二は(時友・羽丹羽)
外がとっぷりと暗くなり、真っ黒いふろしきを広げたような空だった。そのなかを、お星さまがちらちらと泳いでいる。
ぼくと、同室の羽丹羽くんは寝間着に着替えていた。寝間着に身を包むと、一気に肩の力が抜けるような気がするけれど、プロの忍者になったら、きっと寝る時も気が抜けないのだろうなあ。灯明皿に近付いて、ふっと息を吹く。灯りが消えて、外の真っ黒が部屋の中にもひろがった。
ふたりでお布団に入るけれど、寝るのはまだ先だ。あのねあのね、が止まらないんだ。ずっと暗闇の中で起きていると、目が次第に慣れていって、部屋の中は真っ黒から薄青に変化していく。
「昨日、竹谷先輩が、新しい犬を飼おうと学園長先生に直談判して、却下されたんですって」
「今朝、伊作先輩が干していた薬草、また風でぜんぶ飛んでしまったんだって」
おはなしは途切れない。枕を抱えながら、ふたりでくすくすと笑う。
羽丹羽くんは寝る前のおはなしがとっても楽しそうだ。大きな瞳は弧を描いて、頬は紅潮して桃色。暗闇の中でもわかる。
「時友くん」
羽丹羽くんが指先でぼくをつついた。羽丹羽くんの爪は形が整っていて綺麗だ。
「ぼく、家ではひとりで寝ていたんです」
「うん」
「だから、寝る前のおはなしが、本当にだいすきなんですよ」
「えへへ、ぼくもだよお」
ぼくも自分の爪をみる。苦無で塹壕を掘りすぎて、がたがただ。でも、汚いとは思わない。先輩たちの、ぼこぼこで傷だらけの手を、かっこいいと思う。
羽丹羽くんの爪も、そのうちがたがたになるんだ。でも、きっとそれもうつくしい。
「おやすみなさい、時友くん」
「おやすみなさい、羽丹羽くん」
夢の中でも、たくさんおはなししようね。
ぼくと、同室の羽丹羽くんは寝間着に着替えていた。寝間着に身を包むと、一気に肩の力が抜けるような気がするけれど、プロの忍者になったら、きっと寝る時も気が抜けないのだろうなあ。灯明皿に近付いて、ふっと息を吹く。灯りが消えて、外の真っ黒が部屋の中にもひろがった。
ふたりでお布団に入るけれど、寝るのはまだ先だ。あのねあのね、が止まらないんだ。ずっと暗闇の中で起きていると、目が次第に慣れていって、部屋の中は真っ黒から薄青に変化していく。
「昨日、竹谷先輩が、新しい犬を飼おうと学園長先生に直談判して、却下されたんですって」
「今朝、伊作先輩が干していた薬草、また風でぜんぶ飛んでしまったんだって」
おはなしは途切れない。枕を抱えながら、ふたりでくすくすと笑う。
羽丹羽くんは寝る前のおはなしがとっても楽しそうだ。大きな瞳は弧を描いて、頬は紅潮して桃色。暗闇の中でもわかる。
「時友くん」
羽丹羽くんが指先でぼくをつついた。羽丹羽くんの爪は形が整っていて綺麗だ。
「ぼく、家ではひとりで寝ていたんです」
「うん」
「だから、寝る前のおはなしが、本当にだいすきなんですよ」
「えへへ、ぼくもだよお」
ぼくも自分の爪をみる。苦無で塹壕を掘りすぎて、がたがただ。でも、汚いとは思わない。先輩たちの、ぼこぼこで傷だらけの手を、かっこいいと思う。
羽丹羽くんの爪も、そのうちがたがたになるんだ。でも、きっとそれもうつくしい。
「おやすみなさい、時友くん」
「おやすみなさい、羽丹羽くん」
夢の中でも、たくさんおはなししようね。