その他

 用具倉庫に入る時は、いつも恐々とした足取りだった。ここに閉じ込められたらどうしよう、という、ありえなくもない想像が僕につきまとう。
「手裏剣をいくつか持ってきてくれ」という食満先輩の言いつけ通りに、手裏剣を仕舞っている箱に手を伸ばした。
 事務員の小松田さんなら、ここで箱をひっくり返すのだろう。細心の注意を払って、五枚ほど手裏剣を取り出した。指を切らないように気を付けて。
「あれ、平太?」
「うわあ」
 入口のところから、孫次郎の声が聞こえた。手裏剣を落としそうになった僕は慌てて体勢を立てなおす。
「委員会の活動?」
「そうだよお、脅かさないで」
 用具倉庫を閉め、二人で食満先輩のもとへ早歩きをする。孫次郎はなんで僕についてくるんだろう。絶対なにか可笑しがってる。
「ねえ、平太、今夜バッタを食べない? それはもう新鮮な」
「いきなりすぎるよ……」
 恐ろしい。用具倉庫に閉じ込められることよりも。僕はバッタの食感をつい想像してしまい、その……なんというか、その、食べ慣れなさに、おえっとなりながらも、五枚の手裏剣を食満先輩に届けた。
 褒められて、嬉しかったけれど、この後待っているのがバッタだと思うと、どうにも気分は晴れない。バッタに罪はないけれど。
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