ハガレン 旧拍手文置き場
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『雷鳴と鷹』
「大佐ー、セイフォード少将来たっスよ」
「またグラマン中将に呼ばれたんだな…」
ある日の東方司令部。
いつものように大佐を見張っていた時。
中央司令部からセイフォード少将がいらした。
グラマン中将はセイフォード少将のことを信頼し、気に入っているから毎回呼ぶのよ…。
セイフォード少将の忙しさは存じているはずなのに。
セイフォード少将もセイフォード少将で、一度断るけれど必ず来るの。
セイフォード少将もまたグラマン中将を信頼してくれているからでしょうね。
「はぁ…忙しさが極まってる毎日だわ…」
マスタング大佐とオフィスに来たセイフォード少将。
「セイフォード少将、またチェスのお相手ですか?」
「そー…。私に勝てないのに挑んで来るんだもの」
深くため息を吐くセイフォード少将に苦笑いを零す。
「でもまぁ、今日は少しグラマン中将に話があったから丁度いいんだけどね」
「グラマン中将に?」
私が首を傾げれば、セイフォード少将は。
「軍上層部の“アブナイハナシ”よ」
口元に人差し指を当てて、クスクス笑った。
「……そうなんですね」
私が視線を逸らすと。
「なぁに?照れてるの?ねぇ、照れてる?」
私の背中に密着してきた…。
「……っ照れてませんから、大丈夫ですから、離れてください仕事中ですよ」
「やーだ可愛いなぁもう。」
なんてずっと揶揄われる…。
セイフォード少将はクスクス笑いながら、大佐へと振り返って。
「じゃあロイ君、サボったら軍法会議だから」
「なん!?」
釘を刺し、グラマン中将の執務室へと向かった。
「……」
…用が済んだらすぐに中央へ戻ってしまうのかしら。
少しお話だけでもしたいんだけれど…。
なんて思いでセイフォード少将の背中を見ていれば。
「今日はこっちに居るようだよ、セイフォード少将」
マスタング大佐にそう言われて。
「…そうなんですか。では大佐、私も仕事に戻りますので失礼します」
心が踊ってしまった…。
今日一日はこちらに居る。
じゃあ、仕事が終わったら私の家に招いて一緒に過ごせるかしら。
それとも司令部に残って執務を?
……仕事の可能性のほうが高いわよね。
でもまぁ、とりあえず…。
グラマン中将とのお話が終わるまで待ちましょう。
「あ、セイフォード少将……」
3時間ほどで、セイフォード少将がグラマン中将の執務室から出て来た。
チェスと話し合いは終わったようだけれど。
「……何かあったのかしら」
セイフォード少将は書類を見ながら深刻な面持ちで執務室へ入って行った。
ちなみに、東方司令部にはセイフォード少将のための執務室が設けられている。
それだけセイフォード少将がいらっしゃる頻度が高いから。
「……伺っても大丈夫かしら」
滅多に見ない表情だから。
その…。
なんだか心配に…。
私は静かに深呼吸をして。
コンコン
「ホークアイ中尉です。」
ノックをする。
『入っていいわよ』
セイフォード少将の声が聞こえたから、静かに扉を開ける。
「…失礼します」
セイフォード少将はやはりどこか浮かない表情だった。
「どうしたの?何か用事?」
「あ、いえ、あの…」
「ん?」
私は視線を数回泳がせると、セイフォード少将が手招きをしたから近くに行く。
「その…深刻な面持ちでしたので…」
心配をしていることに、セイフォード少将はきょとんと私を見つめて。
「ああ、まぁ、ね。うん、ちょっと面倒なことになりそうで」
「面倒なこと?」
セイフォード少将は立ち上がり、窓際へと立つ。
「しばらくは東方司令部に滞在かな。中央には私の仕事をこちらに回すよう手配しないと」
はぁ、と肩を落とすセイフォード少将。
何があったのかは尉官である私は知るべきことではないけれど。
「?リザ?」
私はセイフォード少将へ歩み寄り、背中に寄り添うように額をくっ付けて。
「……本当に…申し訳ありませんが…その…私は…嬉しいです…」
“面倒くさいこと”がこれから起ころうとしているのかもしれないけれど。
セイフォード少将が少しでも長く東方司令部に居るんだと思うと。
心が踊って仕方がない…。
「あーもー、可愛いなぁもう…」
セイフォード少将…いえ、アイリさんは私へと振り返って抱き締めてくれた。
「はぁ…癒される…」
私を抱き締めたまま、アイリさんは自分の椅子に座る。
必然的に私はアイリさんを跨ぐ体勢に。
「しばらく居候させてくれる?」
「…居候はさせませんが、同居ならします…」
「可愛いなぁ」
アイリさんはクスクス笑い、私の頬に触れて。
アイリさんのその手に自分の手を重ねて。
「ん…」
アイリさんへと触れるだけのキスをすれば。
「終わり?」
アイリさんは小さく笑み、目を細めた。
「…っ」
「ん?」
あと数ミリで唇が触れる距離まで顔を近づけられて。
「リザ」
名を囁かれれば、もうダメ。
「…っん…っ」
私はアイリさんの唇に、噛み付くような口付けをした。
「んっん…っン…っ」
舌を絡め取られ、厭らしい音が執務室に響く。
深いキスをしている中、アイリさんの綺麗な空色の瞳はずっと私の瞳を捉えていて。
逸らすことが出来ないくらい魅入ってしまう。
粘着質な水音は本当に恥ずかしいけれど。
「ぁ…っんっ」
離れたくない…。
「は…っはぁ…」
「はぁ…」
名残惜しく離れれば、透明の糸が私たちを繋いだ。
「んんん!抱きたいけどそれは夜に取っておくかな」
ちゅ、と額にキスをしてくれて、膝の上から下ろされた。
「糖分は補給したから、仕事に戻りましょうか。」
そう言うアイリさんの軍服の袖を掴む。
「なぁにもう。可愛過ぎない?いつも毅然と振る舞うホークアイ中尉はどこへ行ったのかしら」
なんて、クスクス笑われる…。
「…今夜…うちへ来ていただけますか?」
「あらやだ…初めてリザから誘われたわ…」
アイリさんの忙しさは存じているし、東方司令部へ来るのだって久しぶり。
北へ行ったと聞かされれば気が気じゃなくなってどうにかなりそうになる。
正直、もう限界だったのよ。
アイリさんに会いたくて、触れたくて。
触れて欲しくて。
「…アイリさん」
「同居ならしてくれるんでしょ?」
「…はい」
「じゃあ良い子でお仕事しましょうね」
「…子供扱いしないでください」
「んま、可愛い。本当可愛い」
アイリさんはまたクスクス笑って、時計を見て。
「ほら、もう少しだから。定時まで頑張って?そして一緒に帰りましょう」
「…………わかりました」
私はアイリさんへとキスをし、目を閉じて。
深呼吸を一つしてから目を開いて。
「ではセイフォード少将、また後ほど伺わせていただきますね」
「……すごい豹変ぶり…」
「煩いですよ、セイフォード少将。失礼しました」
敬礼をし、アイリさん… セイフォード少将の執務室を出た。
扉に背中を預け、口を押さえる。
「…一緒に…帰れる…」
どうしよう。
ニヤけてしまう…。
『今夜、激しく抱くから覚悟しといてね?リザ』
「っ!!」
扉の向こうからセイフォード少将の声が聞こえて。
「ん?中尉、どうした?……顔が真っ赤だよ…」
たまたま通りかかった大佐に見られてしまった…。
「何でもありません。大佐、早く仕事に戻ってください。私は今日は定時で帰りますから」
「…セイフォード少将に何か言われたのかね」
「…言われてません」
「今夜は「セクハラで訴えますよ、大佐。」
セクハラ発言をしてくる大佐の前を歩き、息を止めることで感情を制御しようとしたけれど。
「あ、ロイ君。丁度良いタイミングね。ちょっと来てくれる?」
セイフォード少将が執務室から顔を出して、マスタング大佐を引き止めた。
「はい、わかりました」
大佐はセイフォード少将の執務室へと入って行った。
「「……」」
セイフォード少将は中に居る大佐へと視線を巡らせて。
「じゃあね、リザ」
ペロッと舌舐めずりをされたらもう。
「ちょ…っ!!」
慌てて走り寄るも、パタンと扉が閉まってしまった…。
「……っっ」
私は扉に額を付けて。
大佐に聞こえないことを願いながら。
「…信じてますから…アイリさん…」
小さく囁けば。
『好きよ、リザ。』
小さくそう返ってきて。
「…っっ」
額を付けたまま、ズルズルと屈み込んで口を押さえた。
好き。
好きすぎて。
好きすぎて好き。
誰かに見られるかもしれない今の私の状態。
早くいつもの“リザ・ホークアイ”に戻らなければ。
佐官なら私も会議に加われたかもしれない。
尉官であることをここまで悔やんだのは初めてで。
「………」
「…中尉が時計を見まくってる…」
「今日セイフォード少将居るからな」
「今夜はお楽しみ「ハボック少尉?」ひぃ!!」
コソコソと話をしているみたいだけど、ちゃんと聞こえているのよ。
それから。
「ちょっと早いかなー」
「あ、セイフォード少将。お疲れ様です。今日はもう上がりですか?」
「えぇ。今日はもう上がるわ。可愛い恋人さん待ち」
「…っ」
「…やっぱり今夜は「ハボック少尉、この辺見通し良くしてあげましょうか?」……ゴメンナサイ」
「その辺見通し良くなったら、ジャンは即死ね」
「……“ハボック少尉”ですよ… セイフォード少将。ちゃんと階級呼びしてください」
「あらぁ!なに!?嫉妬!?」
「ちがっ!違いますから!!」
…本当…この人には敵わないわ…。
END
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