ハガレン 旧拍手文置き場
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『仮初の幸せを』
「……なに?」
「あら、随分と機嫌悪いわね」
「用がないなら出て行ってもらえる?私は忙しいの」
ある日。
大総統府から中央司令部の私の執務室へと戻れば、ラストがいた。
ラストとは、アメストリスを闇から牛耳っている人造人間(ホムンクルス)の一人。
なんと軍上層部も彼らに取り込まれて、彼らの命で動いているのよ。
もちろん大総統 キング・ブラッドレイもね。
こいつらを内から滅ぼすために中央司令部に居続けてるんだけど、なかなか上手いこといかなくて。
そんなラストは私の椅子に座り、妖艶な笑みを浮かべている。
「本当、忙しさが極まってるわよね。あなたは」
「えぇ。だからさっさと消えて。」
書類をデスクに置き、ラストを見下すような視線を送る。
「こんなところ、あなたの愛しい恋人に見られたら大変だものね」
「……」
ラストはクスクス笑いながら立ち上がり、今度はソファーに座った。
「私は“消えろ”と言ったの。居座らないでちょうだい」
「わかったわ、なんて言ってないけど」
余裕を崩さないラストに苛立つ。
「あまり機嫌悪くしないで?あなたが“私たちの仲間”だと、愛しい恋人に知られたくないでしょ?」
ホムンクルスの仲間であることをみんなに知られたくないでしょ?と。
私に脅しをかけてくる。
私は椅子に座り、デスクに肘をついて。
「知られてもいいわよ。別に。」
真っ直ぐ見つめる。
「あら、いいの?」
ラストは少し驚いたような表情を浮かべる。
「知られることを恐れるような、その程度の覚悟で中央司令部にいるわけじゃないのよ、私は。」
知られたくなんてないわよ。
こんな裏切り行為を。
でも“敵を騙すにはまず味方から”ということわざがあるように。
彼らを騙すために、リザやみんなを裏切らなければならない。
本当は味方だけど。
本当はみんなのために戦っているんだけど。
彼らと戦うために、“裏切り者”にならなければならない。
知られることを先延ばしにして。
仮初の幸せを感じて。
その時が来たら。
私はリザの敵になる。
リザを裏切ってでも。
私は守るべきものを守らねばならない。
ラストはデスクに歩み寄り、腰をかけて。
「へぇ?じゃあ、あなたの愛しい恋人さんを殺したら?どう?」
そう問うて来た。
リザを殺す?
その程度の脅しにも屈しないし、簡単に殺せるほどリザは弱くない。
ただ。
「…そうね。」
私はゆっくりとラストへと手を伸ばして。
「ッッ!!」
腕を掴んだ瞬間、デスクへと押さえ付けて。
「死ぬまであなたを殺し続けるわ」
ナイフを錬成し、ラストの顔の横に突き刺して耳元でそう囁いた。
リザに裏切り者と罵られる覚悟はあっても、リザの死に覚悟は出来ない。
だからアメストリスなんてどうでも良くなる。
アメストリスがどうなろうと、私はリザの命を奪った者を確実に殺す。
「ふふっ、本当に面白い人ね。」
拘束を解けばラストはまたクスクス笑い、扉へと歩いて行って。
「またお話ししましょうね、アイリ」
ようやく去った。
「………ああ、もう…」
イライラする。
あまりの苛立ちに仕事が手につかない。
リザを殺すですって?
手に持っているナイフを見つめて。
「…ッ」
デスクに深く突き刺す。
信じられないくらい苛立っている。
かつてないくらい苛立つ。
椅子に座り、両手で顔を覆う。
自分がしていることは、本当に正しいのか。
みんなを騙してまで成すべきことなのか。
裏切り者だと罵られる覚悟が出来ていたはずなのに。
“アイリさん”
リザの存在がその覚悟を揺るがせる。
“アイリさん?どうしました?”
愛しい人を作るべきではなかったのかもしれない。
こんなにも揺らいでしまうなら。
ずっと独りでいるべきだったのかもしれない。
「はぁ…」
デスクに項垂れて、ため息を零した時に。
コンコン、と。
扉がノックされた。
「…なに?今ちょっと取り込み中…」
でもないんだけど、今は誰かと話す気分じゃない。
なんて思ってたら、聞こえて来た声は。
『あ…すみません…ではまた来ますね…』
リザの声だった。
「リザ!?」
私はガバッと顔を上げて扉へ走って。
『…あの…では…失礼しました…』
思いっきり扉を開ければ。
「!!セイフォード少将…ッッ!!」
まさに帰ろうとしていたリザの腕を引いて、中に引き入れて。
「アイリさ…ッんぅ…っ」
扉に押し付けて、噛み付くようなキスをした。
「んっンぅ…っ」
リザは目を見開いて、私の肩を押して離そうとするけど。
「は…っん…っぁ…っ」
離さず、キスを深めると。
「ふ…っぁ…っん、ンっ」
私の首に腕を回し、リザからも絡めてくれた。
ああ、無理。
やっぱり無理。
私、リザを失うなんてもう無理だ。
裏切り者って罵られたくないし、離れて行ってほしくない。
結果的には味方だから、なんとかなるわよね?
裏切り者を演じていることに気付いてくれるわよね?
「…は…っはぁ…はぁ…」
「は…」
離れると透明の糸が伝い、プツリと切れた。
「…はぁ…リザ…」
「…どうしました?苛立っていたようですが…」
ちょっとした声のトーンで私の心情をすぐに理解してくれる。
「本当に使い物にならない将官たちにね…」
ごめんね、リザ。
まだ真実を伝えるわけにはいかないけれど。
いつか私が何を背負い何と戦っているか。
裏切り者と罵ってもいいから、どうか気付いて。
「いつもお疲れ様です」
「本当にあなただけが私の癒しだわ…」
辛く苦しい毎日は。
リザの声を聞くことで耐えられる。
今の今まであった苛立ちも。
リザのおかげでなくなって。
また頑張れる。
毎日の戦いの活力になる。
「今日はどうしたの?」
「あ、マスタング大佐の査定です」
「あー、査定があるのって面倒よねぇ」
「…アイリさんは免除されてますもんね」
「えぇ。私良い子ちゃんだからね」
なんてリザと笑い合って。
「ねぇ、抱いてもいい?」
「だ、ダメに決まってるじゃないですかっ!」
「えー…久しぶりなのにぃ…」
ロイ君が来るまで、リザとイチャイチャしていたわ。
知られたくないけど、気付いて欲しい。
罵られたくないけど、覚悟は出来ているから。
だからその時、その瞬間まで。
この仮初の幸せを。
どうか感じさせて。
END
「……なに?」
「あら、随分と機嫌悪いわね」
「用がないなら出て行ってもらえる?私は忙しいの」
ある日。
大総統府から中央司令部の私の執務室へと戻れば、ラストがいた。
ラストとは、アメストリスを闇から牛耳っている人造人間(ホムンクルス)の一人。
なんと軍上層部も彼らに取り込まれて、彼らの命で動いているのよ。
もちろん大総統 キング・ブラッドレイもね。
こいつらを内から滅ぼすために中央司令部に居続けてるんだけど、なかなか上手いこといかなくて。
そんなラストは私の椅子に座り、妖艶な笑みを浮かべている。
「本当、忙しさが極まってるわよね。あなたは」
「えぇ。だからさっさと消えて。」
書類をデスクに置き、ラストを見下すような視線を送る。
「こんなところ、あなたの愛しい恋人に見られたら大変だものね」
「……」
ラストはクスクス笑いながら立ち上がり、今度はソファーに座った。
「私は“消えろ”と言ったの。居座らないでちょうだい」
「わかったわ、なんて言ってないけど」
余裕を崩さないラストに苛立つ。
「あまり機嫌悪くしないで?あなたが“私たちの仲間”だと、愛しい恋人に知られたくないでしょ?」
ホムンクルスの仲間であることをみんなに知られたくないでしょ?と。
私に脅しをかけてくる。
私は椅子に座り、デスクに肘をついて。
「知られてもいいわよ。別に。」
真っ直ぐ見つめる。
「あら、いいの?」
ラストは少し驚いたような表情を浮かべる。
「知られることを恐れるような、その程度の覚悟で中央司令部にいるわけじゃないのよ、私は。」
知られたくなんてないわよ。
こんな裏切り行為を。
でも“敵を騙すにはまず味方から”ということわざがあるように。
彼らを騙すために、リザやみんなを裏切らなければならない。
本当は味方だけど。
本当はみんなのために戦っているんだけど。
彼らと戦うために、“裏切り者”にならなければならない。
知られることを先延ばしにして。
仮初の幸せを感じて。
その時が来たら。
私はリザの敵になる。
リザを裏切ってでも。
私は守るべきものを守らねばならない。
ラストはデスクに歩み寄り、腰をかけて。
「へぇ?じゃあ、あなたの愛しい恋人さんを殺したら?どう?」
そう問うて来た。
リザを殺す?
その程度の脅しにも屈しないし、簡単に殺せるほどリザは弱くない。
ただ。
「…そうね。」
私はゆっくりとラストへと手を伸ばして。
「ッッ!!」
腕を掴んだ瞬間、デスクへと押さえ付けて。
「死ぬまであなたを殺し続けるわ」
ナイフを錬成し、ラストの顔の横に突き刺して耳元でそう囁いた。
リザに裏切り者と罵られる覚悟はあっても、リザの死に覚悟は出来ない。
だからアメストリスなんてどうでも良くなる。
アメストリスがどうなろうと、私はリザの命を奪った者を確実に殺す。
「ふふっ、本当に面白い人ね。」
拘束を解けばラストはまたクスクス笑い、扉へと歩いて行って。
「またお話ししましょうね、アイリ」
ようやく去った。
「………ああ、もう…」
イライラする。
あまりの苛立ちに仕事が手につかない。
リザを殺すですって?
手に持っているナイフを見つめて。
「…ッ」
デスクに深く突き刺す。
信じられないくらい苛立っている。
かつてないくらい苛立つ。
椅子に座り、両手で顔を覆う。
自分がしていることは、本当に正しいのか。
みんなを騙してまで成すべきことなのか。
裏切り者だと罵られる覚悟が出来ていたはずなのに。
“アイリさん”
リザの存在がその覚悟を揺るがせる。
“アイリさん?どうしました?”
愛しい人を作るべきではなかったのかもしれない。
こんなにも揺らいでしまうなら。
ずっと独りでいるべきだったのかもしれない。
「はぁ…」
デスクに項垂れて、ため息を零した時に。
コンコン、と。
扉がノックされた。
「…なに?今ちょっと取り込み中…」
でもないんだけど、今は誰かと話す気分じゃない。
なんて思ってたら、聞こえて来た声は。
『あ…すみません…ではまた来ますね…』
リザの声だった。
「リザ!?」
私はガバッと顔を上げて扉へ走って。
『…あの…では…失礼しました…』
思いっきり扉を開ければ。
「!!セイフォード少将…ッッ!!」
まさに帰ろうとしていたリザの腕を引いて、中に引き入れて。
「アイリさ…ッんぅ…っ」
扉に押し付けて、噛み付くようなキスをした。
「んっンぅ…っ」
リザは目を見開いて、私の肩を押して離そうとするけど。
「は…っん…っぁ…っ」
離さず、キスを深めると。
「ふ…っぁ…っん、ンっ」
私の首に腕を回し、リザからも絡めてくれた。
ああ、無理。
やっぱり無理。
私、リザを失うなんてもう無理だ。
裏切り者って罵られたくないし、離れて行ってほしくない。
結果的には味方だから、なんとかなるわよね?
裏切り者を演じていることに気付いてくれるわよね?
「…は…っはぁ…はぁ…」
「は…」
離れると透明の糸が伝い、プツリと切れた。
「…はぁ…リザ…」
「…どうしました?苛立っていたようですが…」
ちょっとした声のトーンで私の心情をすぐに理解してくれる。
「本当に使い物にならない将官たちにね…」
ごめんね、リザ。
まだ真実を伝えるわけにはいかないけれど。
いつか私が何を背負い何と戦っているか。
裏切り者と罵ってもいいから、どうか気付いて。
「いつもお疲れ様です」
「本当にあなただけが私の癒しだわ…」
辛く苦しい毎日は。
リザの声を聞くことで耐えられる。
今の今まであった苛立ちも。
リザのおかげでなくなって。
また頑張れる。
毎日の戦いの活力になる。
「今日はどうしたの?」
「あ、マスタング大佐の査定です」
「あー、査定があるのって面倒よねぇ」
「…アイリさんは免除されてますもんね」
「えぇ。私良い子ちゃんだからね」
なんてリザと笑い合って。
「ねぇ、抱いてもいい?」
「だ、ダメに決まってるじゃないですかっ!」
「えー…久しぶりなのにぃ…」
ロイ君が来るまで、リザとイチャイチャしていたわ。
知られたくないけど、気付いて欲しい。
罵られたくないけど、覚悟は出来ているから。
だからその時、その瞬間まで。
この仮初の幸せを。
どうか感じさせて。
END