このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

一幕『春風の帳』

深い深い、森の中を走っていた。
まるで、何かから逃げるように。いや、"それ"から逃げるために走っていた。

走っても、走っても走っても"それ"は追いかけてくる。

……

あてもなくただ逃げ続けているうちに、気づけば崖に足を踏み入れていた。

"それ"はこちらに歩みを寄せる。
そのたびに私は一歩後ずさる。

一歩ずつ足場が無くなっていく。

これ以上後ずされば落ちるところまで来た時、"それ"は私に手を伸ばした。

「■せ!」

その言葉を皮切りに、私の足元は、脆く崩れた。
2/16ページ
スキ