その他
女装の授業はあれど、実際に町へ繰り出すのははじめてだった。
同級生は全員、すでに経験済み。編入生であるぼくだけが未経験。緊張しているぼくに、「意外となんとかなるよ」「羽丹羽くんはきっとかわいくなるから大丈夫」と、皆が声をかけてくれた。
初回なので、まだ潜入だったり情報集めだったりの忍務ではない。ただ町へ行って一周し、女の子に見られるかどうか、振る舞いを習得して来いというものだった。
見守り役かつお手本として、上級生とペアを組んで行くのが課題だったが、さてどの先輩に依頼しよう。はじめは同じ火薬委員会の久々知先輩かな、と思ったけれど、池田くんがすでにお願いしていたようだったので、タカ丸先輩にお声をかけさせていただいた。
先輩は快諾してくださって、化粧も手伝っていただいた。女装姿のぼくを見て、同じ部屋の時友くんは「わあ、とてもかわいい。本当に女の子みたい」と言ってくれた。少しの自信とまだまだ募る不安を胸に、美女に化けた先輩と並んで、いざ町へ。
なにも悪いことをしていないはずなのに、人々の視線がとても気になった。歩き方は変ではないか、所作は変ではないか。もしかしたら化粧が崩れているのかも。つい俯いて歩いていると、先輩が「胸を張って」と声をかけてくださる。
「俺たちは今、女の子だよ。女の子って、毎日をときめいて過ごしていると思わない? 町にはときめくものがたくさんあるよお」
ほら、と手をとられ、並ぶ店の店頭を物色する。着物、組紐、紅、筆、かんざし。どれもきらきら輝いて見えた。
「あら、可愛い姉妹ねえ」
女将さんに声をかけられ、咄嗟になにも返せずにいると、先輩が「ありがとうございます~」と自然に微笑んでいた。ぼくもそれに習う。店から離れたところで、タカ丸先輩は「やったね」とぼくに声をかけた。
「姉妹って言われたよ。かわいいって。今回の課題、クリアだねえ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます……!」
ぼくは嬉しくなって、タカ丸先輩にたくさんお礼を述べた。とてもとても嬉しくて、たしかに世界はときめきで満ちている、と思った。
忍術学園への帰り道まで、手を繋ぎながら、可愛い姉妹を意識して歩いた。もう、人々の目線は怖くなかった。
同級生は全員、すでに経験済み。編入生であるぼくだけが未経験。緊張しているぼくに、「意外となんとかなるよ」「羽丹羽くんはきっとかわいくなるから大丈夫」と、皆が声をかけてくれた。
初回なので、まだ潜入だったり情報集めだったりの忍務ではない。ただ町へ行って一周し、女の子に見られるかどうか、振る舞いを習得して来いというものだった。
見守り役かつお手本として、上級生とペアを組んで行くのが課題だったが、さてどの先輩に依頼しよう。はじめは同じ火薬委員会の久々知先輩かな、と思ったけれど、池田くんがすでにお願いしていたようだったので、タカ丸先輩にお声をかけさせていただいた。
先輩は快諾してくださって、化粧も手伝っていただいた。女装姿のぼくを見て、同じ部屋の時友くんは「わあ、とてもかわいい。本当に女の子みたい」と言ってくれた。少しの自信とまだまだ募る不安を胸に、美女に化けた先輩と並んで、いざ町へ。
なにも悪いことをしていないはずなのに、人々の視線がとても気になった。歩き方は変ではないか、所作は変ではないか。もしかしたら化粧が崩れているのかも。つい俯いて歩いていると、先輩が「胸を張って」と声をかけてくださる。
「俺たちは今、女の子だよ。女の子って、毎日をときめいて過ごしていると思わない? 町にはときめくものがたくさんあるよお」
ほら、と手をとられ、並ぶ店の店頭を物色する。着物、組紐、紅、筆、かんざし。どれもきらきら輝いて見えた。
「あら、可愛い姉妹ねえ」
女将さんに声をかけられ、咄嗟になにも返せずにいると、先輩が「ありがとうございます~」と自然に微笑んでいた。ぼくもそれに習う。店から離れたところで、タカ丸先輩は「やったね」とぼくに声をかけた。
「姉妹って言われたよ。かわいいって。今回の課題、クリアだねえ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます……!」
ぼくは嬉しくなって、タカ丸先輩にたくさんお礼を述べた。とてもとても嬉しくて、たしかに世界はときめきで満ちている、と思った。
忍術学園への帰り道まで、手を繋ぎながら、可愛い姉妹を意識して歩いた。もう、人々の目線は怖くなかった。