雑高
麻縄の、ざらりとした手触りが手のひらを掠めた。人差し指と親指の間から肘を一周して左手に巻いたそれを解きながら、私は陣左を正座させる。静かな息遣い。彼の肌に触れると、どくどくと血が流れていくのがわかる。
灯明から伸びる影が、陣左の長い髪を揺らした。彼の腕を取り、背中で両の手のひらを合わせ、合唱させる。陣左は間接が柔らかい。肩や肩甲骨が後ろに捻り上げられるような姿勢になったにも関わらず、眉一つ動かさない。
私は麻縄を、彼の腕と胴体の間にくぐらせた。結び目が肉を圧迫しないよう位置をずらしながら、彼の手首と手首を合わせていく。そこから首へ、肩へ、二の腕へ、縄を通していきながら、私は都度陣左の瞬きを見た。遠くをぼんやり見ているような、それでいて自分自身を睨みつけているかのような鋭い視線が恍惚に歪んでいくのを見る度、私は得も言われぬ快楽を味わう。
「ねえ陣左。お前は本当に綺麗だね」
「……恐縮です」
「こうして、お前の輪郭を確かめていくだけで、まるで肌と肌を合わせているかのような感覚に陥るよ」
陣左が薄まっていく酸素をかき集めながら頬を紅潮させていくのは、なんとも艶めかしかった。縄と縄の間の肉が赤みを帯びていくのを撫でながら、私は最後の結び目を作る。
「さあ、出来たよ。私はここで見ているから、抜け出してごらん。一刻でね」
緊縛は、一刻以上行うのは危険である。明日に響くと、腕に痺れが残ってしまう、危険な遊戯だ。陣左は「あ、あ」と声を零しながら腕を揺り動かし、何とか縄の隙間を探していった。
縛り上げられた陣左は、とても綺麗だった。
私が不能でなければ、縛ったまま彼を掻き抱いて、奥に奥に欲望を穿つことが出来るのに。放てない煩悩は身体の中を駆け巡り、ごくりと喉を鳴らした。陣左の正面に座り、用意していた酒を盃に注ぐ。
額に汗を滲ませながら身体をくねらせる陣左の、荒い呼吸が部屋に響いた。その光景が、私の心臓を掴んで離さない。潤んだ瞳、赤く染まっていく肌、衣の擦れる音。酒が喉を潤していく。
ごき、と肩の関節が外れる音がした。縄抜けのためにそこまでする男なのだ。けれどもこの複雑な縛りは、なかなか解けない。指の一つ一つまで絡ませているのである。
「残念、時間切れ」
「……申し訳、ございませぬ……」
陣左の腕を解放してやりながら、私は彼の首筋を舐めた。苦悶に満ちた表情から、また「あ、あ」という声が漏れて零れていく。陣左は縄酔いをしているのか、虚ろな目で私を見上げ、口吸いをねだった。手首の最後の結び目を解き終わると、私は彼の要望通りに唇を吸ってやる。身体じゅうに赤紫の華を咲かせた彼の肌を撫で、零れる声を酒に溶かしながら、私は私の精を手なずける。
耽美な夜は刻々と過ぎ、随分と甘かった。麻縄の、ざらりとした手触り。彼と私を繋ぐ結び目。
灯明から伸びる影が、陣左の長い髪を揺らした。彼の腕を取り、背中で両の手のひらを合わせ、合唱させる。陣左は間接が柔らかい。肩や肩甲骨が後ろに捻り上げられるような姿勢になったにも関わらず、眉一つ動かさない。
私は麻縄を、彼の腕と胴体の間にくぐらせた。結び目が肉を圧迫しないよう位置をずらしながら、彼の手首と手首を合わせていく。そこから首へ、肩へ、二の腕へ、縄を通していきながら、私は都度陣左の瞬きを見た。遠くをぼんやり見ているような、それでいて自分自身を睨みつけているかのような鋭い視線が恍惚に歪んでいくのを見る度、私は得も言われぬ快楽を味わう。
「ねえ陣左。お前は本当に綺麗だね」
「……恐縮です」
「こうして、お前の輪郭を確かめていくだけで、まるで肌と肌を合わせているかのような感覚に陥るよ」
陣左が薄まっていく酸素をかき集めながら頬を紅潮させていくのは、なんとも艶めかしかった。縄と縄の間の肉が赤みを帯びていくのを撫でながら、私は最後の結び目を作る。
「さあ、出来たよ。私はここで見ているから、抜け出してごらん。一刻でね」
緊縛は、一刻以上行うのは危険である。明日に響くと、腕に痺れが残ってしまう、危険な遊戯だ。陣左は「あ、あ」と声を零しながら腕を揺り動かし、何とか縄の隙間を探していった。
縛り上げられた陣左は、とても綺麗だった。
私が不能でなければ、縛ったまま彼を掻き抱いて、奥に奥に欲望を穿つことが出来るのに。放てない煩悩は身体の中を駆け巡り、ごくりと喉を鳴らした。陣左の正面に座り、用意していた酒を盃に注ぐ。
額に汗を滲ませながら身体をくねらせる陣左の、荒い呼吸が部屋に響いた。その光景が、私の心臓を掴んで離さない。潤んだ瞳、赤く染まっていく肌、衣の擦れる音。酒が喉を潤していく。
ごき、と肩の関節が外れる音がした。縄抜けのためにそこまでする男なのだ。けれどもこの複雑な縛りは、なかなか解けない。指の一つ一つまで絡ませているのである。
「残念、時間切れ」
「……申し訳、ございませぬ……」
陣左の腕を解放してやりながら、私は彼の首筋を舐めた。苦悶に満ちた表情から、また「あ、あ」という声が漏れて零れていく。陣左は縄酔いをしているのか、虚ろな目で私を見上げ、口吸いをねだった。手首の最後の結び目を解き終わると、私は彼の要望通りに唇を吸ってやる。身体じゅうに赤紫の華を咲かせた彼の肌を撫で、零れる声を酒に溶かしながら、私は私の精を手なずける。
耽美な夜は刻々と過ぎ、随分と甘かった。麻縄の、ざらりとした手触り。彼と私を繋ぐ結び目。