友達以上 ~ヒロインSide~
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そうこうしてる内に、午後の授業の予鈴が鳴った。
余韻に浸っていてまだ食べ終わっていなかった私は、焦ってお弁当を掻き込む。
ふと、隣にいるヒル魔くんがこちらを見ていることに気付いた。
他にも何か食べたかったのかな?
急いでいたので特に反応することもせず、私はようやくお弁当を食べ終えて手早く片付けた。
待ってくれていたのか、ヒル魔くんも一緒に立ち上がる。
「ケケケ、ごっそさん」
「私の方こそ、ごちそうさま。本当に美味しかった!」
「気が向いたら伝えといてやるよ」
美味しいご飯に嬉しい言葉、これで午後の授業も頑張れる……と、鼻歌でも歌おうかとしたときに、ふと気付く。
あれ?
さっきの、もしかして…………間接キス?
いくつかの疑わしいシーンを思い出すと、段々と顔が熱くなってきた。
意識するやいなや、より記憶が鮮明に浮かび上がってくる。
そうだ、完全に無意識だったけど、あれは間接キスだった。
私も気付かなかったし、ヒル魔くんも何も言わないからスルーしちゃってたけど……。
私は反射的に顔を手で覆う。
ヒル魔くんが私の前にいてくれて良かった。
そうでなければ、赤く染まっているであろう自分の顔を見られていたかもしれない。
ヒル魔くんと……間接キス……。
私は彼を異性として意識したことはない。
一緒にお昼ご飯を食べたり、よく話したりはするけど、それは友達としてだ。
漫画みたいにときめくことなんて、一度もなかった。
ましてや友達以上になんて、今まで考えてもみなかったし、今もやっぱり考えられない。
でも……
「…………嬉しかった、のかも……?」
私は彼に聞こえないように、ポツリと呟いた。
恥ずかしいような、困ったような、信じられないような。
いまいち自分の気持ちがわからない。
そんな複雑な思いを抱えながら、私は誰もいない後ろを振り返った。
いつもと変わらない、古汚くてだだっ広い屋上……のはずなのに。
なぜか今は、キラキラ輝いていて、どこもかしこも鮮明な色に見える。
コンクリートの地面も、フェンスも、この風も、さっきまでとは違う。
どうしてだろう。
なにか、自分にとって特別な場所になったみたいだ。
ヒル魔くんといたから?
ううん、いつもここで一緒なんだから、いつもと変わらなかったはず。
何が変わったの?
もしかして、私が…………
「沙樹、早く行かねえと遅れんぞ!」
ヒル魔くんの一声で我に返り、今行く、と声を張り上げた。
いつもと違う景色に理由がわからないまま、けれど確かに心に温かいものを感じて、彼の後を追い掛ける。
ふわりと柔らかくそよいだ風が、私を優しく包んでくれたような気がした。
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