二は(時友・羽丹羽)

 ふらりと計画された飲み会としては、なかなかいい居酒屋で乾杯出来たと思う。
 おしゃれな店内、おしゃれなメニュー。カクテルの舌触りもおいしかった。
 みんながほどよくアルコールが回ってきて饒舌になる頃、それはつまり恋バナをしだすタイミング。
 私はどうしても、羽丹羽くんの恋愛事情が知りたかった。
 彼は一言で言えば、クールビューティーでミステリアスだ。彼の私生活はまるで読めない。
「ねえ、羽丹羽くんって、付き合ってる人いるの?」
 思い切ってそう訊ねると、羽丹羽くんは私の方に向き直って微笑んだ。
「はい! いますよ~」
 ああ、そっか、いるのか。失恋とは違う、少しの意外性に身を乗り出す。きっと素敵な彼女なのだろう。羽丹羽くんの向こうの席の同輩も、気になる~! と会話に混ざり込む。
「えーと。穏やかで、ぽわぽわしていて、ちょっと初心で、良く笑う人です!」
 そうかそうか。羽丹羽くんはそういう女の子が好きなんだ。私たちはそれぞれ彼女の像を思い浮かべながら、なるほど、と頷く。お似合いのカップルじゃないか。彼女のこと知らないけれど。
「あ、今からこっち来てくれるらしくて」
 羽丹羽くんがスマホを見ながらそう言った時、私たちはにわかに色めき立った。羽丹羽くんの彼女が見られる!
 運転できる人なのかな、と口々に勝手なことを言いながら、彼女の到着を待った。
 それから数刻後。羽丹羽くんがうとうととしかけた頃、私たちのテーブルに近付く人がいた。
「石人、お待たせ」
 せ、せきと!? 羽丹羽くんをそんな風に呼ぶのは誰!? ガタイの良い、大柄な男の子が――穏やかで、ぽわぽわしていそうな雰囲気の――羽丹羽くんを揺り起こす。
「おじゃましてすみません、はじめまして~」
 ……も、もしかして、この人が恋人!? 私たちは目を見合わせた。
 羽丹羽くんと彼氏さんを見送ったあと、残された人全員で、全く同じ感想を呟く。
「デッッッカ……」
 羽丹羽くんへ。小柄な彼女がいると思い込んですみませんでした。デッカい彼氏さんと、お幸せに。
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