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文久三年のあたしの誕生日、土方さんはあたしを【鍵屋良房(鍵善)】に連れて行ってくれた。
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のぞみ
土方さぁん、
土方さんのお誕生日て、いつなんですぅ? -
土方
ああ?
【たんじょうび】だぁ? -
のぞみ
はい、生まれはった日ぃです。
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土方
そんな事を聞いてどうするんだ。
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のぞみ
あきませんか?
聞いたら。 -
土方
駄目って事ァねぇが。
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のぞみ
ほな、いつなんです?
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土方
ちっ!
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盛大にもったいをつけて、土方さんは生まれた日を教えてくれた。
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のぞみ
えっ、5月5日?
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土方
そうだ。
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のぞみ
あっははは!
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土方
何が、【あはは】だ。
お前ぇが聞いてきたから、わざわざ教えてやったのに。 -
のぞみ
【こどもの日ぃ】とか、なんか笑けますし!
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土方
なんだ、【子供の日ぃ】ってぇのは。
端午の節句じゃねぇか。
男子らしくて、いいじゃねぇか。 -
元治元年五月
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のぞみ
はぁっぴばーすでー、とぅーゆーう♪
はっぴばーすで、とぅーゆーう♪
はぁっぴばぁすでい、
でぃあ 土方さぁ~~~ん♪
はぁっぴばぁすでー、とぅゆーーーーう♪♪ -
歌いながら、障子を引き開けた。
予想通り、土方さんは眉をしかめてこちらを睨みつけている。
が、お膳の上にのったものを見たとたん、土方さんの顔が引きつった。
………いや、きっと喜んでいるのだ。
ツンデレの土方さんは、素直に喜びの感情を表すことが苦手である。 -
のぞみ
お誕生日おめでとうございまーす!
これ、土方さんのために心を込めてつくったんですよ。 -
土方
い、一体何なんだ。
その膳の上にのっかった妙な物体は! -
のぞみ
なに、ってバースデーケーキです!
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のぞみ
島田さんが、あんこ作ってくれはったんです!
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土方
げっっ!!
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のぞみ
「げっ」て、なんなんです、「げっ!」ってぇ!
島田さんが心を込めて、あずきを炊いてくれはったんですよぉ?
ちなみに、イチゴがなかったので、色合い的にちょうどいい梅干しをあしらってみました。 -
土方
はっ?
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のぞみ
甘いもんと、塩辛いもんで、ちょうどええでしょう?
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もちろん、このあと、あたしと島田さんでこの大きな【おはぎ(ぼた餅)】を食べた。
梅干しは、土方さんのご飯にのせてあげた。
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