迦楼羅先生×寂雷先生
休日の当番医の日、救急車で運ばれたのは暴れる数名の若い男女。
目は朦朧とし、涎を垂らし、こちらの言葉など聞く耳ない。
緊急処置として、身体拘束を行った迦楼羅と寂雷。
言葉にならない喚き声、呻き声をあげている姿に、2人は互いを見る。(迦楼羅はいつも通りの目隠れで分かりにくくはあるが、寂雷には分かる。)
「違法マイクによる作用ですね。」
「寂雷ちゃんのアビリティで治せるかい?」
「試してみましょう。」
寂雷は、ヒプノシスマイクを起動した。
「あなた達のそのつらさ、その怒り、その悲しみ、どうか教えてください。まるで雨ざらしのようなその荒ぶる心、どうか安らかになりますように。がむしゃらな心に、私の声は、届きますか……?」
ぽわ……寂雷の「Medication」が発動した──が、弾かれるように、バチンッ!!と大きな音がした。
「ゔがぁああ!!」
「ゔぎぃいい!!」
「アアアアア!!!」
「キィイイイイ!!!」
若い男女達は、拘束具の中で悶えながら、叫ぶ。
「アビリティが、弾かれた?」
「……んー……俺のも試してみっかねぇ。」
迦楼羅もヒプノシスマイクを起動。
クロアゲハチョウを白衣に取り付け、ラップを紡ぐ。
「泣きゃあいい、喚けゃあいい、だが、足掻くんだ。今の君達は、まるで奈落の底に落ちたような絶望を、味わっているんだろうなぁ。這い上がれ、立ち上がれ、そして、戻っておいで。怖くないよ、大丈夫だよ、僕達が、崩壊した君達のその心を、紡ぎ直そう。」
ぽわ……迦楼羅のアビリティが、発動した。
「あぅ。」
「うー。」
「んま。」
「だーだ。」
今度は、まるで赤子のようになる若い男女達。
「お、このアビリティは効いたみたいだな。とりあえず、暴れることはなくなったが、念の為に、まだ拘束はしておこう。」
アビリティの効果を維持するために、迦楼羅はヒプノシスマイクを起動したまま、男女達の頭を優しく撫でる。
キャッキャ、嬉しそうにする男女達。
「そのアビリティは?」
初めて見るアビリティに、寂雷が問う。
「『Innocent』の意味、知ってるかい?」
「『罪がない』や『無実の』といった、罪への無罪、あとは『無邪気な』や『純真な』に『純粋な』などの性格や見た目、少しネガティブな意味では『世間知らずな』や『うぶ』といった意味がありますね。」
「赤子って、まさにその通りじゃねえかい?」
「……つまり、赤子への『退行』?」
「ピンポーン。赤ちゃんに、罪があるわけねえだろう?」
「確かに。」
宙には、寂雷の神々しいスピーカーと、迦楼羅の「地獄の門」の悍ましいスピーカーが浮いている。
寂雷はヒプノシスマイクを一旦切ったのでスピーカーも消えたが、迦楼羅はマイクを切れない。
切ってしまうと、今発動している「Innocent」のアビリティが消えてしまうからだ。
「寂雷ちゃん、任せてもいいかい?」
「はい。【麻天狼】として、一二三くんと独歩くんの力も拝借します。」
…
寂雷は病院の外に出て、一二三と独歩を待つ。
「お待たせしました、先生。」
「すっ、すみませんっ、お待たせしてっ。」
一二三は、ジャケットを羽織っているのでホストモード。
独歩は、会社は休みのはずなのに、いつも通りのスーツ姿。(休日出勤をしていたのだ。)
「来てくれてありがとう2人共。緊急で、違法マイクの出どころを掴みたいんだ。被害者は若い男女4名。暴れたり、叫び声をあげたりしていたから私の『Medication』で癒そうとしたけど、弾かれてしまってね……。」
「「先生のアビリティを弾く!?」」
「巫先生のアビリティで事なきを得て今は大人しくなったけど、マイクのバッテリー時間や、巫先生への精神負荷もあります。犯人が持っているであろう『元』を、断ちましょう。」
「「はい!」」
…
一二三は、ホストとして「子猫ちゃん」達から情報を聞き出す。
独歩は、その情報を元にSNSを漁り、違法マイクに繋がりそうなルートを探す。
すると、こんな話が出てきた。
「あのね、こんなDMが届いたの。」
とある「子猫ちゃん」が見せてくれたのは、怪しいメールだった。
[神のマイクを浴びると、日頃の鬱憤なんて一瞬で消えてしまいます。あなたも神のマイクを体験してみませんか?]
「ウチは怖くて無視したんだけど……その、友達がさ、なんか、気になっちゃったみたいで……で、友達と、連絡取れなくて……。」
「ありがとう、子猫ちゃん。そのお友達も、必ず【麻天狼】が救うさ!」
「ひふみん……!ありがとう!お願いね!」
「よし、アカウントが特定出来たぞ!」
「流石だね、独歩くん。」
独歩のスマートフォンの画面には、どこか神々しさを感じさせるようなホームページが映っており、大きなフォントで[神はあなたの『甘え』を、お赦しになります。是非、お話をしませんか?]
そして、スクロールの一番下には電話番号が表示されていた。
「私がかけよう。」
寂雷がスマートフォンを取り出し、その電話番号に電話をかける。
ワンコールで、繋がった。
しかしそれは生の声ではなく、機械音声であった。
〈神の『お告げ』をお聴きしたい方は、以下の住所へ、お越しください──。〉
マップのアプリを開いた独歩が、場所を特定する。
示された場所は、寂雷達が今いる場所の、ビルとビルの間の一番奥だった。
…
コツコツ……奥の奥へと進むと、プレハブ小屋のような建物がポツンと一軒あった。
寂雷が近づくよりも先に、扉が開く。
黒いフード付きマントの集団が、寂雷、一二三、独歩を囲む。
「『ご丁寧なお出迎え』ですね。」
「フフフ、神宮寺寂雷、そして【麻天狼】……動くと思っていたよ……さぁ!!『神のお言葉』を聴きたまえ!!」
キィイイイン──!
耳を劈くようなノイズが発動され、寂雷達は顔を歪める。
『無茶は、しなさんなよ。ジジイのことは気にすんな。寂雷ちゃん達が無事じゃねえと、俺は「死んだも同然」だからよ。分かったかい?』
戦っているのは、自分達だけではない。
ずっとヒプノシスマイクを起動したまま、患者達に寄り添っている迦楼羅の姿を、寂雷は思い出す。
「そのノイズで【麻天狼】が屈すると思わないでいただきたい!」
「その通り!僕達は王者として!シンジュクを代表するメンバーとして!シンジュクを守る為に戦うさ!」
「たっ、多勢に無勢って思うなよ!おっ、おおっ、俺だってやる時はやるんだからなぁ!!」
…
リリックの応酬が、始まった。
ライムとフロウで、その者の魂に訴える寂雷のラップに、敵側は倒れていく。
しかし、寂雷の精神負荷も大きい。
なにしろ敵側の全員が、寂雷を狙っているからだ。
「先生ばかりを狙うなんて、僕と独歩くんが見えていないようだね。行こう、独歩くん!」
「ブチかましてやるぅうう!!」
一二三と独歩も、寂雷のカバーに入る。
(迦楼羅さん……迦楼羅さん……あと、あと少しです……おつらいでしょうが、あと少しだけ、お時間をください……!)
寂雷は、膝を折らずに立ち向かった。
…
時間にして1時間は経過。
とうとう敵側の、リーダー格のような人物が持つマイクが弾け飛び、その者も、倒れた。
寂雷達の周りにはフード姿の者達が、ぐったりとして倒れている。
「ぉっ、おのっ、れっ!わた、しっ、こそっ、『神』なの、にっ!!」
這いつくばるリーダー格は、己を「神」としているようだ。
「『神』ならば、あのような苦しみは、与えません……。……人間が『神』を名乗るなど、烏滸がましいにも、程がありますよ……。」
…
〈『元』を断ちました。ヒプノシスマイクを切っても大丈夫ですよ。〉
「おー、思いの外、早かったなぁ。ジジイの血管がブチブチ千切れる前で助かったわ。……無茶、してねえかい?」
〈大丈夫です。一二三くんと、独歩くんのおかげですから。〉
「なら良し。んじゃ、マイクを切ろうかねぇ。」
カチッ……。
…
違法マイク集団は、警察に引き渡された。
被害者の男女達は念の為に1日入院させ、様子を見る。
迦楼羅と寂雷も、様子観察を行う為に夜になっても病院に残っている。
「巫先生……いえ、迦楼羅さん、どこか、具合が悪いとかは──。」
数部屋ある当直室のひと部屋には、迦楼羅と寂雷が泊まっている。
ソファの端に座る寂雷の、スラックス越しの美脚を膝枕にして、迦楼羅は長い脚をはみ出して仰向けになっている。
「だぁーいじょーぶ。」
「……膝枕で精神が回復するというのは、少々、疑問ではありますけどね。」
「てか、重くないかい?」
「生きている心地良さですよ。迦楼羅さんこそ、こんな肉付きの悪い膝枕で、よろしいんですか?」
「ん?極上の枕だぜ?」
「ふふっ、そうですか。」
寂雷のしなやかな左手が、迦楼羅の目を隠している前髪を掻き上げた。
綺麗なアースアイを、なぜ見せないのだろう?
寂雷は、浮かんだ素朴な疑問を、口に出す。
「いつから、前髪で目を隠すようになったんですか?」
「んー、ガキん頃から。俺、一卵性双生児でよ──まぁ、区別、的な?」
「迦楼羅さんは、お兄さん?弟さん?」
「兄ではある。弟は神社の宮司で、結婚して、養子が3人いる。」
「3人共?」
「同性婚なんだわ。だから施設から、ちなみに三つ子を引き取って、親してる。」
(……会ってみたいな……。)
「会うかい?」
「よろしいんですか?」
「ん、寂雷ちゃんのこと、紹介したかったしな。」
「ふふ、楽しみです。」
次の休みの、予定が出来た。
…
目は朦朧とし、涎を垂らし、こちらの言葉など聞く耳ない。
緊急処置として、身体拘束を行った迦楼羅と寂雷。
言葉にならない喚き声、呻き声をあげている姿に、2人は互いを見る。(迦楼羅はいつも通りの目隠れで分かりにくくはあるが、寂雷には分かる。)
「違法マイクによる作用ですね。」
「寂雷ちゃんのアビリティで治せるかい?」
「試してみましょう。」
寂雷は、ヒプノシスマイクを起動した。
「あなた達のそのつらさ、その怒り、その悲しみ、どうか教えてください。まるで雨ざらしのようなその荒ぶる心、どうか安らかになりますように。がむしゃらな心に、私の声は、届きますか……?」
ぽわ……寂雷の「Medication」が発動した──が、弾かれるように、バチンッ!!と大きな音がした。
「ゔがぁああ!!」
「ゔぎぃいい!!」
「アアアアア!!!」
「キィイイイイ!!!」
若い男女達は、拘束具の中で悶えながら、叫ぶ。
「アビリティが、弾かれた?」
「……んー……俺のも試してみっかねぇ。」
迦楼羅もヒプノシスマイクを起動。
クロアゲハチョウを白衣に取り付け、ラップを紡ぐ。
「泣きゃあいい、喚けゃあいい、だが、足掻くんだ。今の君達は、まるで奈落の底に落ちたような絶望を、味わっているんだろうなぁ。這い上がれ、立ち上がれ、そして、戻っておいで。怖くないよ、大丈夫だよ、僕達が、崩壊した君達のその心を、紡ぎ直そう。」
ぽわ……迦楼羅のアビリティが、発動した。
「あぅ。」
「うー。」
「んま。」
「だーだ。」
今度は、まるで赤子のようになる若い男女達。
「お、このアビリティは効いたみたいだな。とりあえず、暴れることはなくなったが、念の為に、まだ拘束はしておこう。」
アビリティの効果を維持するために、迦楼羅はヒプノシスマイクを起動したまま、男女達の頭を優しく撫でる。
キャッキャ、嬉しそうにする男女達。
「そのアビリティは?」
初めて見るアビリティに、寂雷が問う。
「『Innocent』の意味、知ってるかい?」
「『罪がない』や『無実の』といった、罪への無罪、あとは『無邪気な』や『純真な』に『純粋な』などの性格や見た目、少しネガティブな意味では『世間知らずな』や『うぶ』といった意味がありますね。」
「赤子って、まさにその通りじゃねえかい?」
「……つまり、赤子への『退行』?」
「ピンポーン。赤ちゃんに、罪があるわけねえだろう?」
「確かに。」
宙には、寂雷の神々しいスピーカーと、迦楼羅の「地獄の門」の悍ましいスピーカーが浮いている。
寂雷はヒプノシスマイクを一旦切ったのでスピーカーも消えたが、迦楼羅はマイクを切れない。
切ってしまうと、今発動している「Innocent」のアビリティが消えてしまうからだ。
「寂雷ちゃん、任せてもいいかい?」
「はい。【麻天狼】として、一二三くんと独歩くんの力も拝借します。」
…
寂雷は病院の外に出て、一二三と独歩を待つ。
「お待たせしました、先生。」
「すっ、すみませんっ、お待たせしてっ。」
一二三は、ジャケットを羽織っているのでホストモード。
独歩は、会社は休みのはずなのに、いつも通りのスーツ姿。(休日出勤をしていたのだ。)
「来てくれてありがとう2人共。緊急で、違法マイクの出どころを掴みたいんだ。被害者は若い男女4名。暴れたり、叫び声をあげたりしていたから私の『Medication』で癒そうとしたけど、弾かれてしまってね……。」
「「先生のアビリティを弾く!?」」
「巫先生のアビリティで事なきを得て今は大人しくなったけど、マイクのバッテリー時間や、巫先生への精神負荷もあります。犯人が持っているであろう『元』を、断ちましょう。」
「「はい!」」
…
一二三は、ホストとして「子猫ちゃん」達から情報を聞き出す。
独歩は、その情報を元にSNSを漁り、違法マイクに繋がりそうなルートを探す。
すると、こんな話が出てきた。
「あのね、こんなDMが届いたの。」
とある「子猫ちゃん」が見せてくれたのは、怪しいメールだった。
[神のマイクを浴びると、日頃の鬱憤なんて一瞬で消えてしまいます。あなたも神のマイクを体験してみませんか?]
「ウチは怖くて無視したんだけど……その、友達がさ、なんか、気になっちゃったみたいで……で、友達と、連絡取れなくて……。」
「ありがとう、子猫ちゃん。そのお友達も、必ず【麻天狼】が救うさ!」
「ひふみん……!ありがとう!お願いね!」
「よし、アカウントが特定出来たぞ!」
「流石だね、独歩くん。」
独歩のスマートフォンの画面には、どこか神々しさを感じさせるようなホームページが映っており、大きなフォントで[神はあなたの『甘え』を、お赦しになります。是非、お話をしませんか?]
そして、スクロールの一番下には電話番号が表示されていた。
「私がかけよう。」
寂雷がスマートフォンを取り出し、その電話番号に電話をかける。
ワンコールで、繋がった。
しかしそれは生の声ではなく、機械音声であった。
〈神の『お告げ』をお聴きしたい方は、以下の住所へ、お越しください──。〉
マップのアプリを開いた独歩が、場所を特定する。
示された場所は、寂雷達が今いる場所の、ビルとビルの間の一番奥だった。
…
コツコツ……奥の奥へと進むと、プレハブ小屋のような建物がポツンと一軒あった。
寂雷が近づくよりも先に、扉が開く。
黒いフード付きマントの集団が、寂雷、一二三、独歩を囲む。
「『ご丁寧なお出迎え』ですね。」
「フフフ、神宮寺寂雷、そして【麻天狼】……動くと思っていたよ……さぁ!!『神のお言葉』を聴きたまえ!!」
キィイイイン──!
耳を劈くようなノイズが発動され、寂雷達は顔を歪める。
『無茶は、しなさんなよ。ジジイのことは気にすんな。寂雷ちゃん達が無事じゃねえと、俺は「死んだも同然」だからよ。分かったかい?』
戦っているのは、自分達だけではない。
ずっとヒプノシスマイクを起動したまま、患者達に寄り添っている迦楼羅の姿を、寂雷は思い出す。
「そのノイズで【麻天狼】が屈すると思わないでいただきたい!」
「その通り!僕達は王者として!シンジュクを代表するメンバーとして!シンジュクを守る為に戦うさ!」
「たっ、多勢に無勢って思うなよ!おっ、おおっ、俺だってやる時はやるんだからなぁ!!」
…
リリックの応酬が、始まった。
ライムとフロウで、その者の魂に訴える寂雷のラップに、敵側は倒れていく。
しかし、寂雷の精神負荷も大きい。
なにしろ敵側の全員が、寂雷を狙っているからだ。
「先生ばかりを狙うなんて、僕と独歩くんが見えていないようだね。行こう、独歩くん!」
「ブチかましてやるぅうう!!」
一二三と独歩も、寂雷のカバーに入る。
(迦楼羅さん……迦楼羅さん……あと、あと少しです……おつらいでしょうが、あと少しだけ、お時間をください……!)
寂雷は、膝を折らずに立ち向かった。
…
時間にして1時間は経過。
とうとう敵側の、リーダー格のような人物が持つマイクが弾け飛び、その者も、倒れた。
寂雷達の周りにはフード姿の者達が、ぐったりとして倒れている。
「ぉっ、おのっ、れっ!わた、しっ、こそっ、『神』なの、にっ!!」
這いつくばるリーダー格は、己を「神」としているようだ。
「『神』ならば、あのような苦しみは、与えません……。……人間が『神』を名乗るなど、烏滸がましいにも、程がありますよ……。」
…
〈『元』を断ちました。ヒプノシスマイクを切っても大丈夫ですよ。〉
「おー、思いの外、早かったなぁ。ジジイの血管がブチブチ千切れる前で助かったわ。……無茶、してねえかい?」
〈大丈夫です。一二三くんと、独歩くんのおかげですから。〉
「なら良し。んじゃ、マイクを切ろうかねぇ。」
カチッ……。
…
違法マイク集団は、警察に引き渡された。
被害者の男女達は念の為に1日入院させ、様子を見る。
迦楼羅と寂雷も、様子観察を行う為に夜になっても病院に残っている。
「巫先生……いえ、迦楼羅さん、どこか、具合が悪いとかは──。」
数部屋ある当直室のひと部屋には、迦楼羅と寂雷が泊まっている。
ソファの端に座る寂雷の、スラックス越しの美脚を膝枕にして、迦楼羅は長い脚をはみ出して仰向けになっている。
「だぁーいじょーぶ。」
「……膝枕で精神が回復するというのは、少々、疑問ではありますけどね。」
「てか、重くないかい?」
「生きている心地良さですよ。迦楼羅さんこそ、こんな肉付きの悪い膝枕で、よろしいんですか?」
「ん?極上の枕だぜ?」
「ふふっ、そうですか。」
寂雷のしなやかな左手が、迦楼羅の目を隠している前髪を掻き上げた。
綺麗なアースアイを、なぜ見せないのだろう?
寂雷は、浮かんだ素朴な疑問を、口に出す。
「いつから、前髪で目を隠すようになったんですか?」
「んー、ガキん頃から。俺、一卵性双生児でよ──まぁ、区別、的な?」
「迦楼羅さんは、お兄さん?弟さん?」
「兄ではある。弟は神社の宮司で、結婚して、養子が3人いる。」
「3人共?」
「同性婚なんだわ。だから施設から、ちなみに三つ子を引き取って、親してる。」
(……会ってみたいな……。)
「会うかい?」
「よろしいんですか?」
「ん、寂雷ちゃんのこと、紹介したかったしな。」
「ふふ、楽しみです。」
次の休みの、予定が出来た。
…
