その他
バレンタイン、まあそれなりにチョコレートは貰えるわけで。「いいよなあ、食満は」と友人に揶揄われるとさすがに恥ずかしいが、悪い気はしない。もちろん義理も多いとは思うけど。
「留三郎。いるか」
仙蔵がドアのところで俺を呼ぶ。出たよ、学年トップのモテ野郎が。すでに紙袋三つ分チョコレートを貰っているという噂だ。彼に憧れる女子は少なくない。
「放課後、かわいい後輩がお前を呼び出したいと」
「え、だ、誰だ」
「かわいいかわいい後輩だ。裏庭で楽しみにしているんだな」
じゃ、と帰っていく仙蔵の背中をあっけにとられながら見送った。彼がかわいいというならば、そうとうな美貌の持ち主ではないのか? 期待に胸を躍らせてしまう。なにニヤけてんだよ、と友人につっこまれ、あわてて顔を引き締めた。
放課後。洗面所で髪型のチェックもしたし、ブレスケアもしたし、準備は万端だ。脳内で入念にシミュレーションをする。全く知らない子だったらお友達から、嫌な奴だったらしっかり振って、でも、でも、とびきりのかわいい子がきたら、うっかり付き合ってしまうかもしれない。
「食満先輩っ!」
小走りの音に振り向くと。――浜守一郎が、満面の笑みでそこにいた。
「う、受け取ってくださいっ!!」
「……お~ま~え~か~!!」
近くの木陰から、仙蔵の爆笑が聞こえてきた。俺は怒りに震えそうになったが、なんだか馬鹿らしくなってしまい、釣られて笑ってしまう。
「どんだけかわいい子が来るのかって期待してたんだぞ!!」
「ちょっと、俺、かわいいかわいい後輩でしょう!」
「そうだぞ、留三郎。かわいいかわいい後輩だろう」
ついに守一郎が大声で爆笑する。なんだなんだと近くにいた人々の目線も集まって、もうだめだこりゃ、俺たちはひとしきり笑い合った。このことは翌日、クラス中から揶揄われることになるが、とりあえず、文次郎よりかは多くチョコレートを貰えたから、よしとする。
「留三郎。いるか」
仙蔵がドアのところで俺を呼ぶ。出たよ、学年トップのモテ野郎が。すでに紙袋三つ分チョコレートを貰っているという噂だ。彼に憧れる女子は少なくない。
「放課後、かわいい後輩がお前を呼び出したいと」
「え、だ、誰だ」
「かわいいかわいい後輩だ。裏庭で楽しみにしているんだな」
じゃ、と帰っていく仙蔵の背中をあっけにとられながら見送った。彼がかわいいというならば、そうとうな美貌の持ち主ではないのか? 期待に胸を躍らせてしまう。なにニヤけてんだよ、と友人につっこまれ、あわてて顔を引き締めた。
放課後。洗面所で髪型のチェックもしたし、ブレスケアもしたし、準備は万端だ。脳内で入念にシミュレーションをする。全く知らない子だったらお友達から、嫌な奴だったらしっかり振って、でも、でも、とびきりのかわいい子がきたら、うっかり付き合ってしまうかもしれない。
「食満先輩っ!」
小走りの音に振り向くと。――浜守一郎が、満面の笑みでそこにいた。
「う、受け取ってくださいっ!!」
「……お~ま~え~か~!!」
近くの木陰から、仙蔵の爆笑が聞こえてきた。俺は怒りに震えそうになったが、なんだか馬鹿らしくなってしまい、釣られて笑ってしまう。
「どんだけかわいい子が来るのかって期待してたんだぞ!!」
「ちょっと、俺、かわいいかわいい後輩でしょう!」
「そうだぞ、留三郎。かわいいかわいい後輩だろう」
ついに守一郎が大声で爆笑する。なんだなんだと近くにいた人々の目線も集まって、もうだめだこりゃ、俺たちはひとしきり笑い合った。このことは翌日、クラス中から揶揄われることになるが、とりあえず、文次郎よりかは多くチョコレートを貰えたから、よしとする。
10/10ページ