その他
迷子の店内放送が聞こえる。赤のトレーナーを着たナントカくんが迷子です。
「この広いショッピングモールで迷子になるのは怖いだろうなあ」
兵助がそんなことを言いながらソイラテを飲んだ。真冬だがコートを着てしばらく歩いていると暑くなる、俺たちはみんなアイスの飲み物を頼んでいた。冬にかく汗ほど不愉快なものはない。いや、夏ももちろん不愉快だけど。
「僕も小さい頃迷子になったことがあるよ。心細かったよ、やっぱり」
雷蔵は遠い目をしてホワイトモカをひとまわし。三郎ももちろん同じものを飲んでいる。
「今なら私が『この顔をしている人を見ませんでしたか』って出来るのにね」
「いや、スマホがあるから」
連絡とればいいだけでしょと笑う雷蔵に、まあそうなんだけど、と不貞腐れる三郎。近くに座るサラリーマンのパソコンがカタカタと忙しなく音を立てていて、大人の世界の世知辛さを垣間見た。たぶんあの人が飲んでいるのはブラックコーヒーだろう。苦い大人の味。
「逆に三郎が迷子になったらどうしたらいいの? 雷蔵を出せばいいの?」
「いやだから、スマホがあるでしょって」
八左ヱ門は呑気にココアを啜る。なんでスタバに来てココアを飲むんだよ。八左ヱ門のセーターには犬だか猫だかの毛がたくさん付いていた。俺たちが誰もアレルギーでなくてよかった。
「勘右衛門は何飲んでるの?」
「ダークモカチップフラペチーノ」
「裏切らないなお前は」
だって甘いもの飲みたいじゃん。テスト終わりの疲れた身体にチョコレートが染み渡る。
兵助の「チャイティーラテをソイミルクに変更するとおいしい」という語りに「お前は無調整豆乳を飲んでろ」と一同で突っ込んでいる後ろで、またアナウンスが流れた。ナントカくんの親がみつかったようだ。
「よかったよかった」
「パーティだな」
俺たちはほどんど氷だけになったグラスで乾杯した。サラリーマンが怪訝そうにこちらを見る。仕方ないじゃん、青春だし。俺はチョコレートの余韻を口の中で転がしながら、明日までの古文の課題をやっていないことを思い出す。あとで三郎に見せてもらおう。
「この広いショッピングモールで迷子になるのは怖いだろうなあ」
兵助がそんなことを言いながらソイラテを飲んだ。真冬だがコートを着てしばらく歩いていると暑くなる、俺たちはみんなアイスの飲み物を頼んでいた。冬にかく汗ほど不愉快なものはない。いや、夏ももちろん不愉快だけど。
「僕も小さい頃迷子になったことがあるよ。心細かったよ、やっぱり」
雷蔵は遠い目をしてホワイトモカをひとまわし。三郎ももちろん同じものを飲んでいる。
「今なら私が『この顔をしている人を見ませんでしたか』って出来るのにね」
「いや、スマホがあるから」
連絡とればいいだけでしょと笑う雷蔵に、まあそうなんだけど、と不貞腐れる三郎。近くに座るサラリーマンのパソコンがカタカタと忙しなく音を立てていて、大人の世界の世知辛さを垣間見た。たぶんあの人が飲んでいるのはブラックコーヒーだろう。苦い大人の味。
「逆に三郎が迷子になったらどうしたらいいの? 雷蔵を出せばいいの?」
「いやだから、スマホがあるでしょって」
八左ヱ門は呑気にココアを啜る。なんでスタバに来てココアを飲むんだよ。八左ヱ門のセーターには犬だか猫だかの毛がたくさん付いていた。俺たちが誰もアレルギーでなくてよかった。
「勘右衛門は何飲んでるの?」
「ダークモカチップフラペチーノ」
「裏切らないなお前は」
だって甘いもの飲みたいじゃん。テスト終わりの疲れた身体にチョコレートが染み渡る。
兵助の「チャイティーラテをソイミルクに変更するとおいしい」という語りに「お前は無調整豆乳を飲んでろ」と一同で突っ込んでいる後ろで、またアナウンスが流れた。ナントカくんの親がみつかったようだ。
「よかったよかった」
「パーティだな」
俺たちはほどんど氷だけになったグラスで乾杯した。サラリーマンが怪訝そうにこちらを見る。仕方ないじゃん、青春だし。俺はチョコレートの余韻を口の中で転がしながら、明日までの古文の課題をやっていないことを思い出す。あとで三郎に見せてもらおう。