迦楼羅先生×寂雷先生

『私の、家で、これからは、過ごしませんか……?……アパート、から、お引越し、して……。』

 求め合うキスのあとに、寂雷は、そんな提案をした。

『あ゛ー……マジ可愛いがすぎんだろ……。』

 のらりくらりな口調は、なりをひそめ、「男」を剥き出しにした迦楼羅は、口調とは裏腹に、壊さないように、寂雷を優しく抱き締めた。



 そして、その夜以降、いつも通り「医者」としての日々を過ごす2人に休みがやってきた。
 引越しの準備を手伝いたいです、と寂雷が申し出たが、ジジイの荷物は少ないから家で待っといてくれ、と自宅待機を命じられた寂雷。
 朝からソワソワしてしまう寂雷に、夕方、陽が沈み始めた時刻に、呼び鈴がピンポーン……鳴った。
 インターホンを見れば、見覚えのある目隠れ天然パーマの姿に、トトトッ……玄関へと走って向かう。
 玄関を開ければ、よ、とカジュアルな服装の迦楼羅が右手を軽く挙げる。
 寂雷は、思わず抱きついた。
 迦楼羅はよろめくことなく、寂雷を抱き締める。

「悪りぃねぇ、手続きやら買取やら住所変更やらで思いの外、時間を食っちまった。」

 荷物はスーツケースが1個、ボストンバッグが1個のみ。

「に、荷物は、それだけ……?」
「ん、家具家電はぜーんぶ買取に出したからなぁ。私服と病院で着る服と、シャンプー、コンディショナー、洗顔、ボディソープ、歯ブラシと歯磨き粉……くらいか。」

 寂雷は迦楼羅を見上げてポカンとしたあとに、クスッと笑った。

「……煙草、何カートンあるんですか?」
「……2カートン。」
「もう、お家じゃ、1日1本までにしてもらいますからね?」
「お、吸わせてくれるんかい?」
「……貴方の、迦楼羅さんの香りですから、無いのは、落ち着かないだけです。医者失格だと、理解はしていますが……。」
「んじゃ、病院で1本、家で1本、いいかい?」
「もう……ふふっ、欲張りさんですね。」



 引越しやその他諸々で疲れたであろう迦楼羅を労わろうと寂雷がキッチンへ向かったら、ソファに座ってる迦楼羅から呼ばれたのでそちらに向かう。
 ポンポン、空いている隣を軽く叩いたので、隣に座る意味かな?と思った寂雷は座った──途端、押し倒された。
 寂雷の、ストレートの綺麗なライトグレーのような、ライトパープルのような独特な髪が、ソファに散らばる。

「かっ、かるっ、ら、さん……?」
「すんげえチュー、してもいいか?」
「ふぇっ?!」

 ボフン、寂雷の内側から、熱が込み上げてくる。

「病院でした以上の、すんげえチュー。」
「ぇ、ぁ……っ。」
「いい……?」

 返事の代わりに、寂雷は頷いた。
 まずは、ちゅ、と重ねるだけ。
 そのあとは、どちらからともなく、貪り合い始めた。
 寂雷は、しなやかな指を、迦楼羅の服に絡める。

「んむっ……ぁ……っ、ん、う……っ!」

 鼻から抜ける荒い息と、迦楼羅のレギュラー煙草の匂いが混ざり合って、寂雷の脳内を甘く「麻痺」させていく。
 貪り尽くしたあとに迦楼羅が口を離せば、つぅ……と唾液の糸が繋がって、ぷつ、と切れた。

「……迦楼羅、さんは、経験が、おありなんですか……?」

 巧みなキスに、過去に恋人がいただろうと想像する寂雷だが──。

「俗に言う、チェリーボーイだぞ。」
「へっ?」

 次いで、嘘だ!と言う寂雷に、わはは!と笑う迦楼羅。

「嘘じゃねえっつーに。」
「あっ、あんなっ、えっ、ええっ、えっちな、の、してっ!?」
(あれで『えっち』かぁ……こりゃ、とんでもねえ『箱入りちゃん』だな。)
「……ち、ちなみ、に、その……私も、経験は、なくて……。きっ、キスもっ、病院でしたのでっ、初めてっ、で……あのっ、どっ、童貞だしっ、『処女』なのでっ、えとっ!」
「ん、焦らんでいい。寂雷ちゃんが、本気で俺とSEXしたい時まで、俺は待ってるし──あ、これ大事なことなんだがよ、わざわざ『処女』っつーことは、俺の『ブツ』を、寂雷ちゃんのケツの穴に挿れていいってこと?」

 ぁうっ──寂雷は、耳まで真っ赤になる。

「……わ、わた、し……かるらさんから、いっ、いれ、られて、る、ゆめを、み、て……むっ、むせいっ、したんですっ!」

 ここで、素面でカミングアウトをする寂雷だが。

「(酔いどれ寂雷ちゃんから聞いた、とは言えねえな)そうか……気持ち良かった?」

 以前、酔いどれ寂雷が既に「口を滑らせていた」ことなど寂雷は知らないし、その時に迦楼羅とキスをしたことなど覚えてもいない。
 「無知」とは、恐ろしいものである。

「……む、夢精、する、ほど、なの、で……良かった、のだと、思い、マス……。」
「んじゃ、夢に負けねえようにしますかねえ。」
「しょっ、勝負しないでくださいっ!」

 無骨な右手で寂雷の前髪を上げた迦楼羅は、そこに、ちゅ、とキスを落とす。
 潤むライトブルーの瞳で、押し倒されたままの寂雷は、迦楼羅を見上げる。

「今すぐはしねえさ。あ、ただ70後半になっちまっても、するかもな。」
「ばっ!ばばばっ!ばかっ!!」

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