その他

 どうせ引き分けだ、といつも思う。
 兵助とも、鉢屋とも。雷蔵とも、八左ヱ門とも。
 愛しい日と、許せない日を足したら、どうせ引き分けになるのだ。
 快晴だった日の夕暮れは、どこか物寂しく思う。橙色に染まっていく空が引き連れてくる夜に、俺たちは移ろっていく。そういう年頃だから。
 武器の手入れをする時に、俺らの友情がいつまでも続いたらいいのに、と願ってやまない。願うだけならタダだ。
「勘右衛門、まだ寝ないの?」
 兵助が眠そうに言うので、俺は謝って灯りを消した。兵助の寝息が聞こえたところで、そっと庭に出る。
 俺たちはいつか、傷つけあうのだろうか。敵対する城にでも勤めたら、そんな未来がやってくるかもしれない。
 時折その事実に胸が締め付けられる。こんなことでいちいち傷ついていたら、この先やっていけないというのに。
「お、曲者か」
「その声は、不審者」
 上から声が降ってきたので振り返ると、鉢屋が立っていた。ははは、とお互い笑い合い、そよ風に身を任せる。寝られない夜だってある。そういう年頃だから。
「鉢屋は、人間から人間に化けていることが、窮屈になったりしないの?」
「私はタコにもイカにもなれるけれど、やっぱりニンゲンでいたいよ。この身体でいることを、やめられない生き物だよ、人間というのは」
 輝かしい日々を愛と謳うなら、濡れた頬も拭えるだろうか。
「ねえ、どうせ引き分けだって思わない? 自分たちのこと」
「わかるよ。どうせ引き分けだよ、いつだって」
 どんなに叫んだって一人なのが人間だ。優しい人が離れていくのがつらい時だってある。それでも、俺たちは傷つけあっては確かめあうのだろう。
「なあ。私たちは、愛の渦中にいるんだぜ」
 鉢屋はおやすみと言ってその場を去った。俺は指先を擦り合わせた。
 嘘つきが描いた地図で進めるなら、それでもいいと思った。
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