想いの在処 リザさん百合夢

'

翌朝。

「あ、おはようございます」

寝室から出れば、すでに[#dn=2#]少将は起床していて。

起床どころか、ピシッと軍服も纏っていたわ…。

そんな遅い目覚めだったかと思うくらい。

「…おはよう」

[#dn=2#]少将はどこか気まずそうに。

「その…」

「はい?」

申し訳なさそうに。




「申し訳ないけれど、冷蔵庫を見させてもらって朝食作っておいたから…」




よかったらどうぞ、と。

美味しそうな朝食が並んでいた。

「あ、ありがとうございます」

[#dn=2#]少将の…手作り…よね…?

「……」

で、また気まずそうに視線を彷徨わせて。

「…じゃあ、もう行くから」

「あ、はい。え?もう出勤で…す………か…」

言い終える前に、[#dn=2#]少将は出て行ってしまった。

「相当気まずかったみたいね」

私は別に構わないんだけど。

もう、[#dn=2#]少将に冷たくされたって気にならない。

ツンデレ?くらいにしか思わないし。

「ワン!」

「ダメよ、ハヤテ号。これは…私の……」

と、ハヤテ号のご飯の器を見ると、何やら食べた跡が。

……まさかハヤテ号にご飯まであげて、しかもトイレも綺麗にしてくれているなんて。

「…律儀な人ね。」

なんだか想像すると、可愛らしくて笑ってしまう。

「ただ、そうね」

ハヤテ号のご飯の時間までまだ早いから。

今日はちょっとズラす必要があるわね。






「おはようございます」

「!おあ…おはよう」

出勤して、丁度通りかかった[#dn=2#]少将へ二度目のご挨拶をする。

そしたら驚いて、噛んでいた。

なんだか挙動不審で。

「ふふっ」

やっぱり可愛い。

「……なに」

不機嫌な顔になった。

「いえ、挙動が不審ですよ」

「……」

昨日のことなら誰にも言わないから、心配しなくてもいいのに。

「今朝の朝食、美味しかったです」

「……そう」

「ありがとうございました」

「……いえ」

相槌だけだけど、普通にしてくれる。

え?普通じゃない?

普通なのよ、これが、この人の。

今までは2回目の相槌なんてなくて、無視だったんだから。

「じゃあ…」

「あ、はい。後ほどコーヒーをお持ちしますね」

[#dn=2#]少将はチラッと私を見て。

「……よろしく」

小さく呟き、そう言った。

この態度の変化。

周りから見れば、まだまだ態度が悪く見えるかもしれない。

でも。

大きな変化よ、これは。

ちょっとずつ変わってきてくれてる。

ちょっとずつ私たちへ寄り添ってきてくれてる。

「中尉、今日は機嫌がいいね?」

マスタング大佐にそう言われて。

「そうですね。[#dn=2#]少将がいらしてから大佐のサボり回数が激減したので嬉しいです」

「……」

「確かに減ったっスね」

「サボったらすぐ軍議かけられそうだもんな」

「[#dn=2#]少将、グラマン中将より甘くないですからね…」

「その辺は[#dn=2#]少将が来てくださってありがたいですな」

「…私の味方はいないのかね」

なんて、みんなで笑う。

いつか[#dn=2#]少将も、この中に入れればいいのに。なんて思って。

「ほら、仕事を。[#dn=2#]少将はもう仕事を始めてるわよ?」

「「「「はーい」」」」

「…グラマン中将カムバック…」

「大佐もふざけてないで仕事してください」

いつかみんなも、[#dn=2#]少将は可愛い方だと気付いたらいいな、なんて思いながら。

私は今日の仕事に取り掛かった。


.
10/19ページ
スキ