想いの在処 リザさん百合夢

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それから。

「た、大変だみんな…」

「あん?どうしたよ、ハボック少尉」

「何があったの?」

「…[#dn=2#]少将に“ありがとう”って言われた…」

[#dn=2#]少将が見るからに変わり始めたのは。

「ああ?んな馬鹿なことあるかよ。あの人がお礼なんて言うわけねぇだろ」

「いやマジだよ…。お前もそれ持って行ってみろ…」

「……お、おお」



数分後。



「……やべぇ…“ありがとう”って言われた…」

「だろ!?やべぇだろ!?」

「…あなたたちは[#dn=2#]少将を何だと思っていたのよ」

お礼を言われたくらいでそんな驚くなんて、失礼極まりない。

………私も最初は驚いたけれど。

「だって…[#dn=2#]少将っスよ…?」

「まったくもう…」

「でも、来た時とは打って変わって変わりましたよ…[#dn=2#]少将は…」

確かに東方司令部に来た時と今とじゃ違うかもしれない。

それでも。

「心境の変化があったのよ、きっと」

優しくなってきてるのが嬉しい。

悪評だった評判も、徐々に変わって。

“実は優しい?”

と、思われ始めた。

…私としては、[#dn=2#]少将の優しさに気付かれたくないのだけどね。





「みんな[#dn=2#]少将の変わり様に驚いてるわよね」

食堂で、レベッカと話す。

「えぇ。あんなに冷たかったのに、なんて驚かれてるみたいね」

レベッカも[#dn=2#]少将の変化に驚いていて。

「何があったのか気にならない?」

…いえ、気になるもならないも。

「ならないわよ」

知っているから気にならない。

「えー。つまらなーい」

ブーブー文句を言うレベッカ。

「つまるつまらないの問題じゃないでしょ?」

「[#dn=2#]少将を変えた人気になるじゃない!」

…目の前にいるわよ、レベッカ。

そう、[#dn=2#]少将を変えたのは私。

だからきっと、私は誰よりも一歩前にいる。

………。

……誰と張り合ってるのよ、私は…。

「ねぇねぇ、さっき清掃員に聞いたんだけどさ」

「なになに?」

不意に後ろの席から聞こえて来た会話に。



「[#dn=2#]少将のデスクの横にあるゴミ箱の中、栄養ドリンクの空瓶だらけだったみたいよ?」



レベッカと顔を見合わせる。

え?

栄養ドリンクの…空瓶…だらけ…?

「ご飯とかまともに食べてないんじゃないの?」

「食堂で見たことないものねー。でも栄養ドリンクだけってことはないでしょ」

確かに…。

食堂で[#dn=2#]少将の姿は見たことがない…。

「…まさか、ね」

「…えぇ、まさかそんな…ね…」

でもそんな…まさかそんな…。

ちょっと確認して来ようかしら…。





コンコン
「ホークアイ中尉です」

『入っていいわよ』

「失礼します」

執務室に入って、[#dn=2#]少将へと向き直った時に。

「どうしたの?」

丁度、栄養ドリンクを飲んで空瓶を捨てていた。

「少将、昼食は摂りましたか?」

「お昼?いいえ、食べてないわ」

「摂らないのですか?」

「えぇ、時間ないから」

私は眉間に皺を寄せる。

「昨日、何食べました?」

「なに?何を知りたいの?」

[#dn=2#]少将も眉間に皺を寄せる。

ゴミ箱へ視線を落とせば、さっき清掃員が片付けたはずなのにすでに3つ空瓶が入っていた。

「[#dn=2#]少将」

「なに?」

「お昼ご飯、食べてください」

「えぇ、時間出来たらね」

私も[#dn=2#]少将も、眉間に皺を寄せる。

「……わかりました」

「えぇ」

私は敬礼し、執務室を出て。




数分後。



「……ちょっと待ってちょうだい」

「なんですか」

[#dn=2#]少将の執務室へ昼食を届けた。

「なんですか、じゃないわよ。これ、いらないんだけど」

グッと昼食が乗ったトレーを押す。

「摂られてませんよね?食べてください」

「時間がないと言ったはずよ」

「時間がない、と仰っている間に食べられますので」

「……片付けて」

「従い兼ねます」

「命令」

「従い兼ねます」

譲らない。

私も[#dn=2#]少将も、ジト目で睨み合う。

「あなたはグラマン中将の代わりでここに居るんですよ?倒れられては周りが困ると思いませんか?」

「…倒れないから大丈夫よ」

「何を根拠に仰ってますか」

またジト目で睨み合って。

[#dn=2#]少将はため息を零して。


「………負けたわ」



両手を上げた。

「こうまで命令違反されたのは初めてよ」

「こうまで命令違反をしたのは初めてです」

[#dn=2#]少将はクスクスと笑って。



「あなたにはなんだか敵わないわね」



そう言った。

「…っ」

またその笑顔。

不意打ちのようなその笑みは狡いです。

「これのお金払うわ」

「…い、いえ、大丈夫です」

私は再び敬礼をして。

「…あとで食器を取りに来ますね」

「えぇ、ありがとう」

執務室を出た。

『…久々に食べるなぁ』

え?

久々に?

ガチャ
「久々って何ですか。」

「!まだ居たの?まともに食べるのは久しぶりなの」

「よくそんなことで今まで倒れませんでしたね…」

[#dn=2#]少将はフォークを持って。



「中央司令部では、何度か倒れたわ」



なんて、ソーセージを食べながら軽く言った。

「……明日から昼食お誘いしますので」

「え?いえ、誘わなくていいわよ。将官の私が食堂に居たら気を使うでしょ?」

そんなことを考えて、食堂に来なかったのかしら…。

「わかりました、では明日からこちらに確実にお持ちします」

「……断っても持って来そうだから、わかったと言っておくわね」

[#dn=2#]少将も段々と私の性格をわかってきたようね。

「では、失礼します」

「えぇ」

今度こそ本当に執務室を出て。

ちゃんと会話をしてくれることに、嬉しさを隠せずに。

「ふふっ」

私は口に手を当てて、小さく笑った。


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