想いの在処 リザさん百合夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
'
「俺、セイフォード少将に告ろうかな」
「あ?やめとけ相手にすらされねぇよ」
「わかんねぇだろ!」
ある日。
ハボック少尉が何を思ったのか、突然言った。
「…どうしてまた告白なんてしようと思ったの?」
…ブレダ少尉の言う通りだとは思うけれど。
でももし…試しに交際してみる…みたいなことになったら…。
「セイフォード少将最近優しいし」
「確かに変わったよな。でもそれはお前に対してだけじゃねぇだろ」
「ちゃんと会話してくれるし」
「前は相槌と無視だったのにな。でも今は誰にでもそうだよ」
「……良い女だし…」
「……わかる」
「何を言ってるのよ…」
ハボック少尉とブレダ少尉が握手をして頷き合っている。
「とにかく、上司をそんな目で見るのは良くないわ」
「「はい…」」
………まぁ、私も見てるけど。
私の場合は、ハボック少尉たち以上に会話もしてもらえてる。
お昼だって一緒に食べているし。
冗談だって言い合えてるし、未だ誰も見ていない笑みだって見てる。
…レベッカには見られてるけど。
「…でも一応、言ってみるかな」
「億が一にもねぇって」
……セイフォード少将にさり気なく伺ってみようかしら。
ハボック少尉のことをどう思っているのかを。
オフィスにあまり来ないから接点がないでしょうけど…。
「え?ハボック少尉?」
「はい」
セイフォード少将の執務室。
コーヒーをお持ちしたついでに伺ってみた。
…ついでにね、ついでに。
「なんでまた、ハボック少尉のことを?」
セイフォード少将は手を止めて、コーヒーカップに口付ける。
「大した理由ではないんですが、東方司令部に来て随分経ちますからね。そろそろ印象が変わって見える頃かなと」
…上手い理由だと我ながら思う。
「そうねぇ」
来た当初はきっと、だらし無い部下と思っていたと思う。
「最初はだらし無い人間なのかと思っていたけど、遅刻するわけでもなくサボるわけでもない。真面目に仕事をする人間なんだって思ったわね」
やっぱり。
あまり接点がないように見えたけど、ちゃんとハボック少尉のことを見ていたのね。
……ハボック少尉のことだけかしら。
「ブレダ少尉はどうです?」
「ブレダ少尉は、前にファルマン准尉と将棋をしてたのを見たんだけど、頭の切れるファルマン准尉を負かすということは戦略を練ることに長けているのかしらね」
…ブレダ少尉やファルマン准尉まで。
「フュリー曹長は…」
「彼は一見おっちょこちょいに見えるけど、機械系に強いみたいね。前に電話を修理しているのを見かけたわ」
………。
「…では、マスタング大佐はどうですか?」
「マスタング大佐は最初から優秀だとわかってたわよ」
え?
最初から?
「最初からですか?」
セイフォード少将は書類に視線を落として。
「えぇ。彼の国家試験には立ち合ったし、マスタング大佐は知らないだろうけど、大総統に“焔”の二つ名を提案したのは私だから」
え…。
嘘…。
「ほ、本当…ですか…?」
“焔の錬金術師”は、セイフォード少将が名付けた?
「マスタング大佐の錬金術は正しく“焔”だったからね。」
…それは。
なんだか…。
いえ、いいの。
いいのよ、別に。
でも…少しだけ…。
嫉妬をしてしまう。
だって、そんなに前からマスタング大佐のことを知っていたってことだから…。
私の存在なんて、3ヶ月前にここに来た時に知ったでしょうし…。
「…私は…どうでしょうか…?」
私のことはどう思ってるのか。
踏み込みすぎて、鬱陶しく思われていないだろうか…。
セイフォード少将はチラッと私を見て。
小さく笑みを浮かべて。
「言うことを聞かない駄々っ子ちゃん、かしら」
そう仰った。
みんなとは違う印象。
「駄々っ子ちゃんって…子供ですか…」
嬉しい。
「あら、違った?命令違反の常習犯だし、間違ってないと思うけど」
「それはあなたが無理をしている場合のみですからね」
「命令違反は否定しないのね」
セイフォード少将はクスクス笑って。
「あなたの狙撃技術は凄いと思ってる。現に2ヶ月前に救われたじゃない?」
「2ヶ月前…トレインジャック、ですか…?」
「そう、あのトレインジャックの件」
2ヶ月前の、トレインジャック事件の話を持ち出した。
「あのトレインジャックで、私は“赤の組織”の最後の一人にヘッドショットされたでしょ?」
「はい…でもそれは、セイフォード少将は氷の錬金術で防いだじゃありませんか」
あの判断力は本当に凄かった。
「あの一撃を防げたのは、直前にあなたにあなたが狙撃をする場合の場所を聞いていたからよ」
じゃなければ、あの一撃で私は死んでいた。と。
セイフォード少将は言った。
「だから狙われたのがマスタング大佐じゃなくて私でよかった」
と、コーヒーを飲んだ。
「…そんな…よかったなんてことないですから…」
あの時。
セイフォード少将の体が傾いた時。
セイフォード少将の足元に血液が滴った時。
ゾッとした。
死が頭に過ぎった。
「あの狙撃技術もかなりのものよね。たった一発の弾丸が頭に当たるんだもの」
なんてクスクス笑ってるけど。
「笑い事じゃないですよ!セイフォード少将!」
笑い事なんかじゃない。
「!」
私の大きな声に、セイフォード少将は驚いた顔をした。
「ご自分で仰ったように、振り返るのがあと一秒遅かったらあなたは死んでいたんです!あなたを死に至らしめる一撃になっていたかもしれないことを忘れないでください!」
拳を握り、そう叫ぶ。
軍人たる者、死なないで欲しい、傷つかないで欲しいと思うのは甘えかもしれない。
セイフォード少将は後ろから指示だけする人間とは違い、前に立って私たちと一緒に行動する人間だから。
セイフォード少将は笑みを浮かべ、目を閉じて。
「まぁ確かに、死にたくないし、傷つきたくもない。でもね?軍人たる者、何時如何なる時に何が起こるかわからない。だから常に覚悟をしておかないとダメなのよ」
あの時、あの瞬間。
セイフォード少将は死を覚悟した。
瞬時の判断で氷を錬成し、威力を和らげたとしても。
ライフル銃の一撃の重さを和らげ切ることが出来るのか。
あの一瞬で色んなことを考えた。
失いたくないのに。
「私はね?今この瞬間も死を覚悟して、この階級に居てこの椅子に座っているわ。だからこそ、笑って話せるの」
死がすぐそこにあったとしても、動揺はしない。
恐怖心は判断を鈍らせ、動揺は決断を揺るがせる。
真っ直ぐ揺るぎないその眼差しは、確固たる強さを秘めていて。
「ですが…」
それでもやっぱり。
「…失いたくないものは失いたくないんです」
「あなたは意外と甘ちゃんねぇ」
なんて、クスクス笑われた。
「まぁ、死なないように努力はするわ」
セイフォード少将は肩を竦めて、小さく笑った。
「約束しましたよ」
「約束なの?」
「約束です」
失いたくないものは失いたくない。
どんな状況下でも生きることを諦めず、最後の最期まで足掻いて生きていて欲しい。
「ハボック少尉たちの印象の話から、だいぶ話がズレたわね」
「本当ですね」
そう言って、私たちは笑い合った。
.
「俺、セイフォード少将に告ろうかな」
「あ?やめとけ相手にすらされねぇよ」
「わかんねぇだろ!」
ある日。
ハボック少尉が何を思ったのか、突然言った。
「…どうしてまた告白なんてしようと思ったの?」
…ブレダ少尉の言う通りだとは思うけれど。
でももし…試しに交際してみる…みたいなことになったら…。
「セイフォード少将最近優しいし」
「確かに変わったよな。でもそれはお前に対してだけじゃねぇだろ」
「ちゃんと会話してくれるし」
「前は相槌と無視だったのにな。でも今は誰にでもそうだよ」
「……良い女だし…」
「……わかる」
「何を言ってるのよ…」
ハボック少尉とブレダ少尉が握手をして頷き合っている。
「とにかく、上司をそんな目で見るのは良くないわ」
「「はい…」」
………まぁ、私も見てるけど。
私の場合は、ハボック少尉たち以上に会話もしてもらえてる。
お昼だって一緒に食べているし。
冗談だって言い合えてるし、未だ誰も見ていない笑みだって見てる。
…レベッカには見られてるけど。
「…でも一応、言ってみるかな」
「億が一にもねぇって」
……セイフォード少将にさり気なく伺ってみようかしら。
ハボック少尉のことをどう思っているのかを。
オフィスにあまり来ないから接点がないでしょうけど…。
「え?ハボック少尉?」
「はい」
セイフォード少将の執務室。
コーヒーをお持ちしたついでに伺ってみた。
…ついでにね、ついでに。
「なんでまた、ハボック少尉のことを?」
セイフォード少将は手を止めて、コーヒーカップに口付ける。
「大した理由ではないんですが、東方司令部に来て随分経ちますからね。そろそろ印象が変わって見える頃かなと」
…上手い理由だと我ながら思う。
「そうねぇ」
来た当初はきっと、だらし無い部下と思っていたと思う。
「最初はだらし無い人間なのかと思っていたけど、遅刻するわけでもなくサボるわけでもない。真面目に仕事をする人間なんだって思ったわね」
やっぱり。
あまり接点がないように見えたけど、ちゃんとハボック少尉のことを見ていたのね。
……ハボック少尉のことだけかしら。
「ブレダ少尉はどうです?」
「ブレダ少尉は、前にファルマン准尉と将棋をしてたのを見たんだけど、頭の切れるファルマン准尉を負かすということは戦略を練ることに長けているのかしらね」
…ブレダ少尉やファルマン准尉まで。
「フュリー曹長は…」
「彼は一見おっちょこちょいに見えるけど、機械系に強いみたいね。前に電話を修理しているのを見かけたわ」
………。
「…では、マスタング大佐はどうですか?」
「マスタング大佐は最初から優秀だとわかってたわよ」
え?
最初から?
「最初からですか?」
セイフォード少将は書類に視線を落として。
「えぇ。彼の国家試験には立ち合ったし、マスタング大佐は知らないだろうけど、大総統に“焔”の二つ名を提案したのは私だから」
え…。
嘘…。
「ほ、本当…ですか…?」
“焔の錬金術師”は、セイフォード少将が名付けた?
「マスタング大佐の錬金術は正しく“焔”だったからね。」
…それは。
なんだか…。
いえ、いいの。
いいのよ、別に。
でも…少しだけ…。
嫉妬をしてしまう。
だって、そんなに前からマスタング大佐のことを知っていたってことだから…。
私の存在なんて、3ヶ月前にここに来た時に知ったでしょうし…。
「…私は…どうでしょうか…?」
私のことはどう思ってるのか。
踏み込みすぎて、鬱陶しく思われていないだろうか…。
セイフォード少将はチラッと私を見て。
小さく笑みを浮かべて。
「言うことを聞かない駄々っ子ちゃん、かしら」
そう仰った。
みんなとは違う印象。
「駄々っ子ちゃんって…子供ですか…」
嬉しい。
「あら、違った?命令違反の常習犯だし、間違ってないと思うけど」
「それはあなたが無理をしている場合のみですからね」
「命令違反は否定しないのね」
セイフォード少将はクスクス笑って。
「あなたの狙撃技術は凄いと思ってる。現に2ヶ月前に救われたじゃない?」
「2ヶ月前…トレインジャック、ですか…?」
「そう、あのトレインジャックの件」
2ヶ月前の、トレインジャック事件の話を持ち出した。
「あのトレインジャックで、私は“赤の組織”の最後の一人にヘッドショットされたでしょ?」
「はい…でもそれは、セイフォード少将は氷の錬金術で防いだじゃありませんか」
あの判断力は本当に凄かった。
「あの一撃を防げたのは、直前にあなたにあなたが狙撃をする場合の場所を聞いていたからよ」
じゃなければ、あの一撃で私は死んでいた。と。
セイフォード少将は言った。
「だから狙われたのがマスタング大佐じゃなくて私でよかった」
と、コーヒーを飲んだ。
「…そんな…よかったなんてことないですから…」
あの時。
セイフォード少将の体が傾いた時。
セイフォード少将の足元に血液が滴った時。
ゾッとした。
死が頭に過ぎった。
「あの狙撃技術もかなりのものよね。たった一発の弾丸が頭に当たるんだもの」
なんてクスクス笑ってるけど。
「笑い事じゃないですよ!セイフォード少将!」
笑い事なんかじゃない。
「!」
私の大きな声に、セイフォード少将は驚いた顔をした。
「ご自分で仰ったように、振り返るのがあと一秒遅かったらあなたは死んでいたんです!あなたを死に至らしめる一撃になっていたかもしれないことを忘れないでください!」
拳を握り、そう叫ぶ。
軍人たる者、死なないで欲しい、傷つかないで欲しいと思うのは甘えかもしれない。
セイフォード少将は後ろから指示だけする人間とは違い、前に立って私たちと一緒に行動する人間だから。
セイフォード少将は笑みを浮かべ、目を閉じて。
「まぁ確かに、死にたくないし、傷つきたくもない。でもね?軍人たる者、何時如何なる時に何が起こるかわからない。だから常に覚悟をしておかないとダメなのよ」
あの時、あの瞬間。
セイフォード少将は死を覚悟した。
瞬時の判断で氷を錬成し、威力を和らげたとしても。
ライフル銃の一撃の重さを和らげ切ることが出来るのか。
あの一瞬で色んなことを考えた。
失いたくないのに。
「私はね?今この瞬間も死を覚悟して、この階級に居てこの椅子に座っているわ。だからこそ、笑って話せるの」
死がすぐそこにあったとしても、動揺はしない。
恐怖心は判断を鈍らせ、動揺は決断を揺るがせる。
真っ直ぐ揺るぎないその眼差しは、確固たる強さを秘めていて。
「ですが…」
それでもやっぱり。
「…失いたくないものは失いたくないんです」
「あなたは意外と甘ちゃんねぇ」
なんて、クスクス笑われた。
「まぁ、死なないように努力はするわ」
セイフォード少将は肩を竦めて、小さく笑った。
「約束しましたよ」
「約束なの?」
「約束です」
失いたくないものは失いたくない。
どんな状況下でも生きることを諦めず、最後の最期まで足掻いて生きていて欲しい。
「ハボック少尉たちの印象の話から、だいぶ話がズレたわね」
「本当ですね」
そう言って、私たちは笑い合った。
.