二は(時友・羽丹羽)

「時友くん。この世で最強の凶器って、氷なんじゃないでしょうか」
「急にどうしたの」
「だって、溶けるんですよ。犯行後に」
「犯行とか言わないでえ」
 一緒に宿題をやっていると、時折、羽丹羽くんは宇宙に行ってしまう。でも、人のことは言えない。僕も宇宙遊泳はしょっちゅうだからだ。
「時友くん。皿回しで世界を獲るには、どうしたらいいでしょうか」
「まずは一緒に宿題をやろうねえ」
 羽丹羽くんは二年生からの編入だから、一年生で培うべき範囲の知識がまだ追いついていないところがある。だから宿題が難しくて、ちょっと集中力が欠けてしまうのだ。
 気持ちはわかるよ、羽丹羽くん。僕もさっきからあくびがとまらない。
 宿題中に眠くならなくするためには、やっぱり体力をつけたほうがいいのかなあ。秘密読書も、続けていきたいし。
 秘密読書で、次は何を読もうかなあ。図書室にあった、「乱世! どすこい張り手の歴史」でも読もうかなあ。何でそんな本があるんだろう。
「時友くん?」
 目の前で、羽丹羽くんが手をひらひらと振る。いけない、ぼうっとしてしまった。
「羽丹羽くん。僕は手押し相撲のギャングを組もうと思うから、ぜひ仲間に入ってね」
「間違いなく無敵です」
 真面目に頷いてくれる羽丹羽くんに、ありがとう、と微笑み返して、僕らはまたにんたまの友に向き直る。風流で取り入る術について。
「問題、雨の音に季節感を見出すことは、風流?」
「ばつ、晴れの日でも季節感は見いだせるため」
「正解。なんですかこの教習所みたいな問題」
 宿題を終えた僕たちは、皿回しと手押し相撲の稽古に励もうと、い組を尋ねたけれど、三人にしかめっ面を返されてしまったので、しかたなく二人で世界を目指すことにした。僕たちなら無敵だよねえ。晴れの日でも季節感を見出せるしね。
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