二幕『朧月夜の揺籃歌』
歩いてしばらくすると一軒のコテージが見えてくる。
「ささ!ついたよ〜!ここがわたしの家!」
メレクは意気揚々と扉を開けて僕たちを迎え入れた。
家の中は生活できる空間の中に、まばらに薬品棚や実験器具が置かれている。
「メレクさん……コテージ私物化してたんですね……」
「たくさんあるんだから一軒くらいいいでしょ?」
「そ、そっか……」
困惑するスズメと対照的に、メレクは上機嫌に僕たちを居間に誘導した。
「せっかくだし紅茶入れてあげるよ。ゆっくりしててね〜」
そういってメレクはキッチンへと消えていった。
席につく。スズメは苦笑してあたりを見渡した。
「……なんか嫌な予感がしますね」
「……そうですね」
あたりに置かれている薬品に目移りする。ラベルには様々な横文字が書かれているが、どれもがあまり理解できない。しかし、本能的にやばいものであることはなんとなくわかった。
「ウリ、メレクさんって何してる人なの?」
「あー……」
ウリは近くに置かれている薬品に手を伸ばそうとしたニトの手首を掴みながら答える。
「毒作ってる」
「想像以上の危険人物じゃないですか」
「危険人物じゃないよ〜!フレンドリー!わたしは安心安全悪魔だから!」
気づけばメレクはこちらに戻ってきた。慌てたようにそう言い放ち、手に持っているティーセットを机上に置く。
「……何か入っていたりしませんよね」
「え!?入れてないよ!わたしのことそんなやつに見えちゃってるの!?」
「はい」
「も〜!そんなことしないって!ウリくんが変な説明の仕方するから警戒されちゃったよ〜」
「何も間違っちゃいないだろ」
「あちゃ〜……何も言い返せないね」
メレクはクスクスと上品に笑ったのち、ティーカップに紅茶を注ぐ。あたりに紅茶の香りが漂った。
注いだ紅茶を僕たちの前に差し出すと「何も入ってない美味しい紅茶だから何も心配する必要はないよ」と一言添えて紅茶を飲んでみせた。
「ほらね?」
「……」
「あ、まだ疑ってるでしょ!?」
「いや……まあ、はい」
「はぁ……全く仕方ない子だね。冷める前には飲むんだよ」
と、メレクはいじけてそっぽを向いてしまった。
なんだか申し訳ないと思い、紅茶のカップを少し浮かせ飲もうとする。が、横から差し出されたウリの手によって阻止された。
ウリの方を見てみるのであれば「やめておけ」と目で訴えてくる。僕はそのカップを置いて波紋の広がる紅茶を眺めることにした。
スズメが口を開く。
「それで……メレクさん。条件っていうのは」
「あぁ、条件ね。まあ簡単なことだよ。国中に広がっている魔法をとっとと解除してほしいんだ」
「魔法を?」
「そう、魔法。いや確認してみたんだけどね、どうやら転移魔法が蔓延しているみたいなんだよ〜。ウリくんもなんとなくはわかっているでしょ?」
「まあな、だが……」
ウリは顎に手を置いて眉間にしわを寄せる。
「転移以外にも何か別の魔法が混じっている気がする」
「あ、ウリくんも思ってた?そうなんだよ〜何か別のものが混じっているんだよねぇ。でもその別の魔法が何か、というのまではわからなくてさ」
メレクは長い髪をくるくると指に絡ませる。
「おそらく転移先に何かしらあるのだろうと踏んで使用者の霊力を辿ろうとしたんだけど、あたり一面霊力の残りカスしかないから辿ることができなかったんだよねぇ。お陰様でわたしも実験体……いや、人が全く見つからなくて寂しい思いをしていたんだよ〜本当に困っちゃう!」
「そうか」
「そうか、じゃなくて!みんなも人いなくて困ってるんでしょ?だからわたしの代わりに転移先を特定して魔法をどうにか解除してほしいわけ!その代わりにニトくんの魔法どうにかしてあげるからさ!ね!」
メレクは立ち上がるとニトを指差し懇願するように僕たちを見る。指さされたニトは不思議そうにあたりを見渡した後に紅茶を口に入れた。
「それに別の魔法についてなんだけどね!彼の姿と彼にかかっている魔法を確認してみた限り、この国の事件は相当まずい状況ではないかね?なぁそこの君!」
その赤い瞳はスズメを捉える。驚いた顔をした後に目を泳がせるスズメは、震えた声で言葉を絞り出す。
「それは、そうですけど……でもっ……」
「でも、じゃないでしょ?だって転換魔法が使える者なんてこの3ノ国では管理者のフキくんしかいないだろう?」
「いや……でも、フキちゃんがそんなことするわけないじゃないですか」
「そんなことするわけないって……面白いことを言うね!そんなもの君の主観でしかないじゃないか!最近君はフキくんを見たのかい?見ていないだろう?それなら偉大な天使様が国民を誘拐している可能性なんてゼロなわけがない!ついにやっちゃったのかな?それとも暴走でもしているのかな?」
「っ……メレクさん!」
「おっとわたしとしたことが話が逸れてしまったね!」
見かねて割って入ろうとした途端、メレクは話を切り上げニトの元まで歩き出しそのまま顔を覗き込む。
「それでニトくん。君は転移魔法を受けてもなおここに戻ってきているのだろう?君は一体どこに飛ばされた?そこに人はいたのかい?それとも、どこかへ向かおうとでもしていた?」
「……」
ニトはじっとメレクの顔を見る。すると手に持っていたティーカップをずいとメレクに押し付けた。
「これすっごいあまいんだけど」
「おや、口に合わなかったかな?」
その言葉を聞いたメレクは、あざ笑うかのような笑みを浮かべた。
「ごめんねぇ、その"隠し味"は甘さを加減できないんだ」
ニトは何か言葉を紡ごうとする。が、その言葉は喉から出ることはなった。
くらりと体が傾いたかと思えば、テーブルへ強かに頭を打ちつける。そして彼はピクリとも動かなくなった。
「ささ!ついたよ〜!ここがわたしの家!」
メレクは意気揚々と扉を開けて僕たちを迎え入れた。
家の中は生活できる空間の中に、まばらに薬品棚や実験器具が置かれている。
「メレクさん……コテージ私物化してたんですね……」
「たくさんあるんだから一軒くらいいいでしょ?」
「そ、そっか……」
困惑するスズメと対照的に、メレクは上機嫌に僕たちを居間に誘導した。
「せっかくだし紅茶入れてあげるよ。ゆっくりしててね〜」
そういってメレクはキッチンへと消えていった。
席につく。スズメは苦笑してあたりを見渡した。
「……なんか嫌な予感がしますね」
「……そうですね」
あたりに置かれている薬品に目移りする。ラベルには様々な横文字が書かれているが、どれもがあまり理解できない。しかし、本能的にやばいものであることはなんとなくわかった。
「ウリ、メレクさんって何してる人なの?」
「あー……」
ウリは近くに置かれている薬品に手を伸ばそうとしたニトの手首を掴みながら答える。
「毒作ってる」
「想像以上の危険人物じゃないですか」
「危険人物じゃないよ〜!フレンドリー!わたしは安心安全悪魔だから!」
気づけばメレクはこちらに戻ってきた。慌てたようにそう言い放ち、手に持っているティーセットを机上に置く。
「……何か入っていたりしませんよね」
「え!?入れてないよ!わたしのことそんなやつに見えちゃってるの!?」
「はい」
「も〜!そんなことしないって!ウリくんが変な説明の仕方するから警戒されちゃったよ〜」
「何も間違っちゃいないだろ」
「あちゃ〜……何も言い返せないね」
メレクはクスクスと上品に笑ったのち、ティーカップに紅茶を注ぐ。あたりに紅茶の香りが漂った。
注いだ紅茶を僕たちの前に差し出すと「何も入ってない美味しい紅茶だから何も心配する必要はないよ」と一言添えて紅茶を飲んでみせた。
「ほらね?」
「……」
「あ、まだ疑ってるでしょ!?」
「いや……まあ、はい」
「はぁ……全く仕方ない子だね。冷める前には飲むんだよ」
と、メレクはいじけてそっぽを向いてしまった。
なんだか申し訳ないと思い、紅茶のカップを少し浮かせ飲もうとする。が、横から差し出されたウリの手によって阻止された。
ウリの方を見てみるのであれば「やめておけ」と目で訴えてくる。僕はそのカップを置いて波紋の広がる紅茶を眺めることにした。
スズメが口を開く。
「それで……メレクさん。条件っていうのは」
「あぁ、条件ね。まあ簡単なことだよ。国中に広がっている魔法をとっとと解除してほしいんだ」
「魔法を?」
「そう、魔法。いや確認してみたんだけどね、どうやら転移魔法が蔓延しているみたいなんだよ〜。ウリくんもなんとなくはわかっているでしょ?」
「まあな、だが……」
ウリは顎に手を置いて眉間にしわを寄せる。
「転移以外にも何か別の魔法が混じっている気がする」
「あ、ウリくんも思ってた?そうなんだよ〜何か別のものが混じっているんだよねぇ。でもその別の魔法が何か、というのまではわからなくてさ」
メレクは長い髪をくるくると指に絡ませる。
「おそらく転移先に何かしらあるのだろうと踏んで使用者の霊力を辿ろうとしたんだけど、あたり一面霊力の残りカスしかないから辿ることができなかったんだよねぇ。お陰様でわたしも実験体……いや、人が全く見つからなくて寂しい思いをしていたんだよ〜本当に困っちゃう!」
「そうか」
「そうか、じゃなくて!みんなも人いなくて困ってるんでしょ?だからわたしの代わりに転移先を特定して魔法をどうにか解除してほしいわけ!その代わりにニトくんの魔法どうにかしてあげるからさ!ね!」
メレクは立ち上がるとニトを指差し懇願するように僕たちを見る。指さされたニトは不思議そうにあたりを見渡した後に紅茶を口に入れた。
「それに別の魔法についてなんだけどね!彼の姿と彼にかかっている魔法を確認してみた限り、この国の事件は相当まずい状況ではないかね?なぁそこの君!」
その赤い瞳はスズメを捉える。驚いた顔をした後に目を泳がせるスズメは、震えた声で言葉を絞り出す。
「それは、そうですけど……でもっ……」
「でも、じゃないでしょ?だって転換魔法が使える者なんてこの3ノ国では管理者のフキくんしかいないだろう?」
「いや……でも、フキちゃんがそんなことするわけないじゃないですか」
「そんなことするわけないって……面白いことを言うね!そんなもの君の主観でしかないじゃないか!最近君はフキくんを見たのかい?見ていないだろう?それなら偉大な天使様が国民を誘拐している可能性なんてゼロなわけがない!ついにやっちゃったのかな?それとも暴走でもしているのかな?」
「っ……メレクさん!」
「おっとわたしとしたことが話が逸れてしまったね!」
見かねて割って入ろうとした途端、メレクは話を切り上げニトの元まで歩き出しそのまま顔を覗き込む。
「それでニトくん。君は転移魔法を受けてもなおここに戻ってきているのだろう?君は一体どこに飛ばされた?そこに人はいたのかい?それとも、どこかへ向かおうとでもしていた?」
「……」
ニトはじっとメレクの顔を見る。すると手に持っていたティーカップをずいとメレクに押し付けた。
「これすっごいあまいんだけど」
「おや、口に合わなかったかな?」
その言葉を聞いたメレクは、あざ笑うかのような笑みを浮かべた。
「ごめんねぇ、その"隠し味"は甘さを加減できないんだ」
ニトは何か言葉を紡ごうとする。が、その言葉は喉から出ることはなった。
くらりと体が傾いたかと思えば、テーブルへ強かに頭を打ちつける。そして彼はピクリとも動かなくなった。
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