迦楼羅先生×寂雷先生
帰宅する際は、ほぼ迦楼羅が寂雷の診察室までやって来て「中断」させる。
この日も、カルテ整理を終えた迦楼羅が来たのだが──寂雷が、デスクに突っ伏していた。
迦楼羅は駆け寄り、寂雷に声をかけるも、息が荒い。
「……やれやれ……『漸く甘えてくれた』か……。」
迦楼羅はデスクから寂雷の上半身を優しく起こし、軽々と抱っこをして診察室を出た。
…
かるらさん……かるらさん……後部座席に横にさせた寂雷が、譫言のように迦楼羅の名を呼ぶ。
迦楼羅は、ドラッグストアに寄った。
「ちぃと経口補水液やらゼリーやらプリンやら買ってくるから、待っといてくれよ。」
「……ゃ、だ……ぃっ、ちゃ……ゃ……。」
「大丈夫、独りにゃしねえよ。ちぃとだけ、な?」
「ゃ、だぁ……っ!」
横たわる寂雷の瞳から、涙がポロポロ溢れてくる。
運転席から手を伸ばした迦楼羅は、それを優しく拭う。
「独り、嫌だな……。ちゃーんと、寂雷ちゃんのとこに帰ってくるから、指切り、しようか。」
寂雷のしなやかな片手の小指に、己の無骨な小指を絡ませて、指切りげんまんをする迦楼羅。
「うーそつーいたら、はーりせんぼんのーます。」
「のんじゃ、ゃあっ……!」
「ん、ありがとうな。3分だ。俺が出たあとに、いーち、にぃーいって、60までを3回数えられるかい?」
「わっ、かった……っ。」
「偉いな。んじゃ、行ってくるよ。」
迦楼羅は、急いでドラッグストアの中へと入っていった。
「ぃーち……にぃーぃ……。」
…
2分58秒で車に戻ってきた迦楼羅。
買ったのは経口補水液、ゼリーやプリン、坐薬に冷却シート──つまり、寂雷の様子がいつもと違うのは、熱を出してしまったからだ。
運転席に座って後部座席を見れば、ドラッグストアに入る前よりぐったりして泣きながら呻いている寂雷。
迦楼羅はエンジンをかけて、車を走らせた。
…
家に着いたら、まず寂雷を横抱きにして車から下ろし、ベッドに直行。
寂雷を寝かせたあと荷物を取り、とりあえず坐薬と冷却シート、それから経口補水液のペットボトルを1本、ベッドに持っていく。
「あ、体温計だったな。」
坐薬を入れる前に測っておこう──そしたら、なんと39.6度の高熱も高熱。
「寂雷ちゃん、ズボンとトランクス、脱がすよ。」
「ぅ……ぅ……。」
此処にいるよ、独りじゃないよ……声をかけながら、寂雷のスラックスを下着ごとずり下ろし、ローションを肛門に塗り、坐薬にも纏わせ、つぷ……と入れた。
寂雷の白磁の肌は赤く、痛いくらいに熱い。
「ぁ……ぅ……。」
「つらいだろうが、水分摂るぞ寂雷ちゃん。身体、起こすからな。ちびっとでいい、カラカラな口ん中を、ちぃと潤そう。」
下着を履かせ、スラックスはパジャマのズボンに変えたあと、寂雷の上半身を起こし、迦楼羅は自分の胸板に寄りかからせて、経口補水液のペットボトルの蓋を開けたあと、ほんの僅かに傾けた瞬間。
「ゲボッ!」
ビチャッ──寂雷は、咽せてしまった。
「ごっ、め゛っ……!」
「大丈夫、大丈夫だよ……つらいな……きついな……ハイネック、脱がすからね?パジャマに着替えて、楽な格好して、まずは眠ろうか……ね?」
「が、る゛ら゛、ざっ……。」
「大丈夫……独りじゃない……独りじゃないよ……ねんねだ、ねんね……ね?」
寂雷のハイネックを脱がし、次はパジャマの上を着せた迦楼羅は寂雷をベッドに寝かせて、掛け布団をかける。
途切れ途切れに、行かないで……ひとりにしないで……譫言を繰り返す寂雷の額に冷却シートを貼り、迦楼羅は優しく抱き締めた。
…
やぁっぱさ、「無理」があったんじゃねえかねぇ。
かるら、さん……?
「駄目」なんだよ、こーんなジジイに、うつつを抜かしちゃ。
かるらさんっ!待ってくださいっ!
…
「かる……ら……さ、ん……っ!」
仮眠をとっていた迦楼羅は、寂雷の苦しそうな寝言に目を覚まして様子を見ていた。
普段なら美しい寝顔が、眠ったまま涙を流して、行かないで、行かないで、そう繰り返している。
「……寂雷……『俺の声を聴け』……『そいつの声じゃない』……『俺の声』だ……。」
迦楼羅は、寂雷を抱き締める力を込める。
「そーんな、『悪夢』……ジジイが『バクバク食べてやる』から……『俺の声を聴いて』、寂雷……。」
「ゃ……だ……ぃや……──なぃ……で……っ!」
「……こりゃ、しぶてえ『野郎』だな……。」
迦楼羅は、寂雷の額にキスを落としたあと、身体を起こして、レギュラータイプの煙草を取り出し、咥えて、ライターで火を点けた。
病人の前で煙草を吸うなど、医者失格であろう。
フー……煙を吐き出したあと、今度は、寂雷のカサカサになってしまった唇へ、ちゅ、とキスをする。
「寂雷……『俺は此処にいる』よ……。」
…
寂雷の目の前に、寂雷が立っている。
「お前は、お前の『エゴ』を押し付けているにすぎない。『目を覚ませ』……『住む世界が違う』んだ。お前はどれほど殺してきた?殺し屋が幸せを得ていいと思っているのか?『勘違いも甚だしい』ぞ。お前の両手は『血塗れ』だ。その手で『あの男』からの『愛』を受け取って『いいわけがない』だろう?衢の手を握って『いいわけがない』だろう?……お前は『幸せになっていいわけがない』んだよ……。」
その言葉に、何も言い返せない寂雷。
だが、鼻腔に、「いつものレギュラータイプの煙草」の香りが通る。
「……ねぇ、『俺』……『俺』は……『怖い』んだね……?……確かに、『私』にとって、『僕』にとって、迦楼羅さんは『勿体ないくらいのいい男』です……。『俺』のことは、まだ、話してない……。……だからこそ、目が覚めたら、包み隠さず、『俺』のことも、話すよ……。……怖い……もの凄く、怖い……。医者なのに、殺し屋してさ……衛生兵しながら、裏では殺してさ……。」
……寂雷ちゃん……。
寂雷は、迦楼羅の煙草の香りと、迦楼羅の声と、迦楼羅のぬくもりを、感じる。
それを受け止めるように、自分の身体を抱き締める。
「『俺』も『僕』も『私』も、迦楼羅さんになら、見せたい……。……怖いけど……関係が、無くなってしまうかもしれないけど……うん……迦楼羅さんが、『迦楼羅さんを見せてくれた』ように、『全て』を『見せたい』んだ……。」
「……『酔狂な奴』め……。」
「ふふ……『心配してくれてありがとう』ね……。」
「……『傷つく』と、分かっているのに……。」
「きっと、迦楼羅さんも、『迦楼羅さんを見せてくれた』時に、そう思ったのかもしれないね。だから、今度は、『私』が『俺』も『僕』も見せる番だよ。」
「……『もういい』……『好きにしろ』……。」
「ふふ、ありがとう。」
…
寂雷の意識は、ゆっくり、浮上する。
部屋に香る、ヘビーな匂い。
トク、トク、トク──耳に届く、規則正しい心音、ぬくもり。
寂雷はモゾリ動いて、逞しい首に両腕を回す。
「汗かいてっから、拭いて、着替えようか。」
逞しい腕に抱き締められ、心地良い低音が、寂雷の耳に届く。
「……そのあとに、話したいことが、あるんです……。」
寂雷のベルベットボイスは、熱で掠れている。
「ん、分かった。ぜーんぶ、話ちまいな。寂雷ちゃんの中にいる『寂雷ちゃん』のこと、このジジイに……俺に、教えておくれ……。」
…
寂雷は、甲斐甲斐しく身体の汗を拭われて、別のパジャマに着替えさせられて、経口補水液をチビチビと飲み、喉を潤した。
そして再び迦楼羅と共にベッドへ横になって、語るのは「僕」のこと、「俺」のこと、そして「私」のこと──。
「──贖罪などと、そんな『綺麗な言葉』で、済ませる気は、ありません……。……これが、『全て』です……。」
目隠れの奥のアースアイがどうなっているのか、寂雷には分からない。
ただ、向き合って、話をして、迦楼羅の言葉を待つ。
「ん、話してくれて、ありがとうな。」
無骨な左手が、寂雷の右頬を撫で、頭を撫でる。
「……『恐ろしい』ですか……?」
「いんや。だが『時代のひずみ』で済ませる気もない。それは『神宮寺寂雷』が背負うべき『罪』であり、『罰』を受けながら生きていかなきゃならん。さりとて、俺の『手』を握らない理由になるかっつーと、そうじゃねえ。『俺にも背負わせろ』よ、その『業』を。」
「……『重い』ですよ……?」
「ハッ、『上等』だ。」
迦楼羅が、寂雷を抱き締める。
寂雷は、迦楼羅を抱き締め返す。
「俺より先に死ぬんじゃねえぞ……『俺が迎えにくるまで、その「罪」と「罰」ごと生きろ』よ、寂雷……。」
「はい、『迎えに来てください』……私は、俺は、僕は、迦楼羅が導いて、迦楼羅が居てくれる『その先』で『過ごしたい』のだから……。」
「お前の『行き先』が地獄なら、俺は地獄で寂雷を待とう。『独りになれると思うな』よ?ジジイの執念は、『重い』ぞ。」
「うん……『独りにさせないで』……迦楼羅……。」
心と身体の繋がり以上に、迦楼羅と寂雷は、漸く、なんの隔たりもない「魂のつがい」に、なれたのだ。
…
この日も、カルテ整理を終えた迦楼羅が来たのだが──寂雷が、デスクに突っ伏していた。
迦楼羅は駆け寄り、寂雷に声をかけるも、息が荒い。
「……やれやれ……『漸く甘えてくれた』か……。」
迦楼羅はデスクから寂雷の上半身を優しく起こし、軽々と抱っこをして診察室を出た。
…
かるらさん……かるらさん……後部座席に横にさせた寂雷が、譫言のように迦楼羅の名を呼ぶ。
迦楼羅は、ドラッグストアに寄った。
「ちぃと経口補水液やらゼリーやらプリンやら買ってくるから、待っといてくれよ。」
「……ゃ、だ……ぃっ、ちゃ……ゃ……。」
「大丈夫、独りにゃしねえよ。ちぃとだけ、な?」
「ゃ、だぁ……っ!」
横たわる寂雷の瞳から、涙がポロポロ溢れてくる。
運転席から手を伸ばした迦楼羅は、それを優しく拭う。
「独り、嫌だな……。ちゃーんと、寂雷ちゃんのとこに帰ってくるから、指切り、しようか。」
寂雷のしなやかな片手の小指に、己の無骨な小指を絡ませて、指切りげんまんをする迦楼羅。
「うーそつーいたら、はーりせんぼんのーます。」
「のんじゃ、ゃあっ……!」
「ん、ありがとうな。3分だ。俺が出たあとに、いーち、にぃーいって、60までを3回数えられるかい?」
「わっ、かった……っ。」
「偉いな。んじゃ、行ってくるよ。」
迦楼羅は、急いでドラッグストアの中へと入っていった。
「ぃーち……にぃーぃ……。」
…
2分58秒で車に戻ってきた迦楼羅。
買ったのは経口補水液、ゼリーやプリン、坐薬に冷却シート──つまり、寂雷の様子がいつもと違うのは、熱を出してしまったからだ。
運転席に座って後部座席を見れば、ドラッグストアに入る前よりぐったりして泣きながら呻いている寂雷。
迦楼羅はエンジンをかけて、車を走らせた。
…
家に着いたら、まず寂雷を横抱きにして車から下ろし、ベッドに直行。
寂雷を寝かせたあと荷物を取り、とりあえず坐薬と冷却シート、それから経口補水液のペットボトルを1本、ベッドに持っていく。
「あ、体温計だったな。」
坐薬を入れる前に測っておこう──そしたら、なんと39.6度の高熱も高熱。
「寂雷ちゃん、ズボンとトランクス、脱がすよ。」
「ぅ……ぅ……。」
此処にいるよ、独りじゃないよ……声をかけながら、寂雷のスラックスを下着ごとずり下ろし、ローションを肛門に塗り、坐薬にも纏わせ、つぷ……と入れた。
寂雷の白磁の肌は赤く、痛いくらいに熱い。
「ぁ……ぅ……。」
「つらいだろうが、水分摂るぞ寂雷ちゃん。身体、起こすからな。ちびっとでいい、カラカラな口ん中を、ちぃと潤そう。」
下着を履かせ、スラックスはパジャマのズボンに変えたあと、寂雷の上半身を起こし、迦楼羅は自分の胸板に寄りかからせて、経口補水液のペットボトルの蓋を開けたあと、ほんの僅かに傾けた瞬間。
「ゲボッ!」
ビチャッ──寂雷は、咽せてしまった。
「ごっ、め゛っ……!」
「大丈夫、大丈夫だよ……つらいな……きついな……ハイネック、脱がすからね?パジャマに着替えて、楽な格好して、まずは眠ろうか……ね?」
「が、る゛ら゛、ざっ……。」
「大丈夫……独りじゃない……独りじゃないよ……ねんねだ、ねんね……ね?」
寂雷のハイネックを脱がし、次はパジャマの上を着せた迦楼羅は寂雷をベッドに寝かせて、掛け布団をかける。
途切れ途切れに、行かないで……ひとりにしないで……譫言を繰り返す寂雷の額に冷却シートを貼り、迦楼羅は優しく抱き締めた。
…
やぁっぱさ、「無理」があったんじゃねえかねぇ。
かるら、さん……?
「駄目」なんだよ、こーんなジジイに、うつつを抜かしちゃ。
かるらさんっ!待ってくださいっ!
…
「かる……ら……さ、ん……っ!」
仮眠をとっていた迦楼羅は、寂雷の苦しそうな寝言に目を覚まして様子を見ていた。
普段なら美しい寝顔が、眠ったまま涙を流して、行かないで、行かないで、そう繰り返している。
「……寂雷……『俺の声を聴け』……『そいつの声じゃない』……『俺の声』だ……。」
迦楼羅は、寂雷を抱き締める力を込める。
「そーんな、『悪夢』……ジジイが『バクバク食べてやる』から……『俺の声を聴いて』、寂雷……。」
「ゃ……だ……ぃや……──なぃ……で……っ!」
「……こりゃ、しぶてえ『野郎』だな……。」
迦楼羅は、寂雷の額にキスを落としたあと、身体を起こして、レギュラータイプの煙草を取り出し、咥えて、ライターで火を点けた。
病人の前で煙草を吸うなど、医者失格であろう。
フー……煙を吐き出したあと、今度は、寂雷のカサカサになってしまった唇へ、ちゅ、とキスをする。
「寂雷……『俺は此処にいる』よ……。」
…
寂雷の目の前に、寂雷が立っている。
「お前は、お前の『エゴ』を押し付けているにすぎない。『目を覚ませ』……『住む世界が違う』んだ。お前はどれほど殺してきた?殺し屋が幸せを得ていいと思っているのか?『勘違いも甚だしい』ぞ。お前の両手は『血塗れ』だ。その手で『あの男』からの『愛』を受け取って『いいわけがない』だろう?衢の手を握って『いいわけがない』だろう?……お前は『幸せになっていいわけがない』んだよ……。」
その言葉に、何も言い返せない寂雷。
だが、鼻腔に、「いつものレギュラータイプの煙草」の香りが通る。
「……ねぇ、『俺』……『俺』は……『怖い』んだね……?……確かに、『私』にとって、『僕』にとって、迦楼羅さんは『勿体ないくらいのいい男』です……。『俺』のことは、まだ、話してない……。……だからこそ、目が覚めたら、包み隠さず、『俺』のことも、話すよ……。……怖い……もの凄く、怖い……。医者なのに、殺し屋してさ……衛生兵しながら、裏では殺してさ……。」
……寂雷ちゃん……。
寂雷は、迦楼羅の煙草の香りと、迦楼羅の声と、迦楼羅のぬくもりを、感じる。
それを受け止めるように、自分の身体を抱き締める。
「『俺』も『僕』も『私』も、迦楼羅さんになら、見せたい……。……怖いけど……関係が、無くなってしまうかもしれないけど……うん……迦楼羅さんが、『迦楼羅さんを見せてくれた』ように、『全て』を『見せたい』んだ……。」
「……『酔狂な奴』め……。」
「ふふ……『心配してくれてありがとう』ね……。」
「……『傷つく』と、分かっているのに……。」
「きっと、迦楼羅さんも、『迦楼羅さんを見せてくれた』時に、そう思ったのかもしれないね。だから、今度は、『私』が『俺』も『僕』も見せる番だよ。」
「……『もういい』……『好きにしろ』……。」
「ふふ、ありがとう。」
…
寂雷の意識は、ゆっくり、浮上する。
部屋に香る、ヘビーな匂い。
トク、トク、トク──耳に届く、規則正しい心音、ぬくもり。
寂雷はモゾリ動いて、逞しい首に両腕を回す。
「汗かいてっから、拭いて、着替えようか。」
逞しい腕に抱き締められ、心地良い低音が、寂雷の耳に届く。
「……そのあとに、話したいことが、あるんです……。」
寂雷のベルベットボイスは、熱で掠れている。
「ん、分かった。ぜーんぶ、話ちまいな。寂雷ちゃんの中にいる『寂雷ちゃん』のこと、このジジイに……俺に、教えておくれ……。」
…
寂雷は、甲斐甲斐しく身体の汗を拭われて、別のパジャマに着替えさせられて、経口補水液をチビチビと飲み、喉を潤した。
そして再び迦楼羅と共にベッドへ横になって、語るのは「僕」のこと、「俺」のこと、そして「私」のこと──。
「──贖罪などと、そんな『綺麗な言葉』で、済ませる気は、ありません……。……これが、『全て』です……。」
目隠れの奥のアースアイがどうなっているのか、寂雷には分からない。
ただ、向き合って、話をして、迦楼羅の言葉を待つ。
「ん、話してくれて、ありがとうな。」
無骨な左手が、寂雷の右頬を撫で、頭を撫でる。
「……『恐ろしい』ですか……?」
「いんや。だが『時代のひずみ』で済ませる気もない。それは『神宮寺寂雷』が背負うべき『罪』であり、『罰』を受けながら生きていかなきゃならん。さりとて、俺の『手』を握らない理由になるかっつーと、そうじゃねえ。『俺にも背負わせろ』よ、その『業』を。」
「……『重い』ですよ……?」
「ハッ、『上等』だ。」
迦楼羅が、寂雷を抱き締める。
寂雷は、迦楼羅を抱き締め返す。
「俺より先に死ぬんじゃねえぞ……『俺が迎えにくるまで、その「罪」と「罰」ごと生きろ』よ、寂雷……。」
「はい、『迎えに来てください』……私は、俺は、僕は、迦楼羅が導いて、迦楼羅が居てくれる『その先』で『過ごしたい』のだから……。」
「お前の『行き先』が地獄なら、俺は地獄で寂雷を待とう。『独りになれると思うな』よ?ジジイの執念は、『重い』ぞ。」
「うん……『独りにさせないで』……迦楼羅……。」
心と身体の繋がり以上に、迦楼羅と寂雷は、漸く、なんの隔たりもない「魂のつがい」に、なれたのだ。
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