夢短編
かなめ
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閨で殺すのが最善だという作戦で、男子たちの女装では早々にバレるだろうと言うことから、房術のためだけに私が選出された。シナ先生には「あなたは心を殺すのがうまいから」と抱きしめられ、級友たちに祈られながら見送られる。別にどうってことない、実践授業のおかげでもう生娘ではないのだし。
女装した仙蔵と一緒に女中として城に忍び込み、うまく事が運んで、私は殿様に「今夜来なさい」とお呼び出しをくらう。あとは仙蔵がうまくみんなを招き入れることだろう。私は夜更け過ぎに、襦袢のまま殿様の部屋に入った。部屋の前に待機する見張の者にジロジロと見られたけれど、まあいずれこの者たちは倒されるのだし、不快なのも今だけだ。
「間者ではあるまいな」
「隅々までお確かめください。何の武器も仕込んでいませんし、毒でも塗ってあれば私自身がすぐ死ぬでしょう」
はらりと襦袢を脱ぎ、裸を晒した。殿様はわかりやすく鼻の下を伸ばして、あますことなく身体中を確かめる。羞恥心がないと言えば嘘になる。泣きそうになるのをこらえた。
かさついた手のひらだった。撫でられたところの全てが穢れていく気がしたが、シナ先生の言葉を思い出す。私は心を殺すのがうまい。そうだ、身体と心は別々にあるのだ。殿様の指が中を乱暴に掻き乱している間、私はわざとらしい嬌声をあげて、どこかに待機しているはずの同期たちに合図を送る。
「よい声で鳴くわい」
殿様は屹立した中心を私に当てがった。途端に恐怖が襲ってきて、私は叫ぶけれど、殿様に首を絞められる。
「か……は……ッ」
「ほほほ、この瞬間が一番気持ち良い」
又座に激痛が走り、身体が裂ける感覚がした。次の瞬間、上から生温かい液体が降り注ぐ。殿様の断末魔と、見張の者たちの倒れる音。「討ち取ったり」と言う文次郎の声。やっと手に入れた酸素をかき集めてゴホゴホと咳をしていると、上に倒れ込んだ殿様の骸がどけられた。
「かなめ」
小平太が私を抱き起こしたのがわかった。血でびしょびしょで前が見えない。何か布で身体を包まれ、私は抱えられたまま屋根裏から脱出した。
「かなめ、しっかり」
――意識を失っていたらしい。伊作に頬をぺちぺちと叩かれて起きた。私は裸で、伊作が私にこびりついた血を拭ってくれていた。まだ錆臭いけれど、目がしっかり開けられる。
「怖かったね」
仙蔵が着ていた女中の着物を私に着せながら、伊作が優しい声を奏でる。大丈夫よ、私は心を殺すのが上手いから。そう言おうとしたのに、出てきたのはカラカラの涙声だった。
「う……ぐ……ッ」
「痛かったね。嫌だったね」
吐き気が込み上げてきて、私は嘔吐した。伊作は悪臭に嫌な顔一つせず背中をさすってくれる。おかしいな、わかっていたはずなのにな。
「大丈夫か……?」
近くで見張っていたのだろう、留三郎の声がした。伊作は「水を汲んできて」と指示を出し、私の嘔吐がおさまるのを待ってくれた。
留三郎が汲んできてくれた水を飲み、何とか心を落ち着けても、震えは止まらなかった。
「帰ろう。もう大丈夫だから」
交代で私を背負うことになったようだ。長次に担がれながら、私は何度も心の中で繰り返した。私は心を殺すのが得意。私は心を殺すのが得意。
「かなめ。泣いていい」
長次がそう呟いたのを、聞こえないふりをした。だって、私は強いはずなのだ。これからこんなこと、たくさんこなしていかねばならないのだ。
木々の間を飛び交いながら、私たちは忍術学園を目指す。夜明けまでもう少し。
女装した仙蔵と一緒に女中として城に忍び込み、うまく事が運んで、私は殿様に「今夜来なさい」とお呼び出しをくらう。あとは仙蔵がうまくみんなを招き入れることだろう。私は夜更け過ぎに、襦袢のまま殿様の部屋に入った。部屋の前に待機する見張の者にジロジロと見られたけれど、まあいずれこの者たちは倒されるのだし、不快なのも今だけだ。
「間者ではあるまいな」
「隅々までお確かめください。何の武器も仕込んでいませんし、毒でも塗ってあれば私自身がすぐ死ぬでしょう」
はらりと襦袢を脱ぎ、裸を晒した。殿様はわかりやすく鼻の下を伸ばして、あますことなく身体中を確かめる。羞恥心がないと言えば嘘になる。泣きそうになるのをこらえた。
かさついた手のひらだった。撫でられたところの全てが穢れていく気がしたが、シナ先生の言葉を思い出す。私は心を殺すのがうまい。そうだ、身体と心は別々にあるのだ。殿様の指が中を乱暴に掻き乱している間、私はわざとらしい嬌声をあげて、どこかに待機しているはずの同期たちに合図を送る。
「よい声で鳴くわい」
殿様は屹立した中心を私に当てがった。途端に恐怖が襲ってきて、私は叫ぶけれど、殿様に首を絞められる。
「か……は……ッ」
「ほほほ、この瞬間が一番気持ち良い」
又座に激痛が走り、身体が裂ける感覚がした。次の瞬間、上から生温かい液体が降り注ぐ。殿様の断末魔と、見張の者たちの倒れる音。「討ち取ったり」と言う文次郎の声。やっと手に入れた酸素をかき集めてゴホゴホと咳をしていると、上に倒れ込んだ殿様の骸がどけられた。
「かなめ」
小平太が私を抱き起こしたのがわかった。血でびしょびしょで前が見えない。何か布で身体を包まれ、私は抱えられたまま屋根裏から脱出した。
「かなめ、しっかり」
――意識を失っていたらしい。伊作に頬をぺちぺちと叩かれて起きた。私は裸で、伊作が私にこびりついた血を拭ってくれていた。まだ錆臭いけれど、目がしっかり開けられる。
「怖かったね」
仙蔵が着ていた女中の着物を私に着せながら、伊作が優しい声を奏でる。大丈夫よ、私は心を殺すのが上手いから。そう言おうとしたのに、出てきたのはカラカラの涙声だった。
「う……ぐ……ッ」
「痛かったね。嫌だったね」
吐き気が込み上げてきて、私は嘔吐した。伊作は悪臭に嫌な顔一つせず背中をさすってくれる。おかしいな、わかっていたはずなのにな。
「大丈夫か……?」
近くで見張っていたのだろう、留三郎の声がした。伊作は「水を汲んできて」と指示を出し、私の嘔吐がおさまるのを待ってくれた。
留三郎が汲んできてくれた水を飲み、何とか心を落ち着けても、震えは止まらなかった。
「帰ろう。もう大丈夫だから」
交代で私を背負うことになったようだ。長次に担がれながら、私は何度も心の中で繰り返した。私は心を殺すのが得意。私は心を殺すのが得意。
「かなめ。泣いていい」
長次がそう呟いたのを、聞こえないふりをした。だって、私は強いはずなのだ。これからこんなこと、たくさんこなしていかねばならないのだ。
木々の間を飛び交いながら、私たちは忍術学園を目指す。夜明けまでもう少し。