3章
ルピの案内で、俺たちは滝の方へ向かって歩き出した。
「兄貴の屋敷はこの滝を上った先だ。一本道だから迷わねえよ」
さっきまでの墓地と違って、道はわかりやすい。
霧もさっきより薄くなり、代わりにごうごうと水が落ちる音が少しずつ大きくなっていく。
滝と岩の色がきれいな群青だ。見ててうっとりするが、今はそれどころではない。
「…あれ?」
一歩、二歩と進んだところで、スタラが足を止めた。
「どした、スタラ」
「これ…」
スタラが指さした足元には、真っ赤なブラッドアップルが一個、ころんと転がっていた。
表面には、鋭い歯形がくっきりと残っている。
「…かじりかけ」
「お前、さっき食ったはずじゃなかったか?」
俺がルピの方を見ると、当の本人は全力で首を横に振った。
「しらねえっての!さっきの墓地で食ったやつは全部腹に入ったぞ!こんなとこに捨てねえって!」
「でもルピの噛み方っぽい…」
「お前、噛み方で人のこと判断すんな!」
スタラがじーっとそれを見つめる。
「これたべてもいい?」
「ダメよスタラちゃん!危なそうなやつはやめときましょ!」
ノオに止められて、スタラは名残惜しそうに後にした。
それから、少し歩くたびに、同じようなブラッドアップルがぽつぽつと落ちているのが見つかった。
丸ごとだったり、半分かじられていたり、ぐちゃっと踏み潰されて果汁が地面を赤く染めていたり。
「…これ、完全に“辿ってきてください”って足跡っぽくないか?」
「パンくずの代わりにブラッドアップル置いていくなんて最低…」
マジカルが顔をしかめる。
「なあルピ。マジでお前じゃねえんだな?」
「しつけえな。俺がこんな勿体ねえことするかよ。いっとくが、俺はきれいに残さず食べるから!ほら、みろ!芯のとこ大分残ってんじゃねえか! それにここらのブラッドアップルはちゃんと加工して売るもんだぞ。 こういう食い散らかしは、ゾンビのポリシーに反すんだよ」
珍しく、ルピの声には怒りが混じっていた。
さらに進むと、ブラッドアップルだけじゃなく、木の幹にも異変が見え始めた。
幹にぶつけられた跡。焦げ跡。ところどころ、葉が黒く焼け落ちている。
「これ…炎魔法の跡じゃないですか?」
ノオが小さくつぶやく。
「そちらで炎魔法を使えるのは…ルピ様、ですよね?」
パルの視線がルピへ向く。
「だからやってねえっての!!誰だよ、俺の火の真似してんのは!」
ルピががなり立てた、そのときだった。
「…おい」
ラルドが立ち止まり、前方を指さした。
滝の手前、少し開けた広場になった場所。その真ん中に一人の“ルピ”が立っていた。
ボロボロの服。少し顔色の悪い肌。頭のドクロ。
どう見ても、さっき一緒に歩いてきたルピと同じ姿だ。
その“ルピ”は、足もとに積まれたブラッドアップルの山に向かって、炎を浴びせていた。
甘い匂いと、焦げた匂いが入り混じって、むっとした空気が辺りを満たしている。
「…」
後ろにいる本物ルピが、みるみるうちに無言でキレていくのがわかった。
「…あ?」
ひゅっと風が吹いた気がした。
「テメェええええええええええええ!!!」
ルピが飛び出した。
「“売り物用は食うな”って兄貴に言われてんだよ俺は!!焼き払うとかいちばんやっちゃいけねえことしてんじゃねえ!!誰が許可したってんだコラァ!!」
「ル、ルピさん待って!一人で突っ込むのは…」
ノオの制止も聞かず、ルピは“もう一人の自分”の胸ぐらを掴んだ。
その瞬間、偽ルピがゆっくりとこちらを振り向く。
「…あ?」
顔も、声も、ルピそっくりだった。
「お前、誰の顔パクってんだゴラァ!!!」
ゴスッ!!!
ルピの拳がストレートに入る。
偽ルピの顔が、ぐにゃりと歪んだ…かと思えば、一瞬だけ、別の何かのシルエットに変わりかけて、また元のルピの顔に戻った。
「今の、見た?」
「変化の魔法だわ!…変身が崩れかけた、ってとこかしらね」
マジカルが目を細める。
「ローザ…」
「変化の魔法が使えるカンコンソーサイ、いるよ一人…」
「カンコンソーサイ…?」
パルが険しい顔をする。
「詳しいことはあとで話すね!」
偽ルピは口の端を吊り上げた。
「へえ。さすが“本人”が殴ると、変装も持たねえか。でも、別にいーだろ? どうせ全部、あんたのせいってことになってんだし?」
「はあああああ???」
ルピの怒りは完全に振り切れた。
「おいダルク。悪いけどこいつ、ちょっとボコるの手伝ってくんね?」
「俺も混ぜてくれよ。これは正当防衛と森の平和のためだし」
ラルドがニヤっと笑う。
「しょうがねえな…」
俺は剣を抜いた。
「元からそのつもりだったしな。行くぞ!」
滝の轟音の中、“ルピ”同士がぶつかり合い、俺たちもその輪に飛び込んでいった。
偽物の方は、どうやら特技までは真似できないらしい。
炎魔法も、ゾンビっぽいツメや齧る攻撃も一切なく、武器を振り回した単調な攻撃ばかりだ。
「てめえええ!!俺に化けた罪はでかい!!化けの皮、剝いでやる!!」
ルピが肩で息をしながら、ぐっと片手を突き出した。
「ちょ、ちょっとルピさん、まさか」
「見とけ!これが本物の炎魔法じゃあ!!」
どごォンッ!!
特大の炎が偽ルピめがけて一直線に走る。
熱気が一気にぶわっと押し寄せ、思わず俺は腕で顔をかばった。
「おい待てって!!ここら周囲の木も燃やす気か!!」
「わーー!髪焦げるぅ!!」
「メイク溶ける…」
マジカルとアオイが同時に悲鳴を上げる。
偽ルピはぎりぎりのところで身をひねって炎を避けた。
炎の奔流は、そのまま背後の滝へ…
ジュウウウウウウウッ……
さっきまでごうごうと響いていた滝の音に、派手な蒸発音が上乗せされる。
水しぶきと白い蒸気があたりに立ちこめ、一瞬あたりの景色が真っ白になった。
「…流石に維持したまま戦うのはきついのう」
白い靄の中から、偽ルピの口調が変わった声が聞こえた。
「なんだ、口調変わったぞ」
「ローザ、今の…」
「うん。ローザも聞き覚えある声」
蒸気が風に流され、ゆっくりと晴れていく。
その中心に、燃えかすみたいな黒い煙が渦を巻いていた。
「バレたからには仕方あるまい。儂じゃよ」
煙がぱっと弾ける。
そこに現れたのは、緑の和服をひらりと揺らした男だった。
妖狐の耳のような形をした髪飾り。黒い長髪は後ろで一つに束ねている。
盲目なのか目隠しをしているみたいで、口元には悪だくみの笑み。
「あーお前!!!」
思わず叫んだ、が。
「…誰だっけ」
口から出た言葉はそれだった。
間抜けなBGMが流れた気がしたのは、多分気のせいじゃない。
「小童ども!!儂とは会っておろう!忘れたとは情けない!!」
男が盛大に怒鳴る。
「ええと…影が薄かったから…待ってろ…思い出すから…あ、あの時ダンに引っ掛けられてたカンコンソーサイ!」
光の神殿を飛び出して、ラルドの船に乗り込む時。
一瞬ゲンからダンに戻った時、足止めしてくれたダンの罠に頭から引っかかってたやつ。
あの情けない姿だけは、妙に記憶に残っていた。
「そんな風に思われてたのはちと癪じゃが…まあ合っておる」
男が肩をすくめた、そのとき。
「ヴェルだね」
ローザが小さくつぶやいた。
「ローザか。久しいというか…儂らと会うのはほんとに“初めまして”に近かったのう」
ヴェルと呼ばれた男が、ローザにだけ意味ありげな視線を向ける。
「大方、ダルクの邪魔しにきたとこだね」
「そちもずいぶんと適応しているようじゃの。じゃが…ジャロが倒されたが、まだ儂ら四天王がおることを忘れるな」
「四天王…」
俺が思わずオウム返しすると、ローザが俺の袖を引っぱった。
「戦闘型の中でもトップ4のカンコンソーサイのこと。ネーロは特別枠だから違う。ブラン、アラン、ロッソ、そして今のヴェルがそうだよ」
「トップ4にしては、さっき結構ボコられてたけどな」
ラルドが小声でツッコむ。
「聞こえておるぞ、小童ゴースト」
ヴェルがじろりと睨む。
「これもガキ扱い?立派な髭生えたおっさんだけどなー」
「ぐぬぬ…もっと戦いたいが…この続きは、もっと上でやろうかの?」
ヴェルはくるりと背を向け、ひらひらと袖を揺らした。
「儂らは待っておるぞ。“紺碧館”の上でな。ダルク=ルーナ。そちの力と…」
ちらりと、ローザを見る。
「“裏切り者の変わりよう”を、この目で確かめてやろう」
そう言って、ヴェルは掌をひと振りした。
地面に散らばっていたブラッドアップルの皮や葉っぱが、風に巻き上げられ、竜巻のように彼の身体を包み込む。
「待て、逃げんな!!」
ルピが追いかけようとしたが、葉っぱの渦はふっと霧に溶けるように消えた。
そこには、焼け焦げた地面と、いくつかの踏みつぶされたブラッドアップルの跡だけが残っていた。
「ブラッドアップル騒動は、あのヴェルってカンコンソーサイの仕業っぽいな」
俺が息を整えながら言うと、パルが頷いた。
「黒幕は、ほぼ見えましたわね。ですが、アンバー様はまだ誤解しておられる」
「ルピの姿借りて、好き放題やってたわけだもんね…」
マジカルが眉をひそめる。
「テメェ、今度会ったらマジでタダじゃおかねえからな…!」
ルピが拳をぎゅっと握りしめる。
「早いとこ紺碧館に急ごう。サフィが危ない」
俺がそう言うと、ノオも強く頷いた。
「はい。パルさん、ルピさん、案内お願いできますか?」
「もちろんですわ。アンバー様とサフィ様が、本当に刃を交える前に必ず止めましょう」
「兄貴の屋敷はもうすぐだ。滝の上まで、一気に駆け上がるぞ!」
ごうごうと鳴る群青の滝を見上げながら、俺たちは足を速めた。
本当の決戦は、この先の紺碧館で待っている。
「兄貴の屋敷はこの滝を上った先だ。一本道だから迷わねえよ」
さっきまでの墓地と違って、道はわかりやすい。
霧もさっきより薄くなり、代わりにごうごうと水が落ちる音が少しずつ大きくなっていく。
滝と岩の色がきれいな群青だ。見ててうっとりするが、今はそれどころではない。
「…あれ?」
一歩、二歩と進んだところで、スタラが足を止めた。
「どした、スタラ」
「これ…」
スタラが指さした足元には、真っ赤なブラッドアップルが一個、ころんと転がっていた。
表面には、鋭い歯形がくっきりと残っている。
「…かじりかけ」
「お前、さっき食ったはずじゃなかったか?」
俺がルピの方を見ると、当の本人は全力で首を横に振った。
「しらねえっての!さっきの墓地で食ったやつは全部腹に入ったぞ!こんなとこに捨てねえって!」
「でもルピの噛み方っぽい…」
「お前、噛み方で人のこと判断すんな!」
スタラがじーっとそれを見つめる。
「これたべてもいい?」
「ダメよスタラちゃん!危なそうなやつはやめときましょ!」
ノオに止められて、スタラは名残惜しそうに後にした。
それから、少し歩くたびに、同じようなブラッドアップルがぽつぽつと落ちているのが見つかった。
丸ごとだったり、半分かじられていたり、ぐちゃっと踏み潰されて果汁が地面を赤く染めていたり。
「…これ、完全に“辿ってきてください”って足跡っぽくないか?」
「パンくずの代わりにブラッドアップル置いていくなんて最低…」
マジカルが顔をしかめる。
「なあルピ。マジでお前じゃねえんだな?」
「しつけえな。俺がこんな勿体ねえことするかよ。いっとくが、俺はきれいに残さず食べるから!ほら、みろ!芯のとこ大分残ってんじゃねえか! それにここらのブラッドアップルはちゃんと加工して売るもんだぞ。 こういう食い散らかしは、ゾンビのポリシーに反すんだよ」
珍しく、ルピの声には怒りが混じっていた。
さらに進むと、ブラッドアップルだけじゃなく、木の幹にも異変が見え始めた。
幹にぶつけられた跡。焦げ跡。ところどころ、葉が黒く焼け落ちている。
「これ…炎魔法の跡じゃないですか?」
ノオが小さくつぶやく。
「そちらで炎魔法を使えるのは…ルピ様、ですよね?」
パルの視線がルピへ向く。
「だからやってねえっての!!誰だよ、俺の火の真似してんのは!」
ルピががなり立てた、そのときだった。
「…おい」
ラルドが立ち止まり、前方を指さした。
滝の手前、少し開けた広場になった場所。その真ん中に一人の“ルピ”が立っていた。
ボロボロの服。少し顔色の悪い肌。頭のドクロ。
どう見ても、さっき一緒に歩いてきたルピと同じ姿だ。
その“ルピ”は、足もとに積まれたブラッドアップルの山に向かって、炎を浴びせていた。
甘い匂いと、焦げた匂いが入り混じって、むっとした空気が辺りを満たしている。
「…」
後ろにいる本物ルピが、みるみるうちに無言でキレていくのがわかった。
「…あ?」
ひゅっと風が吹いた気がした。
「テメェええええええええええええ!!!」
ルピが飛び出した。
「“売り物用は食うな”って兄貴に言われてんだよ俺は!!焼き払うとかいちばんやっちゃいけねえことしてんじゃねえ!!誰が許可したってんだコラァ!!」
「ル、ルピさん待って!一人で突っ込むのは…」
ノオの制止も聞かず、ルピは“もう一人の自分”の胸ぐらを掴んだ。
その瞬間、偽ルピがゆっくりとこちらを振り向く。
「…あ?」
顔も、声も、ルピそっくりだった。
「お前、誰の顔パクってんだゴラァ!!!」
ゴスッ!!!
ルピの拳がストレートに入る。
偽ルピの顔が、ぐにゃりと歪んだ…かと思えば、一瞬だけ、別の何かのシルエットに変わりかけて、また元のルピの顔に戻った。
「今の、見た?」
「変化の魔法だわ!…変身が崩れかけた、ってとこかしらね」
マジカルが目を細める。
「ローザ…」
「変化の魔法が使えるカンコンソーサイ、いるよ一人…」
「カンコンソーサイ…?」
パルが険しい顔をする。
「詳しいことはあとで話すね!」
偽ルピは口の端を吊り上げた。
「へえ。さすが“本人”が殴ると、変装も持たねえか。でも、別にいーだろ? どうせ全部、あんたのせいってことになってんだし?」
「はあああああ???」
ルピの怒りは完全に振り切れた。
「おいダルク。悪いけどこいつ、ちょっとボコるの手伝ってくんね?」
「俺も混ぜてくれよ。これは正当防衛と森の平和のためだし」
ラルドがニヤっと笑う。
「しょうがねえな…」
俺は剣を抜いた。
「元からそのつもりだったしな。行くぞ!」
滝の轟音の中、“ルピ”同士がぶつかり合い、俺たちもその輪に飛び込んでいった。
偽物の方は、どうやら特技までは真似できないらしい。
炎魔法も、ゾンビっぽいツメや齧る攻撃も一切なく、武器を振り回した単調な攻撃ばかりだ。
「てめえええ!!俺に化けた罪はでかい!!化けの皮、剝いでやる!!」
ルピが肩で息をしながら、ぐっと片手を突き出した。
「ちょ、ちょっとルピさん、まさか」
「見とけ!これが本物の炎魔法じゃあ!!」
どごォンッ!!
特大の炎が偽ルピめがけて一直線に走る。
熱気が一気にぶわっと押し寄せ、思わず俺は腕で顔をかばった。
「おい待てって!!ここら周囲の木も燃やす気か!!」
「わーー!髪焦げるぅ!!」
「メイク溶ける…」
マジカルとアオイが同時に悲鳴を上げる。
偽ルピはぎりぎりのところで身をひねって炎を避けた。
炎の奔流は、そのまま背後の滝へ…
ジュウウウウウウウッ……
さっきまでごうごうと響いていた滝の音に、派手な蒸発音が上乗せされる。
水しぶきと白い蒸気があたりに立ちこめ、一瞬あたりの景色が真っ白になった。
「…流石に維持したまま戦うのはきついのう」
白い靄の中から、偽ルピの口調が変わった声が聞こえた。
「なんだ、口調変わったぞ」
「ローザ、今の…」
「うん。ローザも聞き覚えある声」
蒸気が風に流され、ゆっくりと晴れていく。
その中心に、燃えかすみたいな黒い煙が渦を巻いていた。
「バレたからには仕方あるまい。儂じゃよ」
煙がぱっと弾ける。
そこに現れたのは、緑の和服をひらりと揺らした男だった。
妖狐の耳のような形をした髪飾り。黒い長髪は後ろで一つに束ねている。
盲目なのか目隠しをしているみたいで、口元には悪だくみの笑み。
「あーお前!!!」
思わず叫んだ、が。
「…誰だっけ」
口から出た言葉はそれだった。
間抜けなBGMが流れた気がしたのは、多分気のせいじゃない。
「小童ども!!儂とは会っておろう!忘れたとは情けない!!」
男が盛大に怒鳴る。
「ええと…影が薄かったから…待ってろ…思い出すから…あ、あの時ダンに引っ掛けられてたカンコンソーサイ!」
光の神殿を飛び出して、ラルドの船に乗り込む時。
一瞬ゲンからダンに戻った時、足止めしてくれたダンの罠に頭から引っかかってたやつ。
あの情けない姿だけは、妙に記憶に残っていた。
「そんな風に思われてたのはちと癪じゃが…まあ合っておる」
男が肩をすくめた、そのとき。
「ヴェルだね」
ローザが小さくつぶやいた。
「ローザか。久しいというか…儂らと会うのはほんとに“初めまして”に近かったのう」
ヴェルと呼ばれた男が、ローザにだけ意味ありげな視線を向ける。
「大方、ダルクの邪魔しにきたとこだね」
「そちもずいぶんと適応しているようじゃの。じゃが…ジャロが倒されたが、まだ儂ら四天王がおることを忘れるな」
「四天王…」
俺が思わずオウム返しすると、ローザが俺の袖を引っぱった。
「戦闘型の中でもトップ4のカンコンソーサイのこと。ネーロは特別枠だから違う。ブラン、アラン、ロッソ、そして今のヴェルがそうだよ」
「トップ4にしては、さっき結構ボコられてたけどな」
ラルドが小声でツッコむ。
「聞こえておるぞ、小童ゴースト」
ヴェルがじろりと睨む。
「これもガキ扱い?立派な髭生えたおっさんだけどなー」
「ぐぬぬ…もっと戦いたいが…この続きは、もっと上でやろうかの?」
ヴェルはくるりと背を向け、ひらひらと袖を揺らした。
「儂らは待っておるぞ。“紺碧館”の上でな。ダルク=ルーナ。そちの力と…」
ちらりと、ローザを見る。
「“裏切り者の変わりよう”を、この目で確かめてやろう」
そう言って、ヴェルは掌をひと振りした。
地面に散らばっていたブラッドアップルの皮や葉っぱが、風に巻き上げられ、竜巻のように彼の身体を包み込む。
「待て、逃げんな!!」
ルピが追いかけようとしたが、葉っぱの渦はふっと霧に溶けるように消えた。
そこには、焼け焦げた地面と、いくつかの踏みつぶされたブラッドアップルの跡だけが残っていた。
「ブラッドアップル騒動は、あのヴェルってカンコンソーサイの仕業っぽいな」
俺が息を整えながら言うと、パルが頷いた。
「黒幕は、ほぼ見えましたわね。ですが、アンバー様はまだ誤解しておられる」
「ルピの姿借りて、好き放題やってたわけだもんね…」
マジカルが眉をひそめる。
「テメェ、今度会ったらマジでタダじゃおかねえからな…!」
ルピが拳をぎゅっと握りしめる。
「早いとこ紺碧館に急ごう。サフィが危ない」
俺がそう言うと、ノオも強く頷いた。
「はい。パルさん、ルピさん、案内お願いできますか?」
「もちろんですわ。アンバー様とサフィ様が、本当に刃を交える前に必ず止めましょう」
「兄貴の屋敷はもうすぐだ。滝の上まで、一気に駆け上がるぞ!」
ごうごうと鳴る群青の滝を見上げながら、俺たちは足を速めた。
本当の決戦は、この先の紺碧館で待っている。
