雑高
よせては返す波のような日々のなかに、光の粒が揉まれて反射して、それを綺麗だと思える毎日でありたいと願うのに、私にはそれが出来ない。
手繰り寄せた波の欠片は角の削れたシーグラスで、コレクションしているわけでもなし、アクセサリーに加工する趣味もない。つまりは持て余す。小石と小石のあいまに置き、子供が間違って飲み込みませんようにと唱えながら、やっぱり波のうねる日々の中へと溺れていく。大人とはこうもつまらない存在だったか。
「雑渡様」
海岸線沿いに、太陽を背負って立っているのが、私を慕うあの子だ。触れなくてもあたたかいのがわかる。波の飛沫を浴びながら、それを楽しそうに振り払い、私に向かって笑みを浮かべている。
「陣左。濡れてしまうよ」
「雑渡様が濡れているのなら、私も濡れるまでです」
「答えになっていないよ」
私はお前が風邪をひいてしまったらと心配しているだけなのに。
「雑渡様。シーグラスがたくさん輝いていますね」
「ああ。そうだね」
「集めたら、美しいと思うのです。あなたとの日々の様に」
「……ごみになるだけじゃない?」
「とんでもない!」
私が拾いあぐねたものを、陣左はやわらかくつまみ上げて、手のひらに転がしたり、太陽に透かして見たりしていた。きらきらと瞳の中に光が生まれる。
「雑渡様との日々は、大海を漂っているようです。荒波も塩辛い、けれど眩しい」
「うん」
「それを集めたら、こんな風に、きれいな宝石になるのですよ。ごみだなんてとんでもない」
私との日々の結晶を大切そうに胸にポケットに仕舞った陣左は、翳りのない笑顔で私を見上げた。潮風が彼の前髪を撫でていく。
「どこまでもご一緒いたします」
「……水平線の向こうまで?」
「ええ。どこまでも」
そうか、それならば角が削れて丸くなって、傷だらけになってもそこから光が生まれるような、不格好な宝石になってもいいかもしれない。何の価値もないかもしれないけれど、たとえば庭先の鉢植えにでも飾ったら綺麗なんじゃないだろうか。
陣左の手は傷だらけで、私の手も傷だらけで、けれど合わさればそこから熱を孕み、生きているという鼓動が広がる。波がよせては返していく。
陣左に唇を寄せた。少しだけ塩辛かった。
手繰り寄せた波の欠片は角の削れたシーグラスで、コレクションしているわけでもなし、アクセサリーに加工する趣味もない。つまりは持て余す。小石と小石のあいまに置き、子供が間違って飲み込みませんようにと唱えながら、やっぱり波のうねる日々の中へと溺れていく。大人とはこうもつまらない存在だったか。
「雑渡様」
海岸線沿いに、太陽を背負って立っているのが、私を慕うあの子だ。触れなくてもあたたかいのがわかる。波の飛沫を浴びながら、それを楽しそうに振り払い、私に向かって笑みを浮かべている。
「陣左。濡れてしまうよ」
「雑渡様が濡れているのなら、私も濡れるまでです」
「答えになっていないよ」
私はお前が風邪をひいてしまったらと心配しているだけなのに。
「雑渡様。シーグラスがたくさん輝いていますね」
「ああ。そうだね」
「集めたら、美しいと思うのです。あなたとの日々の様に」
「……ごみになるだけじゃない?」
「とんでもない!」
私が拾いあぐねたものを、陣左はやわらかくつまみ上げて、手のひらに転がしたり、太陽に透かして見たりしていた。きらきらと瞳の中に光が生まれる。
「雑渡様との日々は、大海を漂っているようです。荒波も塩辛い、けれど眩しい」
「うん」
「それを集めたら、こんな風に、きれいな宝石になるのですよ。ごみだなんてとんでもない」
私との日々の結晶を大切そうに胸にポケットに仕舞った陣左は、翳りのない笑顔で私を見上げた。潮風が彼の前髪を撫でていく。
「どこまでもご一緒いたします」
「……水平線の向こうまで?」
「ええ。どこまでも」
そうか、それならば角が削れて丸くなって、傷だらけになってもそこから光が生まれるような、不格好な宝石になってもいいかもしれない。何の価値もないかもしれないけれど、たとえば庭先の鉢植えにでも飾ったら綺麗なんじゃないだろうか。
陣左の手は傷だらけで、私の手も傷だらけで、けれど合わさればそこから熱を孕み、生きているという鼓動が広がる。波がよせては返していく。
陣左に唇を寄せた。少しだけ塩辛かった。