その他

 綾部先輩の穴に落ちてから、ああ予習が足りてないせいだ、と思った。この道に穴があることをちゃんと予測していればよかった。
「せんぱーい、大丈夫ですかー?」
「いま、縄を持ってきます!」
 兵太夫と伝七の声が上から降ってくる。この程度、苦無があれば登れるよ、と言おうとしたが、せっかくの心遣いなのでありがたく待つことにした。
 雨が降りそうだった。曇天が穴に迫ってくる。空を見上げていると、また違う顔が現れた。
「おや、藤内。落ちたのか」
「立花先輩」
 先輩はさっと傍に降りてきて、ふふふと笑う。白い肌が土の中でもよく映えた。
「この世は、予習できないことばかりだぞ。お前の未来、楽しみだな」
 そんなことを言われちゃ、俄然予習に身が入る。後輩たちが持ってきてくれた縄と、先輩の支えによって穴を出た俺は、綾部先輩に文句を言いに行くことにした。
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