想いの在処 リザさん百合夢

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それから数日経って。

「そのコート、ホークアイ中尉には大きくないっスか?」

「大きい方が暖かいのよ」

未だコートを返していない私。

「前からそんなサイズのコート着てましたっけ?」

「…新しく注文したの」

「へー。そうなんスね」

ハボック少尉に言われたけれど、なんとか誤魔化したと同時に。

「マスタング大佐いる?」

[#dn=2#]少将がオフィスに入って来た。

「![#dn=2#]少将、お疲れ様です」

「マスタング大佐はまだ出勤されてないっス」

「そう。出勤してきたら私の執務室に来るよう伝えてちょうだい。」

「わかりました、伝えておきます」

[#dn=2#]少将は変わらず、今まで通りの対応で。

黒いコートを羽織っていた。

もしかして…新しく注文したのかしら…。

[#dn=2#]少将に包まれている感じがするからなかなか返せないでいたら…。

「それ、あなたには大きいんじゃない?」

[#dn=2#]少将は私を見て、ニヤニヤ笑ってそう言った。

「…大きい方が暖かいので…」

「ふーん?まぁ、暖かいならいいけど」

…あとでお礼と、新しいコート代を支払わないと。

今はハボック少尉が居るから口に出来ないけど、貰えたことに嬉しくて頬が緩みそうになるのを必死に耐えた。





「お金?いらないわよ。それよりも使い古したコートでいいの?あれだったらこっちのコートあげるけど」

「いえ、支払わせてください。あのコートで大丈夫です。」

[#dn=2#]少将の執務室で、コーヒーをお持ちした時にコート代について話す。

使い古したコートのほうがいい。

あのコートのほうが…[#dn=2#]少将に抱き締められている感じがするから…。

というか、デスクの上にあった本がなくなってる。

片付けた?

もう読み終えたものだったのかしら。

なんて思いながら。

「軍用コートは安いものではないんですよ?ちゃんと受け取ってください」

「あなたのお給料と、私のお給料。どのくらいの差があると思う?」

「…それは…想像を絶するほどの違いがあるんでしょうけれど…」

コート代を支払うくらいのお金はあるのに、受け取ってもらえない。

そこに。

コンコン
『マスタング大佐です』

マスタング大佐が出勤されてきた。

「入って。ほらほら、仕事に戻りなさい?」

「失礼します。!ホークアイ中尉、いたのか」

「あ、はい…。コーヒーをお持ちしました」

マスタング大佐が入ってきて、[#dn=2#]少将の前で敬礼をした。

「…では、失礼します」

「えぇ」

私も敬礼して、執務室を出た。

…[#dn=2#]少将とマスタング大佐、何の話をするのか内容が少しだけ気になる。

だからと言って聞き耳は立てたりするわけはないけどね。

「…現金がダメならお菓子でも買ってこようかしら」

それなら受け取ってくださるわよね。

なんて考えながら。

「明日にでも買ってきましょう」

私はオフィスへと戻った。








私は忘れていた。








[#dn=2#]少将は、グラマン中将の代わりで東方司令部にいるということを。


東方司令部に来れば、いつでも[#dn=2#]少将に会えると思っていた。






その日は、突然やってきた。





翌日のこと。

「や、みんな。迷惑をかけたね」

「「「!!グラマン中将!!」」」

オフィスに入ってきたのは、グラマン中将で。

「明日から復帰するから、またよろしくね」

「「「はっ」」」

みんなで敬礼をするけど、そこに[#dn=2#]少将の姿はなくて。

「グラマン中将、[#dn=2#]少将はどこに?」

ハボック少尉がそう聞くと、グラマン中将は顎に手を添えて。

「最後の挨拶くらいしたらどうじゃろうか、って言ったんじゃが。そこまで子供じゃありませんって言われてのう」

もう、東方司令部には来ない、と。

そう言った。


嘘、待って。

え?

もう来ない?


「そうなんスか…。[#dn=2#]少将も変わって話しやすくなってたので、ちょっと残念スね」

「だなー。[#dn=2#]少将が居る間、大佐がサボらなかったのはでかいよな」

「…私だってやる時はやるんだよ」

もう会えないの?

「…あ、あの… [#dn=4#]、[#dn=2#]少将は…今…どこに…」

私の問いに、みんな私を見る。

だからデスクの上の本がなかった。

引き継ぎもいつの間にか終えていて。

グラマン中将が復帰する日も告げないで。

急に居なくなるなんて。

「イーストシティに居た際、ずっとホテル住まいだったらしくてね。その代金を支払った後、中央司令部に戻るみたいじゃよ」

つまり。

今日。

今日、もう中央司令部に戻ってしまう。

「ホテル住まいって…やはり将官は違うな」

「この三ヶ月間の料金っていくらっスかねぇ」

そんなのどうでもいい。

今この瞬間にも。

[#dn=2#]少将は汽車に乗ってしまっているかもしれない。

「ホークアイ中尉?どうしたんだね」

マスタング大佐が私の顔を見た時に。

「ホークアイ中尉」

グラマン中将に呼ばれて、グラマン中将を見ると。



「[#dn=2#]君に渡し忘れた書類、届けてくれないかのう」



白い封筒を掲げた。



ああ。

おじいさん。

ありがとう。



「わかりました…!必ず届けます…っ」



グラマン中将から奪うように封筒を取り、黒いコートを持って走った。

待って、[#dn=2#]少将。

今行くから。

待ってください。


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