1章
「君はまさか…ネーロ!?」
アランが、ノアさん…いや、その中にいる“何か”に向かって叫んだ。
さっきジールさんに撃たれた手を押さえて、痛そうにしている。弾は貫通しておらず、出血もない。ただ、ひどく腫れている。
銃撃受けてそれだけで済むってどういうことだよ。
「ネーロ。確か君は、ブランと共に破壊されたはず。何故ここにいるんだい?」
『今はそっちの“主”と呼んでるのと同じことや。俺も復活してるで? 今はちゃんと取引して、この兄ちゃんの中、お邪魔させてもろてる。あっちのボスと違ってな?』
「ブラン…」
ジールさんが何か言いたそうに唇を噛んだが、言葉にはしなかった。
「そちのおなごは何者じゃ? 儂らは知らぬぞ」
ヴェルが、ローザを指さす。
『お前ら、自分の兄妹も知らんの?カンコンソーサイはお前らだけやない。そのボスに言っとけ。カンコンソーサイは、今この時代に“全員”集まっとるとな!』
なんと、ネーロと名乗るやつも、ローザも、あいつらの仲間、カンコンソーサイの一員らしい。
けど、どう見ても今は敵同士で、対立してる側に見える。
『俺の目的はただ一つ。お前らカンコンソーサイを“全部”回収すること! 例え破壊されても、俺は地の果てまで追いかけるでよ…覚悟せいや!!』
「あはは…参ったねえ」
アランの額に、冷や汗が伝う。
「あの野郎…壊れたポンコツを直しやがったか…!」
ゲンはヴェルに支えられながら、悔しそうに歯噛みしている。
『身体亡くしてまでここまで逃げて、ご苦労なこった。俺を直してくれた“主”は、お前のこと許してへん。ええ土産に、お前も連れてったるわ』
極道みたいな威圧感に、カンコンソーサイの連中は一斉に顔を強張らせた。
だが、ゲンだけは違った。
「あいつにことごとく邪魔されて……また時代を追いかけてこれか? はは……笑わせんな。ここまで来て引き下がれるかよ!」
“あいつ”って誰だ?
ゲンと同じ立場の奴が、まだ他にもいるってことか?
でももし本当に連れてかれたら…ダンごと、連れてかれるってことだよな…?
『覚悟は出来たか?』
「ま、待ってくれ! ダンは連れてかんでくれ!」
気づけば、俺は叫んでいた。
「ノアさんじゃない、あんたは知らないと思うが…ダンは俺の親友なんだよ!」
「…そうだよな。俺たち、親友だもんな」
ゲンは、ダンの口調で、俺の言葉に同意する。
違う。俺は、お前のことを言ったんじゃない。
「だからこそ、お前も一緒に連れていきたかったがな…」
「くっ…」
『お前、どっちの味方につくつもりやねん…』
ネーロの声が、呆れたように漏れる。
「あんた達、絶対逃がさないって言ったわよね?」
不意に、軽い女の声が響いた。
直後、壁の一部が爆ぜ、爆風が神殿の中に吹き込む。
ローザがふっとんだ爆風をまともに受け、抱えていた精霊石の半分が宙に飛び散った。
石を覆っていたコーティングも、熱でとろけてしまう。
「ナイスタイミングだ、ロッソ」
『しまった…こいつの存在、忘れとったわ』
現れたのは、赤いドレスを身にまとった女、ロッソと呼ばれた人物だった。
こいつもカンコンソーサイか?ローザはかすり傷で済んだようだが、飛び散った精霊石の半分は、ロッソにかっさらわれてしまった。
「アタシ抜きで何やってるの? ズルいわ、アタシも交ぜてよ」
ロッソの周りには、ゆらゆらと炎の残滓が揺れている。
炎魔法の使い手か?ふと奥を見ると、さっきの魔法が神殿の壁や柱に燃え移っていた。
やばい。このままだと、本格的に火事になる。
「あいつ…また…!」
ジールさんが、警戒するようにロッソを睨む。
『ジールとノアのこと、追いかけてきたんか?懲りないやっちゃ…』
ネーロの声が、急にかすれた。
途端に、ノアさんの膝がガクンと落ちる。
「ネーロ!?」
『す、すまん…ローザ、時間切れや…』
「クソっ…」
今の声はノアさん本人だった。ネーロじゃない。
ネーロになっているあいだは麻痺していたのかもしれないが、戻った途端、右半身の火傷と失われた腕の痛みが一気に襲ってきたようだ。顔をしかめて、息も荒い。
「あら、貴方…あの時の殿方ね?」
ロッソがとろんとした目でノアさんを見つめる。
「アタシの炎を受け止めた…全力の貴方に、すごくときめいたわ…」
「いや、明らかにアタシ目がけて撃ってたろ!」
ジールさんが間髪入れずツッコむ。
「あら、あんたもいたの。あんたには用はないわよ」
「てめえ!!」
ジールさん、ロッソに対してめちゃくちゃ怒っている。
その態度の違いでよく分かった。ノアさんの火傷は間違いなくロッソの仕業だ。
「はっ、なんだ。イキってたくせに、まだ“不完全”じゃねえかよ!」
ゲンが鼻で笑う。
やばい。ネーロが消えたことで、一気に形勢が逆転してしまった。
「精霊石が取られたなら、取り返せばいい」
ゲンが指を鳴らす。
「ここにいる奴ら、全員抹殺しろ。特にネーロとローザっていう“新入り”をな!」
空気が、びりっとしびれるように張りつめる。
どうする? 考えろ、考えろ俺…!
アランが、ノアさん…いや、その中にいる“何か”に向かって叫んだ。
さっきジールさんに撃たれた手を押さえて、痛そうにしている。弾は貫通しておらず、出血もない。ただ、ひどく腫れている。
銃撃受けてそれだけで済むってどういうことだよ。
「ネーロ。確か君は、ブランと共に破壊されたはず。何故ここにいるんだい?」
『今はそっちの“主”と呼んでるのと同じことや。俺も復活してるで? 今はちゃんと取引して、この兄ちゃんの中、お邪魔させてもろてる。あっちのボスと違ってな?』
「ブラン…」
ジールさんが何か言いたそうに唇を噛んだが、言葉にはしなかった。
「そちのおなごは何者じゃ? 儂らは知らぬぞ」
ヴェルが、ローザを指さす。
『お前ら、自分の兄妹も知らんの?カンコンソーサイはお前らだけやない。そのボスに言っとけ。カンコンソーサイは、今この時代に“全員”集まっとるとな!』
なんと、ネーロと名乗るやつも、ローザも、あいつらの仲間、カンコンソーサイの一員らしい。
けど、どう見ても今は敵同士で、対立してる側に見える。
『俺の目的はただ一つ。お前らカンコンソーサイを“全部”回収すること! 例え破壊されても、俺は地の果てまで追いかけるでよ…覚悟せいや!!』
「あはは…参ったねえ」
アランの額に、冷や汗が伝う。
「あの野郎…壊れたポンコツを直しやがったか…!」
ゲンはヴェルに支えられながら、悔しそうに歯噛みしている。
『身体亡くしてまでここまで逃げて、ご苦労なこった。俺を直してくれた“主”は、お前のこと許してへん。ええ土産に、お前も連れてったるわ』
極道みたいな威圧感に、カンコンソーサイの連中は一斉に顔を強張らせた。
だが、ゲンだけは違った。
「あいつにことごとく邪魔されて……また時代を追いかけてこれか? はは……笑わせんな。ここまで来て引き下がれるかよ!」
“あいつ”って誰だ?
ゲンと同じ立場の奴が、まだ他にもいるってことか?
でももし本当に連れてかれたら…ダンごと、連れてかれるってことだよな…?
『覚悟は出来たか?』
「ま、待ってくれ! ダンは連れてかんでくれ!」
気づけば、俺は叫んでいた。
「ノアさんじゃない、あんたは知らないと思うが…ダンは俺の親友なんだよ!」
「…そうだよな。俺たち、親友だもんな」
ゲンは、ダンの口調で、俺の言葉に同意する。
違う。俺は、お前のことを言ったんじゃない。
「だからこそ、お前も一緒に連れていきたかったがな…」
「くっ…」
『お前、どっちの味方につくつもりやねん…』
ネーロの声が、呆れたように漏れる。
「あんた達、絶対逃がさないって言ったわよね?」
不意に、軽い女の声が響いた。
直後、壁の一部が爆ぜ、爆風が神殿の中に吹き込む。
ローザがふっとんだ爆風をまともに受け、抱えていた精霊石の半分が宙に飛び散った。
石を覆っていたコーティングも、熱でとろけてしまう。
「ナイスタイミングだ、ロッソ」
『しまった…こいつの存在、忘れとったわ』
現れたのは、赤いドレスを身にまとった女、ロッソと呼ばれた人物だった。
こいつもカンコンソーサイか?ローザはかすり傷で済んだようだが、飛び散った精霊石の半分は、ロッソにかっさらわれてしまった。
「アタシ抜きで何やってるの? ズルいわ、アタシも交ぜてよ」
ロッソの周りには、ゆらゆらと炎の残滓が揺れている。
炎魔法の使い手か?ふと奥を見ると、さっきの魔法が神殿の壁や柱に燃え移っていた。
やばい。このままだと、本格的に火事になる。
「あいつ…また…!」
ジールさんが、警戒するようにロッソを睨む。
『ジールとノアのこと、追いかけてきたんか?懲りないやっちゃ…』
ネーロの声が、急にかすれた。
途端に、ノアさんの膝がガクンと落ちる。
「ネーロ!?」
『す、すまん…ローザ、時間切れや…』
「クソっ…」
今の声はノアさん本人だった。ネーロじゃない。
ネーロになっているあいだは麻痺していたのかもしれないが、戻った途端、右半身の火傷と失われた腕の痛みが一気に襲ってきたようだ。顔をしかめて、息も荒い。
「あら、貴方…あの時の殿方ね?」
ロッソがとろんとした目でノアさんを見つめる。
「アタシの炎を受け止めた…全力の貴方に、すごくときめいたわ…」
「いや、明らかにアタシ目がけて撃ってたろ!」
ジールさんが間髪入れずツッコむ。
「あら、あんたもいたの。あんたには用はないわよ」
「てめえ!!」
ジールさん、ロッソに対してめちゃくちゃ怒っている。
その態度の違いでよく分かった。ノアさんの火傷は間違いなくロッソの仕業だ。
「はっ、なんだ。イキってたくせに、まだ“不完全”じゃねえかよ!」
ゲンが鼻で笑う。
やばい。ネーロが消えたことで、一気に形勢が逆転してしまった。
「精霊石が取られたなら、取り返せばいい」
ゲンが指を鳴らす。
「ここにいる奴ら、全員抹殺しろ。特にネーロとローザっていう“新入り”をな!」
空気が、びりっとしびれるように張りつめる。
どうする? 考えろ、考えろ俺…!
