序
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◇
「最初に会った時もそうして腹を押さえていたな」
冨岡さんにそう声をかけられ、うとうとと閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
仰向けのまま首だけを動かして隣を見れば、自分の腕を枕のようにしてこちらを向いている。
「そう、でしたっけ……?」
今でも鮮やかに思い出せるその日の記憶を探るけれど、まったく心当たりがない。
そもそも確かあの時はお腹よりも肋骨が折れてて痛かったんだったよなぁと、と眉を寄せると、下腹に当てているわたしの両手を覆うように大きな手のひらが重なった。
「痛むのか」
「……お腹は大丈夫です」
「無理をさせた」
ではどこが、なんて無粋なことは聞かない代わりに汗ばんだ額に唇が押し当てられふるふると首を横に振る。お腹から手を離して冨岡さんの方へと体を向けると腕が回ってきて抱き締めてくれる。
そのまま少し布団に潜り込んで逞ましい胸元に顔を寄せると、まずいな、と小さな呟きが落ちてきて顔を上げた。
「なにがですか?」
「もうしたくなってきた」
「ま、まだちょっと痛いってたった今言ったつもりなんですけどもっ」
「わかってる」
そうは言うけれど、慌てて身を引こうとしたわたしの上に一瞬早く上体を起こして封じてくるから咄嗟に、ずるい、と思った。
青みを帯びた瞳に見つめられると動けないのを、この人は多分もう知っている。
「あの、あの、もう少し待ってくださ……っ」
「大丈夫だ。まだしない」
男の冨岡さんには破瓜の痛みなんて絶対にわからない。それでも鎖骨や胸元に唇を落とされてしまえば、さっきまで与えられていた快感を身体が思い出しそうになってしまう。
そのうえ、こうしてるだけだ、なんて湿った甘い声で囁かれたら、その言葉の意味以上のものは含まれていないとわかっているのになんだか焦らされている気分になるのだから、やっぱりずるい。
「さっき、の、話ですけ、ど……っ、わたしっ、初めて会、った時にお腹なんて、押さえてまし、たっけっ」
頭を抱え込まれるようにして不規則に柔らかく口を塞がれるせいでうまく喋れず、変なところで途切れてしまう。それでも夜気で冷えた肌を温めるように撫でてくれていた手のひらが左の腰骨のあたりへすっと下がっていき、労わるようにその傷をなぞった。
「戦闘後に話しかけて来ただろう。この辺りを押さえて」
「……あ」
思い出した。確かにそんなことがあった。……けど、きっと本当に他意はないんだろうけれどその優しい温もりが心地よくてつい吐息が溢れてしまいそうになる。このままじゃ、まだしない、をわたしの方から破ってしまいそう。
「そっ、それ、違いますっ」
体の中心で確かにぶり返してくる熱を感じて急いで言うと、動きを止めて怪訝そうに見下ろしてくる顔を見て、ようやく微笑む余裕ができた。
「初めて会ったのは、その日じゃないですよ」