想いの在処 リザさん百合夢

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数日後、お昼頃。

「…ホークアイ中尉、怒られますよ?」

「…本当ね」

ちょっと困ったことになった。

何に困ったかと言うと。

「…まさか脱走して来るとは思わなかったわ…」

ハヤテ号が今、目の前に居ること。

本人は悪びれもなく尻尾を振っている。

躾はちゃんとしてるんだけど、最近お留守番で寂しかったのかもしれないわね。

「とにかく、オフィスで静かにさせてないと…」

「僕はハヤテ号の巣作って来ますね」

「えぇ、ありがとう」

先に[#dn=2#]少将に報告しておいたほうがいい?

先手先手をとって、そうした方がいいかしら。

でも、脱走しました。なんて言ったら。

躾がなってないみたいね、って返されるだけよね…。

躾はちゃんとしてます。

「ワン!」

「ハヤテ号!?」

突然ハヤテ号が走り出した。

ハヤテ号を追いかける。

どこへ行こうとしてるのよ、もう。

お利口だったハヤテ号が、こんな暴挙に出るなんて。

「ッハヤテ号!待ちなさい…!」

階段を駆け上がり、屋上へ。

普段は閉まっている屋上のドアが、僅かに開いていて。

「?誰かいるのかしら…」

誰か屋上に?

そう思いながら、静かに屋上へ。

「ワン!ワン!」

「!」

ハヤテ号の声のほうへ行くと。

「あ…」

[#dn=2#]少将が居て。

ハヤテ号は[#dn=2#]少将を、尻尾を振り舌を出しながら見上げていて。

「……」

[#dn=2#]少将はそんなハヤテ号へ視線を向ける。

「ぁ…」

[#dn=2#]少将へ声をかけようとした時。




「……ッ!!」



[#dn=2#]少将はハヤテ号へ手を伸ばし、小さな笑みを浮かべて頭を撫でた。


小さな、笑みを、浮かべて。

初めて、笑みを、見た。


この衝撃。

このドキドキ。

どうしよう。



「お留守番で寂しかったのかしら」



え?

私が連れてきたわけじゃないって、わかってくれているの?

「ワン!」

「ん、お利口さん」

動物には優しい方?

私たちには厳しく冷たさすら感じるのに、動物には優しいってなにそのギャップ。

「ワンワン!」

…あ、まずい。

「!」

ハヤテ号が走ってこちらに来た。

「「………」」

[#dn=2#]少将と目が合う。

[#dn=2#]少将はきょとん顔から、徐々に気まずそうな顔になって私から視線を逸らして。

「…犬、連れてこないようにって言ったわよね?」

なんて今、言われても。

「すみません、お留守番で寂しかったみたいで脱走してきてしまって」

もう遅いですよ、少将。

「失礼します」

「!」

私はハヤテ号を抱っこして、[#dn=2#]少将の隣に座る。

「躾はちゃんとしてるんですが、こうしてたまにヤンチャをしてしまうみたいですね」

私も初めて知りました、と。

[#dn=2#]少将に言うと。

「………そう」

[#dn=2#]少将は足を組み、その足に肘を置いて頬杖をついて私とは反対の方向を見た。

「……」

試しにハヤテ号を[#dn=2#]少将に近づけて見ると。

「…ッ!」

ハヤテ号はペロッと[#dn=2#]少将の頬を舐めた。

「「………」」

静寂が続いて。

[#dn=2#]少将が立ち上がって。

「……あなたも早く仕事に戻りなさい」

行ってしまった。

「……」

残された私とハヤテ号。

私はハヤテ号と向き合って。

「よくやったわね、ハヤテ号」

ちゅ、と鼻先にキスをした。

「ワン!」

今日のハヤテ号は本当にお利口さん。

またまた[#dn=2#]少将の知られざる一面を見ることが出来た。

「……綺麗な方よね…」

小さな笑みも。

見ることが出来た。

あの笑みを、ハヤテ号じゃなくて私にも向けて欲しいなんて思ってしまう。

これは恋?

いえ、わからない。

でも、もっと[#dn=2#]少将のことを知りたい。

「ハヤテ号も協力してね?」

「ワン!ワン!」

ハヤテ号の頭を撫でて、私も仕事に戻った。

後に、ハヤテ号は“軍用犬”としていつの間にか登録されていた。

「[#dn=2#]少将、ありがとうございます」

「何のことかしら」

[#dn=2#]少将の計らいに、お礼を言いました。

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