その他

 新芽の季節、木の芽時。この時期はあらゆる生物から溢れる生命力の高さに、世間が活発になりだす。
 だから、つい調子に乗ってしまったのだ。深追いしすぎた、戦場で足軽兵に混じって情報収集をしていた時、逃げる敵を追いかけていたら、矢が肌を掠めていった。
 さいわい、毒は塗られていなかったようで、出血量も大したことがなかった。巻かれた包帯に目をやる。もう血が染みてくることもない。俺は傷の治りが早い方だ。こういうところが野性的だと、同級生に揶揄されるのだ。
 手当するほどでもない小さな傷も、ほとんどが新しい皮膚で覆われていた。本来の肌の色より少し色濃い、あたらしい皮膚。触るとすこし盛り上がっている。身体じゅう、そんな痕ばかりだ。実技の授業が厳しくなったあたりから、傷は絶えない。
 新芽の季節、木の芽時。おおきな木の根元に座り込んだ。地面はひんやりとしていて、手のひらで触れると湿っていた。この手の下にも、なにかの種が植わっているかもしれない。
 大木に寄り掛かりながら、風に包まれ、土の匂いを嗅ぎ、葉の騒めく音を聞くというのは、なんと気持ちいいことか。生命力に溢れる季節。生物委員会で飼っている動物や虫たちも、にわかに賑やかだ。
 いずれは散る命である。命を奪うこともある。けれど、生きていかねばならない。血に塗れ、泥を啜り、泣くことを忘れたとしても。手のひらで土を掴んだ。芋虫がにょきりと顔を出し、眠たそうにしていた。
6/40ページ
スキ