背負えるから。
戦えるから。
もう独りで、戦わせたりなんかしないから。
「だから」
私はアイリさんの頬に触れて。
「泣かないで」
初めて見る涙に、私は小さく笑みを浮かべて。
「たとえ本当に、私に説いてくれた数々の言葉が嘘だったとしても。私はあなたを愛してます」
私はあなたを罵ったりしない。
あなたは裏切り者ではなく、私たちの一番の味方で。
最低なんかじゃなくて、最善の行動で。
嫌いになんてなれるわけがなくて。
誰よりも何よりも。
愛おしい人。
「…リザ…」
“あなた”ではなく、ようやく“リザ”と呼んでくれた。
「…私を…罵ってよ…裏切り者だと…最低…だと…罵ってよ…」
ハラハラと頬を伝う涙が綺麗で。
「思ってもないことは口に出来ません」
なんて尊い人だろうと思った。
「…もう…リザは…本当に…もう……っ!」
背中に回された腕と、回した腕。
きつく抱き締め合って。
体を震わせて、声を殺して泣き続けるこの人が。
綺麗な涙と、その儚い弱さを初めて見せるこの人が。
私はたまらなく愛おしかった。
強い人だと思っていた。
強くてカッコ良くて。
真っ直ぐ揺るがないその眼差しが。
今は揺らいでいて。
弱くて、カッコ悪くて。
「好き…愛してる…リザ…好きじゃないなんて嘘…愛してないなんて嘘…愛してる…っ愛してるの…っ」
「私も愛してます…アイリさん…」
マスタング大佐に聞いた時は、辛くて悲しくて。
“裏切り者”と口に出してしまいそうになった。
でも、こうして。
あなたと直接相対して。
あなたの言葉を聞き、表情を見て。
ああ、敵じゃなかったと確信が持てた。
味方をも騙せる演技力と、言葉の力。
でも。
私には通用しませんよ、アイリさん。
あなたの演技なんて見破るし、言葉だって良い言葉以外真っ直ぐ信用しませんから。
「…罵られる覚悟…出来てたのに…」
泣き腫らした瞼にキスをして。
「何があっても私はあなたを信用し、あなたの味方ですから。」
そう伝えて、再びハラハラと涙を零すアイリさんの唇へとキスをした。
あなたの強さと弱さを見ました。
あなたの儚さと尊さを知りました。
大丈夫。
たとえこの世界の全てがあなたの敵になろうとも。
私だけはあなたの味方だから。
あなたの言葉と行動を信じるから。
「好き…リザ…」
「私も好きです、アイリさん」
もしもこの世界に終わりが来たとしても。
最期の瞬間まで。
あなたと共に。
END
嘘、嘘よ。
あの人が。
“リザー、チューしていい?いいわよね?するから!”
あの人が、敵?
『よく聞け…』
そんなの嘘に決まってる。
『…セイフォード少将もいた』
マスタング大佐が言っていた。
『え?』
緊急招集された将官の中に、アイリさんの姿もあったと。
驚愕の眼差しでアイリさんを見つめれば、アイリさんは小さな笑みを浮かべて手を振っていたと。
『あの人は』
マスタング大佐が拳を握って、苦しそうに辛そうに吐き出したのは。
『あの人は敵だ、ホークアイ中尉』
絶望の言葉だった。
信じない。
大佐は目の当たりにしたんでしょうけれど。
私は信じない。
信じられるわけがない。
だって。
“はぁ……可愛いなぁもう…”
嘘だったの?
“会いたかったぁ…”
私を想うあの言葉は全部。
“愛してるわ、リザ”
偽りだったの?
「……ッッ」
息が出来ない。
苦しい。
苦しいです、アイリさん。
息が出来ません。
嘘ですよね?
あなたが敵だなんて、私たちを裏切っていたなんて嘘ですよね?
「あら?待ち伏せにしては隠れられてないわよ?」
アイリさんのご自宅近くにある公園。
真実を知るために、アイリさんを待っていた。
通りかかるかわからないのに、きっと来るという確信があった。
私が居ると、アイリさんも確信していただろうから。
「…セイフォード少将。お疲れ様です」
アイリさんは笑顔だった。
「えぇ。あなたもね」
一定の距離を空けて。
私たちは相対する。
「その顔、ロイ君に聞いた感じ?」
「はい、聞きました」
先程まであった苦しさは今はなくて、どこか落ち着いていた。
「そう。大総統付き補佐って、かなりの出世じゃない。おめでとう」
「……」
私は眉間に皺を寄せて。
「嘘、だったんですか?」
問いかけた。
「なぁに?」
アイリさんは可愛らしく首を傾げる。
「“好き”、“愛してる”という言葉は、全部嘘だったんですか?」
本当だと言って。
お願い。
アイリさん。
お願い。
アイリさんは真っ直ぐ私を見つめて。
「バレた?」
小さく笑った。
「滑稽だったわ。あなたが私に溺れていくのを見るのは」
クスクスと。
「“好き”とか“愛してる”とか、その言葉を言えば顔を真っ赤にさせて」
面白かったと。
「そんなわけないのに、まんまと騙されて」
可哀想になっちゃった、と。
アイリさんは言う。
“好き”
“愛してる”
あの言葉が嘘なら。
この人はどうして。
酷く辛そうな表情を浮かべているのだろう。
真っ直ぐ、アイリさんを見つめる。
私をズタズタに傷を付けているのに。
泣きたいのは私なのに。
裏切り者と叫びたいのに。
最低だと罵りたいのに。
この人はどうして泣きそうな表情を浮かべているのだろう。
「あなたもさっさとこんな裏切り者を忘れて、良い人見つけなさいね。まぁ、生きてたらだけど」
ああ。
そうか。
この人は。
「…いつからですか」
「そうねぇ…もう20年近くになるかしら」
そんなに前から。
「そうですか」
そんなに前から。
「そんなに前から、戦っていたんですね」
独りで戦っていたんだ。
「え?」
アイリさんはきょとん顔を浮かべる。
今まで放った全ての言葉は。
私を突き放すため。
私に最低だと、裏切り者だと言わせるため。
自分から私を嫌うことが出来ないから。
私に嫌われようとしている。
あなたは。
その覚悟を。
いつからしていたのだろう。
私や他のみんなからも嫌われ、最低だと裏切り者だと罵られる覚悟を。
あなたはいつからしていたのだろう。
カツン、と靴を鳴らして。
一歩、前に出る。
「あなたは20年近くも前から、この国のために戦っていた。私たちの未来のために、独りで」
あなたが何を背負い、何と戦っているのか。
「なにを…言って…」
私には到底背負い切れないだろう。
私の力では到底太刀打ち出来ない敵だろうと思っていた。
でも違った。
あなたが背負っているものは、共に背負えるもので。
あなたが戦っているものは、共に戦えるもの。
カツン、と再び靴を鳴らしアイリさんへ近づく。
「もう独りで戦わないで。私も、私たちも一緒に戦わせてください。一緒に背負わせてほしい」
今まであなたが背負ってきたものを。
今まであなたが戦ってきたものと。
一緒に背負い、戦わせて。
「私たちは守られてばかりいるほど、弱くないんですよ。アイリさん」
背負えるから。
戦えるから。
もう独りで、戦わせたりなんかしないから。
「だから」
私はアイリさんの頬に触れて。
「泣かないで」
初めて見る涙に、私は小さく笑みを浮かべて。
「たとえ本当に、私に説いてくれた数々の言葉が嘘だったとしても。私はあなたを愛してます」
私はあなたを罵ったりしない。
あなたは裏切り者ではなく、私たちの一番の味方で。
最低なんかじゃなくて、最善の行動で。
嫌いになんてなれるわけがなくて。
誰よりも何よりも。
愛おしい人。
「…リザ…」
“あなた”ではなく、ようやく“リザ”と呼んでくれた。
「…私を…罵ってよ…裏切り者だと…最低…だと…罵ってよ…」
ハラハラと頬を伝う涙が綺麗で。
「思ってもないことは口に出来ません」
なんて尊い人だろうと思った。
「…もう…リザは…本当に…もう……っ!」
背中に回された腕と、回した腕。
きつく抱き締め合って。
体を震わせて、声を殺して泣き続けるこの人が。
綺麗な涙と、その儚い弱さを初めて見せるこの人が。
私はたまらなく愛おしかった。
強い人だと思っていた。
強くてカッコ良くて。
真っ直ぐ揺るがないその眼差しが。
今は揺らいでいて。
弱くて、カッコ悪くて。
「好き…愛してる…リザ…好きじゃないなんて嘘…愛してないなんて嘘…愛してる…っ愛してるの…っ」
「私も愛してます…アイリさん…」
マスタング大佐に聞いた時は、辛くて悲しくて。
“裏切り者”と口に出してしまいそうになった。
でも、こうして。
あなたと直接相対して。
あなたの言葉を聞き、表情を見て。
ああ、敵じゃなかったと確信が持てた。
味方をも騙せる演技力と、言葉の力。
でも。
私には通用しませんよ、アイリさん。
あなたの演技なんて見破るし、言葉だって良い言葉以外真っ直ぐ信用しませんから。
「…罵られる覚悟…出来てたのに…」
泣き腫らした瞼にキスをして。
「何があっても私はあなたを信用し、あなたの味方ですから。」
そう伝えて、再びハラハラと涙を零すアイリさんの唇へとキスをした。
あなたの強さと弱さを見ました。
あなたの儚さと尊さを知りました。
大丈夫。
たとえこの世界の全てがあなたの敵になろうとも。
私だけはあなたの味方だから。
あなたの言葉と行動を信じるから。
「好き…リザ…」
「私も好きです、アイリさん」
もしもこの世界に終わりが来たとしても。
最期の瞬間まで。
あなたと共に。
END