二は(時友・羽丹羽)

 前略、野村先生に「かわいいを極めなさい」と言われたので、かわいい恰好をしてかわいいポーズをとりに行きます。
 渡されたのは青い衣装。二年生の制服と同じくらいの濃さだ。頭巾と手袋もあって、組み合わせを見るだけでとってもかわいいのがわかる。
「ねえ、ぼくたちかわいいかなあ」
「きっと、かわいいんじゃないでしょうか」
 普段着ないものを纏うと、こころがうきうきと弾む心地がする。ふわっとまわった羽丹羽くんを見ると、自然と口角があがった。とってもとってもかわいい。
「かわいい、でいられるのも、きっと下級生のうちだけでしょうからね」
「上級生になったら、かっこいい、を目指そうねえ」
 ぼくらはそんなことを言いながら草原に向かった。風がそよいで、優しく肌を撫でていく。頭巾がはためいて、飾りに付けた鈴蘭の花が揺れた。ああ、今ここに絵師さんがいたら、ぼくらをモデルにしてもらえるのに。
「かわいいポーズって、どんなでしょうか?」
「笑顔じゃないかなあ? 羽丹羽くん、わらって」
 ぼくらはくるくるとポーズをとりながら、このほうがいい、いやこっちのほうがいい、とくちぐちに言った。やがて踊りつかれて草原に倒れ込み、一緒に空を見上げる。
「みて、お花のかたちの雲」
「あっちはハート」
 太陽がさんさんと輝いて、草を照らした。辺り一面海の様に輝いている。土の匂いを肺いっぱいに吸いこみながら、かわいいっていったいなんだろう、と考えた。たとえば生物委員のみんなは、毒虫にもかわいいと言うことがある。
「時友くんは、かわいいし、かっこいいですよ」
「ほんとう?」
「ええ。世界一」
「羽丹羽くんも、とってもかわいいし、とってもかっこいいよ」
「ほんとう?」
「うん。世界一」
 ぼくらはくすくすと笑い合って、それならこの課題は合格だね、と言った。とびきりのかわいいを背負って帰ろう。鈴蘭の花がチリンと揺れて、ぼくらの髪を彩った。
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